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HTB 北海道テレビ放送 会社案内

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番組審議会だより


 北海道テレビ放送では、番組審議会委員10名の方による放送番組審議会を設け、毎月1回(8月と12月を除く)審議会を開催して、放送番組の内容をはじめ、放送に関する全般的な問題についてご意見を伺い、番組制作の参考にさせていただいております。
番組審議会でのご意見は,番組モニターの方のご意見とともに、2ヶ月に一度第4日曜午前5:05から放送の「あなたとHTB」でもご紹介していますのでどうぞご覧ください。

第469回北海道テレビ放送番組審議会概要

日時

2014年11月27日(木)
15:00~16:50

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審議対象番組

テレメンタリー2014「帰れぬ故郷~70年、サハリンでひきずる戦後~」

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出席委員
平本健太 委員長
作間豪昭 副委員長
閔 鎭京 委員
渡辺淳也 委員
福津京子 委員
髙橋留智亜 委員
森田良平 委員
古郡宏章 委員
遠藤香織 委員
会社側出席者
代表取締役社長 樋泉 実
常務取締役 田中英也
取締役 寺内達郎
役員待遇CSR広報室長 国本昌秀
編成局長 川筋雅文
報道情報局長 東 直樹
CSR広報室部長 岡 仁子
報道部副部長 渡辺 学
番組審議会事務局長 四宮康雅

【会社報告】

  • 遠藤香織様に放送番組審議委員を委嘱した。
  • 「氷の島のメッセージ~グリーンランド 温暖化の最前線から」が優れた科学放送番組に与えられる放送科学高柳賞の優秀賞を受賞した。
  • テレメンタリー2014「裏切りの復興支援隊 消えた12億円の行方」が第52回ギャラクシー賞上期奨励賞に選出された。
  • 放送番組の種別の公表制度に基づき、(2014年4月~9月)の各第3週の個々の放送時間の種別、種別毎の放送時間を報告した。

【審議対象番組についての委員意見要旨】

【評価点】

◇88歳という高齢の根本ミヨさんの孤独な生活と、一時帰国に際して大きく揺れ動く気持ちが痛いほど画面から伝わってきた。苛酷な運命をたどった人間の生々しい表情が余すところなく描き出されていて、迫真のドキュメンタリーだった。

◇非常に重いテーマにもかかわらず、最後まで見続けることができたのは、森さやかさんのナレーションの力が大きかった。落ち着いた原稿読み、優しい声、とても強弱のある語り口、言葉ひとつひとつにその深さが凝縮されていた。森さんの起用は極めて的確な判断だと思う。

◇一時帰国での会食中に、根本さんが「日本に永住帰国したい」という、これまで抑えていた強い思いを吐露する場面で、戦後、永住帰国を望みながら果たせなかった多くの方々を思い涙がこみ上げた。

◇現代の平和な暮らしは、戦争に翻弄され故郷に帰りたくても帰れない日本人の方々の存在を忘れがちだ。番組を見て、戦争はまだ終わっていないのだとあらためて強く感じた。

◇抗い難い歴史の大きな流れに翻弄される人間の運命を通して、戦争の理不尽さと罪深さを問う見る者にいろいろと考えさせる良い番組だった。

◇最も考えさせられたのは、人にとって故郷とは何なのかということ。母国を意味するのか、本当に生まれた故郷なのか。それとも心の故郷なのか。番組を見て、故郷に対する定義について深く考えさせられた。

◇高齢化するサハリン残留日本人の問題に真っ直ぐに向き合った番組で取材対象者にも肉迫できていた。番組の最終盤で、根本さんがアンケート用紙に記入する場面。「永住帰国したい」という項目に〇をした後、日本語で名前を書く時に手が震えるシーンには胸に迫るものがあった。

◇一時帰国の最終日の夜、宿舎でのシーンが撮影できたのは、根本さんと取材者が強い信頼関係で結ばれていたからだろう。

◇サハリン残留日本人の今を知ることができた番組だった。北海道人として、もっと知るべき、心を砕くべき問題で、戦争の悲惨さをしみじみと感じる番組だった。

◇根本ミヨさんを軸に3人のエピソードを取り上げ、ロシア人との結婚、父親が韓国人だった、技術者だったケースなど、一言でサハリン残留日本人といってもさまざまな理由があるのだということがよく理解できた。

◇番組冒頭で根本さんの非常に悲しげで諦めきったような表情と、一時帰国で新千歳空港に降り立ったときのとても穏やかで嬉しそうな表情。この二つのシーンの対比は一番印象に残った。

◇残留日本人の問題は、中国残留孤児、東南アジア、ミクロネシアの日本人残留兵の問題などもある。サハリン残留日本人の問題は、当時のソビエトの相互不可侵条約の一方的破棄によっておこったという点で、他の残留日本人の問題とは異なっている。そこについては怒りをもって批判的な姿勢で臨んでもいい題材だと思う。

◇残留を余儀なくされた方々は、日本人と名乗って暮らせず、日本語も使えなかった。アイデンティティーが喪失するような状況の中で暮らし続けなければなかったその辛さを思うと、非常に切なく、胸が締め付けられる思いだった。

◇エンディングのナレーションで「戦争の犠牲になるのは、いつも名もなき市民でした」という言葉が心に突き刺さった。若い世代の人たちにぜひ番組を見てもらい、戦争とはどういうものかを自分の心で感じ、頭で考えてもらいたいと強く思った。

【疑問点・改善点】

●戦争を知らない人たちに、戦争は二度と繰り返してはならないと伝えるには、政治的背景や永住帰国の手続きや条件も説明する必要があったと思う。

●なぜ永住帰国することができないのかが終始わからなかった。旧満州からの引き揚げとの違いがサハリンにはあると思うので、帰れない理由を説明してほしかった。

●「つい70年前までは日本でした」とナレーションにあるが、つい、と形容されるには戦後の70年間は長すぎる。言葉遣いも含めて、ナレーションが情緒に流れ過ぎるきらいがあった。

●サハリン残留日本人の方々は可哀そうだ、で終わらせないために、私たちに応援できることはないのか、そんな投げかけをもう少し加えて欲しかった。

【要望】

※来年戦後70年を迎えるこの時期に、北海道のローカル局が取り上げるにふさわしいテーマだった。このような番組を若い制作者が問題意識をもって作り続けられるよう今後も期待している。

※次回の放送番組審議会は、2015年1月23日(金)です