旅が終わりました。
「最後にグッと」きてしまった方々、だまされてはいけません。
よーく考えれば、やつらは「温泉にはいりたい」がために、「あっさりゴールを変更」し、「フェリーに乗っちまった」という実にいいかげんな人間です。
その意志の弱い人間の「窓越しの寝顔」に「お疲れさま・・・」などと優しい言葉をかけてはいけません。
やつは、その一時間後には砂風呂で汗だくになってご満悦になっていたんですから。
しかし・・・やっぱり寂しいもんです。
僕らは、当然旅に出る前から「これでしばらくロケもなくなる」ということは分っていました。
でも旅の最中、そのことについてはあまり触れませんでした。
放送ではカットしましたが、綾町の宿で「指宿に変更」を決めたあとこんな会話がありました。
藤「・・・これで、しばらく4人で旅をすることもなくなりますが、それでも指宿に行くってことでいいですかね・・・」
大「いいんじゃないの」
藤「最後ぐらいしっかりと・・・なんていうこだわりは無い?」
大「うーん・・・ないなぁ。今までだってあんまり最後までちゃんとやったこと無いのに、いまさら・・・ねえ」
藤「そりゃまあ、そうだねぇ・・・」
大「いずれにしても、これで当分ロケが無いと思うと、せいせいするよ」
藤「ハハ・・・そうですか・・・」
そうは言っても、それが大泉くんの精一杯の虚勢であることは、よくわかってしまったのでそれ以上話しをするのはやめました。
そして、フェリー出向一時間前からのシーン。
間に合わないかもしれない!と思ったあとの、僕の心の動きは「ナレーション」で説明した通り。
僕は頭の中で「ラストラン」のエンディングの画を考えていました。
ギリギリで間に合えば「フェリーに乗り込むシーン」で終わろう。
間に合わなければ、佐多岬まで行き、ゴールした後
「じゃあ、港までもどりましょうか・・・」
「いやだよもう・・・」
などとボヤキながら、疲れ果てて、再び走り出す二人の後ろ姿・・・。
でも、やっぱり現実的には往復100キロはきつい。赤ヘルが登場したって、どっちか一人はカブに乗らなきゃいけない。本当にそこまでやらせようか、どうしようか。
そんなふうに「決めかねていた僕の心」が言葉にもあらわれています。
途中、僕は「・・・フェリーに間に合わなかったら、佐多岬の「ほうに」行く・・・」と言っています。
「佐多岬に行く」と断定はしていません。逃げ道を作っていたんです。
でも、15分前、12分前・・・と進むうち
「きつかろうが、なにしようが、もういい。二人が間に合うほうに賭ける!」と決断したのです。
ミスターは、そこに至る僕の心の動きを、すべて読みとっていたんでしょう。
「伝わってくるんだよ。きみが本気だってことが!」
その瞬間、僕はなんだかうれしくなって笑ってしまいました。
そして結局、間に合ったのです。
エンディングは、「フェリーのシーン」になりました。
カメラは、一応、指宿のホテルに到着し、ゴール直後の最後のトークも撮りました。
でも、僕はすでにエンディングのシーンは決めていたので、すべてカットしました。
フェリーの中で、ふたりは眠りました。
僕は、ここだけの話し、ひとりで甲板に出て、寂しさをかみしめていました。
そして、指宿にゴールした後のトークのなかで、大泉くんがぼそっと言ったのがあの言葉でした。
休止を決めたのは、僕らディレクター陣。
・・・一番寂しいのは、大泉くんだということは、後の3人はじゅうぶんわかっていました。