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DVD第4弾「サイコロ3」ジャケット完成

藤村 | 2004/02/06(Fri) 16:08:54


 DVD第4弾「サイコロ3」のジャケットが完成いたしました。イラストを担当するのはビジービーの松村画伯。普段は「ハナタレ」を担当する女性であります。

 本来「どうでしょう」は坂谷という、これまた異才を放つ女性がスーパーやらテロップやらをデザインしております。「どうでしょう」は出演者、作り手はじめ「男くさい作品」と思われがちですが、スタイリスト小松しかり坂谷しかり、「どこか妙な女どもの感性」が加えられ、それで初めて「水曜どうでしょう」という番組が成り立っているのでございます。
 そんな中で嬉野先生と坂谷が、松村の描くイラストに「ある種のニオイ」を感じ、どうでしょう色に加えました。代表作はベトナムの「いぶし銀レスラー」。この時私は彼女が描く見事なヘソ毛の描写力にストライクゾーンを打ち抜かれ、もはやその画風に骨抜きにされたのでございます。以来、DVD全集のジャケットは松村画伯のイラストを採用するに至っております。

 さて、今回の第4弾。「サイコロ3」といえば「大泉洋ヘリ事件」が誰の記憶にも鮮明に思い浮かぶ。そこで今回のデザインを決めるにあたり私は、

「ヘリに乗る前にカメラに向かって敬礼する大泉洋氏」「その後方に搭乗を待つヘリコプター」

 という「神戸ヘリポートの一場面」を発注しました。

 ではミスターはどうするか?

 松村くんは、例の事件で「もらいそうになって涙ぐむミスター」を、大泉さんの後ろに描けば・・・と言いましが、私はあくまで「この後に起こる悲劇を知らずにはしゃぐ大泉洋」を表現するにとどめ、「さぁ!この後の出来事はDVDでゆっくりご覧あれ」と観る者の「期待感」を煽る方がジャケットにはふさわしいと考えたのであります。あまり露骨な表現は避けた方がいいと。
 でもだからと言って、ただ横に棒立ちのミスターを配置したのでは面白くない。そこで、ミスターと言えば「深夜バス加賀号でうなされる場面」が印象的だったので、

 「難しいとは思うが、大泉さんのヘリポートの場面と深夜バスに座るミスターの場面を一緒に取り込んだようなデザインを考えてくれないか?」

 そう言ったのです。

 彼女は「はぁ・・・考えてみます」自信なさげに言いました。

 ただ、私の中には「ヘリポートの空の一部をグラデーションで暗くして、そこにミスターが深夜バスの座席で苦痛にゆがむ姿を、ポッカリ浮かび上がらせる」みたいな、まぁ漫画によくある「夢や空想を思い浮かべる場面」の手法を使えばいいだろう、そんな風に思っていたのでございます。

 一方、松村画伯はたいそう悩みました。「敬礼する大泉洋」「ヘリポートの背景」「深夜バスの座席に座るミスター」それぞれのパーツは完成したものの、それをどうやってひとつのデザインとして完結させるか。彼女は悩み、夜も寝れなかったそうです。

 そんな時、長年どうでしょうを担当し、我々D陣から数々の無理難題をふっかけられ、それを細腕一本で見事にさばいてきた豪腕・坂谷が、悩む松村を尻目に、乱暴にそれらのパーツを画面に配置して行ったそうです。

 やがて、

 「これでいい。見てもらえ」豪腕は思ったのでしょうか。

 昨日、会議を終えた我々のデスクの上に、そのジャケット案が置かれておりました。

 見た瞬間、嬉野先生は「なんでこんな所にヘリの座席を出してミスターを座らせているの?」そう思ったそうでございます。「なんて斬新なアイデアなんだ!」と。

 しかし私は、

 (違うだろ!誰が深夜バスに座るミスターを、こんなにも露骨に同空間に配置しろと言った!)

 思ったものの、次の瞬間、笑いの審判が「ストライークッ!」と叫び、「ぶはははは!」吹き出さずにはおれなかったのでございます。

 (あまりにも乱暴じゃないか!おれが発注したデザインを、こうも真っ向から表現するとは!こいつは、よっぽどのバカかオレに喧嘩を売ってるのかどちらかだ!)

 驚嘆せずにいられなかった。

 「嬉野くんこれはねぇ、ヘリの座席じゃなくて、深夜バスの座席に座ってるミスターなんだよ」
 「そうなの!え?でも、なんでこんなとこに?」

 事の仔細を説明し、嬉野先生も「そ、それはすごいデザインだな」驚きを隠しきれませんでした。

 確かにこれまでのジャケットに比べ、どこか「ぽか~ん」とした印象の今回のデザイン。そしてあまりに意味不明なミスターのポジショニング。

 しかし、松村画伯の悩み、それをあまりにも乱暴に解決して、我々に投げつけた豪腕・坂谷の手腕、それを思うと、

 「参りました!見事であります!」

 笑い転げながら負けを認めてしまうのです。

 そうして改めて今回のジャケットのデザインを見た時、この騒動に巻き込まれ、訳もわからずヘリの滑走路に「深夜バスの座席」にちょこんと座わったまま引きずり出されてしまったミスターの表情が、実に味わい深く、私は身も心も奪われてしまうのです。

 「おいミスター!そんなとこ座ってたら危ないぞ!」