さて、先週は「ドラマ」のロケハンを敢行。そして今週、ついに嬉野くんの脚本が完成いたしました!
「この話は嬉野くん・・・たまらんぞ!絶対見たくなるぞぉ!これは!」
「そうでしょ?」
「いやぁ、撮るぞぉ!スケジュールも早く決めるぞぉ!やぁるぞぉー!なぁ!嬉野くん!」
「ん?ああ、そうだね・・・ふう」
ソファにどっかと腰をおろす嬉野くん。そしてなにやら1冊の本を取り出す。
「なんだ?その本・・・日英同盟?なんですか?それは・・・」
「いや、藤村くんあれだね。やはり海洋国家同士の同盟というのは利害が対決しないから・・・」
「いやいや、そうじゃなくて。なんで今そんな本を急に・・・(まさか!嬉野くん、ここへきて戦争ドラマに変える気か?それも海戦となったら、空母とか出てくんのか?)」
「もうさぁ、ちょっとは休ませなさいよ。気分転換でしょ、これは。」
「ああ、気分転換か・・・」
気分転換に「日英同盟」もないもんだ、と思ってはみたものの、やはりこのところずっと「怖いシナリオ作り」に、それこそ「怖いくらい」没頭していた嬉野くんのこと。確かに、かなり疲れていたんだなぁと思ったのでした。
そんな嬉野くんが、最近また「とんでもないカメラ」を手に入れました。
6月ごろ、この「スタッフルーム」に自身が書き込んでいた「ステレオカメラ」というやつです。
ほら!ディズニーランドとか、サッポロファクトリーのIMAXシアターなんかでへんなメガネかけて見ると、びっくりするぐらい「飛び出すやつ」あるでしょ?
あれの写真版とでもいうやつです。
写真の場合、ちょっとだけ角度の違う写真が2枚横に並べてあって、それを例のメガネで見てみると、あーら不思議!本当に立体的に見えるのです。
そんな「飛び出す写真が撮れるカメラ」を買ったのです。あの人は。
「おやおや、それが例の・・・」
「ん?そうです。これです。」
「ほーっ。レンズがふたつあるぞ。」
「そう。これで同時に2枚の写真を撮るわけ。」
「なるほど。撮って。」
「え?」
「撮ってみて」
「撮れない。」
「撮れない?なんで?」
「こわれてる。」
「壊れてる?なんで?買ったばっかりなんでしょ?」
「もうこわれた。」
「なんじゃそりゃ。」
そうです。このステレオカメラというやつは、えらい昔に生産中止になって、今や「大丈夫か?これ?」ってぐらいの中古モノしか現存しないらしいのです。
「飛び出す写真」なんてものに興味を抱くのは、たぶん世界中で嬉野くんのほかには、もう2~3人しかいないのでしょう。
しかし「ぜひ!写真集第2弾の目玉は、飛び出す大泉さんで!」と意気込む嬉野くんは、さっそく修理を購入先の東京のカメラ屋に依頼したのでした。
待つこと数日。
修理を終えたらしい「ステレオカメラ」を喜々としていじり回し、
「さて、何を飛び出させてやろうか」
・・・とターゲットを探し求める嬉野くん。
するとそこへ、呼びもしないのに「飛び出す男」が、ふらりと現れたのです。
「お!なんだ嬉野くん、それ。」
「おや、大泉さん。ちょっとそこに立ちなさいよ。」
「だからなんだ?って言ってるでしょう。」
「すごいぞ、大泉くん。嬉野くんは飛び出すカメラを手に入れたぞ。きみ飛び出すぞ。」
「オペラグラスかと思った。」
「いいから立ちなさいよ。」
「よし。こうか?」
「あれだ、手をこうグッと前に突き出して。距離感が大事だから」
「よし。のぉわーッ。」
「そうそう。あと唇もグッと前に出して」
「こうか?むぅっ。」
「ははは・・そうそう。目も。」
「目も?」
そして数日後。嬉野くんのデスクの上には、
「すんごい形相で目ん玉をひんむいた男が、こぶしを突き出し、口をとんがらせて静態している」
という不思議な写真が2枚並んでいました。
「見てごらんよ。」とメガネを差し出され、「どれどれ・・・」と見てみると・・・
「うはははは!飛び出てるよ!大泉さんが!うはははは!バカバカしい!」
小さな写真の中で、えらい形相でこぶしを突き出す立方体の大泉さんが「お菓子のおまけ」のようで笑ってしまいました。
しかし、これは間違いなく「写真集第2弾の目玉」になるでしょう。
そして、つい5分前の会話。
「なに書いてんの?」
「ん?あなたのステレオカメラの話、スタッフルームに 書いてんの。」
「あそう。でもあれまたこわれたぞ。」
「また壊れたの!」
「ピントが合わなくなった。もうあのカメラ屋のおやじ、許さん・・・。」