先週は、企画発表だけで終ってしまった「リヤカーで喜界島一周」。
本日から、いよいよ本格的にスタートです。
今回の企画は、リヤカー引っぱって・歩いて・テント、という3重苦。
しかし、やはりドキュメントというのは面白いもので、我々が思い描いていた「3重苦」以外に、実際には「落とし穴」がいくつかあった。
番組を作っていくディレクターという仕事には、ふたつの楽しさがあります。
自分が思い描いていた「番組の青図」が、「現実によって」思いもよらぬ方向へと変化していく面白さ。
一般的には「設計図から外れること」は「悪い方向へ行っちゃう」と考えてしまうんでしょうけど、「どうでしょう」という特異な番組、それを作っているディレクターの考え方ひとつで、「ハプニングとして、より面白い方向へ転がっていく」という、出演者にとっては、えらいハタ迷惑な解釈もできるわけです。
そして、「自分が思い描いていた通り」の理想形が、目の前で展開される面白さ。
これは、今回の台本に限らず「企画発表」での大泉さんのリアクションなど、まさに代表例。
そして、前枠、後枠での「小ネタ」。
こればっかりは、視聴者として「出されたものを見る」楽しさとは、少し次元の違う、ディレクターとしての楽しさが実は、あるのです。
当然、オチはわかっているので「ネタ」としての面白さは、ありません。
ですが、予定されている「オチ(=落ち)」までの、ミスターと大泉さんの間合い、最良のポジショニング。
これをドキドキしながら見守る楽しさ。
そして「落ち」の瞬間のミスターの動き。
自分の想像が現実のものとなる。ディレクターとしての至福を感じる瞬間です。そしてミスターへの感謝。
もしも、「そういう楽しさの一端でもいいから感じてみたい」と思う人がいたならば、特別に今回は、「本日放送分の前枠の台本」を、以下に添付しておきます。
これを、放送前に一読して、自分なりに「想像」してみて下さい。
自分の「想像通り」の画が、目の前で展開されたとき、「私の笑い」は、あなたの「笑いの意味」と一致することでしょう。
いや、「やはり自分はいつも通り」という方は、明日にでも読んでみてください。違った楽しみ方が2つ体験できるはずです。
2月14日放送 リヤカー喜界島一周 ②
(前)+(後)=1分 【夫婦編】
【前】=35秒
大泉 こんばんは!水曜どうでしょうです。
リヤカーで喜界島を一周し、「団結の輪を描こう」という今回の企画。
先週は、「企画発表」だけで終ってしまいました。
さぁ!今週は、いよいよ企画スタートか?
いえいえ、その前に、ホテルの4人部屋で、「ひと騒動」が起こります。
ご覧いただきましょう。
鈴井 ただいまぁ!
大泉 イ~ヤ~!(叫んで、だんなに狙いを定める)
(だんなさん身構える。)
(奥さん叫びながら突進する。)
(だんなさん、奥さんをいなす。)
(よし!これで一安心と、あらためてあいさつ。)
鈴井 みなさぁ~ん!ただいまぁ!
(そして歩き出す。)
(落ちる。)
さらに、ついでに先週の「復帰第1作・企画発表台本」も、のっけておきましょうか。
【企画発表第1部・一致団結!喜界島を一周し、文字通り輪を作ろう!】
藤村 では、ミスター。気になる企画発表に参りましょう。
鈴井 はい、そうですね。視聴者のみなさんも、きっとお待ちかねですよ。
ところで、藤村さん。東京にいるということは、「212市町村カントリーサイン」ではありませんね?
藤村 はい。
鈴井 ならば!藤村さん!我々のおはこ。「サイコロの旅」ですか?
藤村 違います。
鈴井 では、この時期!受験生お待ちかねの「試験に出るどうでしょう」・・・ですか?
藤村 いや、安田さんがいません。
鈴井 じゃぁ・・・やっぱり、行くんですか・・・しょっぱなから「海外」!
藤村 いえ。パスポートを持って来ていません。
鈴井 じゃあなんですか!いったい何をやるんですか!
藤村 ミスター・・・大事なことを忘れていませんか?
鈴井 大事なこと・・・。
藤村 我々は、9ヶ月もの長い間、みんながバラバラだったじゃないですか。
鈴井 (ハッ・・・!)
藤村 何をやるにしても、その前に大事なことがあるんじゃないですか?
我々にとって、今、一番大事なこと・・・それは、
鈴井 団結・・・。
藤村 そうです。バラバラだった4人が一致団結し、ひとつの輪を作ることが、今一番必要なんです。
鈴井 そうっかぁ「4人の輪」か!すいませんっ!企画、企画とあせるあまり、一番大事なことを忘れていましたっ!
藤村 いいんです・・・。じゃあ、逆にミスターのアイデアをいただきましょう。
我々の団結を固め、「輪」を作るために、今すべきことは何でしょうか?
鈴井 それは・・・、敢えて、苦しいことに立ち向かうことです。
苦しいことに立ち向かってこそ、団結の輪が生まれます。
藤村 苦しいことって・・・何をやるつもりですか?深夜バスですか?
鈴井 バカなこと言わないでください。そんなもの乗りません。ぼくらは何も乗りません。
藤村 何も乗らない?じゃぁ、一体どうやって旅を、苦しい旅をするつもりなんですか?
鈴井 ・・・歩きましょう。
藤村 えぇっ!
鈴井 思い出してください。ちょうど3年前の冬、我々はここ羽田を出発し、東京を2日間にわたって歩き続けました。「東京ウォーカー」です。苦しかった・・・。もう2度とやりたくないと誰しもが思いました。あんなに苦しくて実りのない企画、もう2度とやるものかと。
しかし、いや、だからこそ今、再びやるのです。企画うんぬんじゃない。今は、苦しいことに立ち向かい、団結し、4人の輪を作ることが大事なんです!
藤村 じゃぁ、また歩くんですね?この東京を。
鈴井 バカなこと言わないでください。寒いじゃないですか、東京は。
藤村 えぇっ!じゃぁどこを・・・。
鈴井 南へ行きましょう。そして「4人の輪」が生まれそうな(手で輪を作って)・・・
そうだ!島がいい!島を歩いて一周しましょう!
藤村 そうか!文字通り「輪」を描いて歩く、ということですね。気づかなかった!
鈴井 でも、いいところありますか?日曜日までに一周できそうな島・・・。
藤村 ありますよ・・・ミスター。
鈴井 えぇっ!どこですか!
藤村 島の周囲約50キロ。鹿児島の洋上380キロ南にある、「喜界島」です!
鈴井 きかいじまかぁ!よーし、決まった!喜界島を一致団結して、一周するぞぉ!
【企画発表第2部・助け合いの精神!秘密兵器ついに登場!】
鈴井 きかいじまかぁ!よーし、決まった!喜界島を一致団結して、一周するぞぉ!
藤村 しかし、ミスター・・・正直な所、ぼくは自信がありません。50キロもの距離を明日から日曜日までのたった3日間で歩けるかどうか・・・
万が一、ぼくが途中で脱落してしまっては、団結の輪が描けません・・・。
鈴井 藤村さん・・・その時は、ぼくが助けます。
藤村 ミスター・・・
鈴井 ぼくが、あなたをおぶってでも、島を一周してみせます。
藤村 しかし、ミスター!よく考えて下さい!それでは、あなたも潰れてしまうじゃないですか。
鈴井 大丈夫。その時は、きっと大泉くんがぼくらふたりを、おぶってくれますよ。
その強靭な二の腕にぼくらふたりをかつぎあげ、喜界島を一周するぐらいのことは、やってのける男です。それが、助け合いじゃないですか。
藤村 でもそれでは大泉くんの負担があまりにも大きすぎる・・・なにか、もっと楽に助けられる手立てはないものか・・・
鈴井 そうだ!(手をポンとたたいて)リヤカーだ!リヤカーに乗せればいいんだ!
なにもおんぶしなくったって、リヤカーがあれば、もっと楽に助けることができるじゃないですか。
藤村 そうかぁ・・・リヤカーか。確かに、常にリヤカーを引っ張っていけば、万が一落伍者が出た時も楽に助けることができる。
鈴井 みなさん!思い出してくださいよ。「東京ウォーカー」は3日で70キロ歩くと言って、結局2日でやめちゃったじゃないですか。なぜですか?助け合わなかったからですよ。誰かが苦しいと言った時に、助ける手段がなかったからですよ。
でも今回は違います。ぼくらにはリヤカーがある!大泉くんが一生懸命引っぱるリヤカーがある。もう同じ過ちを繰り返すことはありません!
藤村 じゃぁ、安心ですね。いつでもぼくらのそばには、大泉くんの引っ張るリヤカーがある!
鈴井 そうです。
完。