岐阜・下呂温泉での「長野おやき対決」。
「なにもあんたが、だまし討ちせんでも勝てるのに・・・」
そう思った方もいらっしゃるだろう。
甘いのだ。
「おやきが?」
違う。おまえが甘ちゃんだと言っているのだ。
そりゃ「野沢菜2個」「あん2個」で真っ向勝負したって魔神が勝つに決まっている。
しかしだ!いいか。
「長いリーグ戦」の場合、「勝ち方」が重要なのだ。
それにだ。なんでか知らんが、負けちゃってんだ。この魔神様がだ!5万点だかなんだか知らんが、ダブルスコアだ。
もう、スクイズだの、犠牲フライだの、高校野球みたいなことはやってられんのだ!カブレラと中村に5万回場外へ叩き出してもらわんと、逆転できんのだ。
「マウンドに立つことすら恐ろしい」と相手に思わせんといかんのだ。
で、ここに「中身が見えないおやき」が4つある。
2つは「野沢菜」。2つは・・・そうだ、おまえが嫌いな「あんこ」だ。
「は?・・・わたくしですか?」
ボヤッと聞いてんなよ。おまえに言ってんだぞ。
「あ・・・すいません・・・ぼやっと読んでました」
ダメだぞ。参加しろ。
おまえは、「あんこ」が大嫌いだ。
「大嫌いです」
見るのもやだな。
「やです。」
じゃぁ!選べ。運が良ければ、「あんこ」は食わなくて済む。
「じゃ、手前のふたつ・・・」
ほぉ~手前のふたつ・・・なぜ?なぜ、そのふたつを選んだ?
「なんとなく・・・勘で・・・」
ほぉ~勘で・・・。そうか、キミの勘が当たるといいねぇ。キミは、強運かなぁ?
じゃぁ、食うぞ。
「はい!」
レディーッ・・・ゴーッ!
どっちだ?
「うわっ!あんこだ!」
うはははは!あんこか!・・・おっと!オレもあんこだ。
「あっ・・・ということは、残るふたつは野沢菜・・・」
そうだ。痛み分けだ。これさえ・・・こう・・・食っちまえば大丈夫だ。
「あっ!もう食ったんですか?」
当たり前だ。ほら、おまえも早く食え。どうだ?苦しいか?
おっ!どうした?今、ビクッときたぞ・・・。
・・・よーし。食ったな。さぁ!あとは野沢菜だ。ほら、いくぞ。
(よーし・・・見てろよ。魔神だか間男だか知らんが、いい気になりゃぁがって。一気にケリつけてやるからな・・・)
どうした?なにぶつぶつ言ってんだ。
「すんません・・・水一杯くらさい」
あぁ?水か・・・ほれ、飲め。
「うぅっ!」
どした!どした!発作か!おまえ病気かッ!
「それッ!」
あっ!きたねぇ!油断させやがった!
「ぶぁッ!・・・これも・・・これも!ぶゎんこだぁーッ!」
ぶわんこじゃねぇ!あんこだ。あんこなんだ!それも!
「きたねぇ!あんた!あまりにもきたねぇ!ふたつは野沢菜って言ったじゃねぇか!」
うるせぇ!知るか。・・・ハイっ!食べましたぁ!ぼくの勝ちで~す。
どうだ?いやだろ?こんなやつと戦うの。
「ぜったいに勝つ気がしません。」
そうだろぉ~。そこが重要なわけだよぉ。
「あんた、絶対いい死に方しませんよ」
おっ!まぁ~だ、そんなこと言える元気があるんだぁ~キミぃ。
そうかぁ・・・じゃ、明日の朝、ぼく、キミを奇襲するから。
「奇襲って・・・」
なんだ?文句あんのか?
「あんた・・・バカじゃないの?奇襲するからって、それ言葉が全然なってないですよ」
なにが?
「奇襲ってのは、相手に悟られず、いきなり攻撃をしかけるから、奇襲って言うんですよ。あんたみたいに、奇襲しますからって、それは、あれですよ・・・ぜんぜんダメですよ」
おぉ・・・なんか、動揺してんじゃねぇか。キミの方が、ぜんぜんダメみたいじゃないの。
「・・・。」
ね、わかるでしょう?「明日の朝、奇襲します!」って、これがどんなに精神的ダメージを与えることか。
そう、あの夜・・・。
もうたぶん、「奇襲予告」されたミスターは、寝るに寝れなかったのでしょう。だから、「やぁやぁ!」と言ったとたん、起き上がってきたのではないでしょうか。
「なるほど・・・」
なんだよ。おまえ、もういいよ。
「は・・・?」
もういいって。文章の語尾が「です」「ます」調に変わっただろ?文体を変えたんだ今。
「いや、せっかくだから、奇襲も体験させていただこうかと思いまして・・・」
いいよもう。めんどくさいもん。
「・・・。」
おまえは・・・あれだろ?ずっと前、嬉野くんの「カメラ講座」にも出て来たやつだろ?シャッタースピードがどうのっていう、どうでもいい話につきあわされてたやつだろ?
「あぁ・・・そうですけど」
やっぱりな。だから今回は、まどろっこしい文章になっちまってるわけだな。
「あれですか?・・・書いてるうちに、嬉野さんの文章をパクってることに気付いて、ご自分で、言い訳を・・・」
なに?
「図星ですか。」
いい。帰れ。
さぁ!そういうわけで、午前4時30分。
いよいよ「甘味ストーカー」が、その本領を発揮し始めたのである。
オープニングの提供ベース。怪しげに、ふすまを覗き込む魔神。
本編では、明かりをつけて「やぁやぁ!」と言う所から始まっちゃいるけれど、あぁやってキッチリ「忍び込んで」いるわけである。
甘いものが大嫌いな男の枕元に、水ようかんを2本持ったヒゲ面の男が忍び寄る。
朝4時半にだ。
で、「ど~ですかぁ?おいしいですかぁ~?」なんつって、目の前で、長~い水ようかんを喰っていく。
もう・・・犯罪だ。ストーカー行為だ。
初めこそ、小ボケをかます余裕のあったミスターも、明らかに途中から、顔が無表情になっていった。
つるっ トン つるっ トン・・・。
目の前では、ストーカー男が、淡々と水ようかんを減らしていく。
ミスターは、もう、顔を上げようともしない。
つるっ トン つるっ トン・・・。
「・・・それなに・・・最後?」安田さんが、小声で囁く。
つるっ・・・カタッ。
「・・・。」
「ハイ・・・」
1分少々の出来事であったか。
ミスターは、ゆっくりと水ようかんから手を離し、そして、首を1回かしげた。
明け方の静まり返った部屋の一室。
「あのねぇ・・・」
ミスターが口を開いた。
「朝っぱらから、こんなもん食えるやつ・・・おっかしいよ・・・」
あれは、マジだ。
なんだろう、「どうでしょう」が始まって幾年月、ぼくは、ミスターの「心の中から搾り出た本気の言葉」というのを初めて聞いたような気がした。
「あのねぇ・・・おっかしいって、ぜったい」
ミスターの本気かげんが、あまりに本気なだけに、声にならない笑いで苦しくなった。
午前4時。彼は、私が来ることはわかっていた。彼なりに考えたんだろう。
よし「やぁやぁ!」って来たら、勢いよく立ち上がってやろう。「レディー・ゴー」で小ボケのひとつもかましてやろう。2日続けて同じように、ただ「やられる」だけじゃ、つまんないからね。
そんなことを思っていたのかもしれない。
でも、目の前の男の食いっぷりは、予想していたものとは、大きく違った。
あんなデカイ水ようかん、全部食うのだって一苦労だ。時間かかるに決まってる。
それがだ。1分後には、「はい」とか言って、手を上げた。
もう、何も考える必要はない。
もう、こいつは「おかしいのだ」。それが、ミスターの出した結論だったのだろう。
ここまで来れば、魔神も本望である。
さぁて・・・もう書く元気がなくなったぞ。続きは、また今度書く!
その前に、大事なことを先に言っておく。
掲示板に「たーくん」って書くなよ!奇襲するぞ、この野郎ぉ。