2003年10月、知床の自然環境を人類共有の資産とし後世に引き継いでいこうと、環境省などが知床国立公園を世界遺産の候補地として推薦することを決めた。世の注目を集めた知床には観光客が前年に比べ70%増え、230万人が訪れるようになり、来年夏、世界遺産に登録されれば世界中から、さらに観光客が来ることが予想される。
一方で、1990年からの保護政策により、知床では人間に追い回されることがなくなり、人間を怖がらない新世代のヒグマが、悠然と人里に姿を見せ始めている。
知床を訪れる観光客が一様に口をそろえるのは「野生のクマを見たい」。人を恐れぬ新世代のクマの増加と、それを目当てに訪れる観光客との間で、知床は今、一触即発の状態にある。
知床が手本とする自然遺産は一体どのようなものなのか。知床の自然をどのように守り、増加する観光客をどのように受け入れていくのか。1年間にも渡る取材を通し、水中カメラでとらえたヒグマの泳ぐ姿など、珍しい映像をまじえながら、地元の苦悩と課題を検証する。
2004年度テレメンタリー優秀賞 受賞作品