環境省が鉛弾の使用全国禁止を検討 鉛中毒死防げ
10月1日から北海道で解禁となったエゾシカ猟。ジビエブームでシカ肉の流通量も増えていますが、このエゾシカ猟に使われる鉛弾が原因で、世界でわずか5000羽と言われるオオワシなど絶滅の危機にある猛禽類が死ぬ被害が後を絶ちません。ハンターが鉛弾を使うと、死んで放置されたシカに鉛弾の破片が残ります。その肉を破片ごとオオワシやオジロワシが食べることで、鉛の毒が全身に回り運動障害などの急性中毒をおこして、死に至ります。 道内では有害物質である鉛を使ったライフル弾の使用が禁止されていますが、 環境省の小泉進次郎大臣は会見で「北海道以外の地域でも、水鳥、猛禽類保護の観点から、非鉛製銃弾への切り替えを進めたい」とコメントし、2年後の鳥獣保護法改正に向けて北海道で行われている狩猟での鉛弾の使用禁止を全国に広げることを検討していくと述べました。
野生生物を専門に診る釧路の齊藤慶輔獣医師は、オオワシやオジロワシなど大型猛禽類の鉛中毒を世界で初めて発見し、これまで、被害根絶のため奔走してきました。その結果、道内では2000年にシカ猟での鉛弾の使用が禁止され、2014年には条例を制定して罰金刑も設けられました。しかし規制のない道外のハンターが持ち込んで使用するため被害は今も続いています。HTB祭りの講演の中で、齊藤慶輔獣医師は「ハンターが北海道に鉛弾を持ってきて、バンバン撃って帰っていく。希少種の鉛中毒を止めるのは簡単です。鉛弾をやめればいい」と訴えました。今回の環境省の方針については「小泉大臣が鉛弾撤廃を目指すと言ってくれたのは英断だと思う。日本から狩猟で使われる鉛弾が撤廃されることを期待したい」と話しています。
道がアイヌ男性を告訴 研究者らが取り下げ求める
先住民族の権利か?道の規則か?アイヌの男性が道の許可を得ずにサケを捕獲し道が告発した問題で、研究者らが道に告発を取り下げるよう求めています。
今月1日、紋別市内を流れる藻別川で、紋別アイヌ協会の会長が、サケやマスなどおよそ60匹を捕獲しました。アイヌ民族が儀式に使うサケを捕る場合、道に事前申請が必要ですが、畠山さんは「アイヌのサケ漁は先住民族の権利であり行政の許可は必要ない」としてあえて申請しませんでした。道の告発を受けて道警は家宅捜索をして網やカゴを押収し、調べを進めています。
鈴木知事は10日の定例会見で、警察に告発したことについて「再三の指導にも関わらずこのような行為となり、残念と述べました。これに対して先住民族の政策や国際法に詳しい研究者らが15日に会見を開き、国際人権問題に詳しい室蘭工大の丸山博名誉教授は、アイヌ民族のサケの捕獲は、国際法上、極めて正当な行為だと述べました。また東北学院大学の榎森進名誉教授は「(サケを捕獲するなどの)先住権とは個人に対する権利ではない。紋別という地域の中のアイヌ集団に与えられる権利」と説明し、「ごっちゃにしてはいけない」と話しました。アイヌ施策推進法(付帯決議)では、アイヌ文化継承のために行われるアイヌのサケ漁について、円滑に行われるよう配慮するとされています。許可制度の見直しについて問われた鈴木知事は、新たに考え方を変えることは考えていないと答えました。鹿児島純心女子大の広瀬健一郎准教授は「畠山さんの行為はこれまでの北海道による無策、無視があったなかで、やむなく行われた、道は畠山さんへの告発を即刻取り下げ、紋別アイヌ協会とサケの採捕の在り方について協議をはじめ、先住民族権利に配慮した合意形成を求めます」と訴えました。
化学物質過敏症 新たな取り組み
日本では7.5%の人が発症していると
言われる「化学物質過敏症」。
身の回りの化学物質に反応し
頭痛や吐き気、呼吸困難などの
症状が現れる。
効果的な治療法がない中
症状を訴える人たちのための
取り組みが進んでいる。
倶知安町の夫婦が立ち上げたプロジェクト
「カナリアップ」だ。
症状に苦しむ人たちが住み込みで働ける
工場が建設された。
胆振東部地震から1年 液状化で札幌のマチは
去年9月の地震で、液状化などの被害が相次いだ札幌市。
もう一つの被災地・札幌は、1年たって復旧は進んでいるんでしょうか
9月5日の空撮札幌市清田区里塚。
閑静な住宅街の中にポツンポツンと空き地が見える。
9月6日の突然の大きな揺れは、住宅街に大きな爪痕を残した。
震源から50キロ以上離れた札幌市清田区里塚で、大規模な液状化が発生。
道路の陥没や土砂の噴出、家の傾きなど被害が相次ぎ、62棟の住宅が大規模半壊や全壊の被害を受けた。
1年がたち、噴き出した土砂は姿を消し、危険と判定された家は壊され、槌音が響くが、まだ、傾いたままの家もある。
現在でもおよそ60世帯の人が自宅を離れて暮らしている。
街の再建に向け、市は今年6月から、道路と宅地の地盤改良工事を進めている。
道路は、「深層混合処理」と呼ばれる工法で、土壌を掘りセメントを混ぜながら、上に引き上げることで、柱のようなものを作り、土砂の流れを防ぐものだ。
最終的には、700メートルの市道におよそ1000本の柱を作る計画だ。
一方、宅地には、3メートル下の地層に、ゼリー状に固まる薬液を注入。
やわらかくなっている土砂を固めることで、揺れが起きた時でも地盤を安定させる。
問題は空き地の後に果たして住み続けてもらえるかどうか。
里塚では地震後、町内会有志によるパトロールを続けている。
避難後の空き家や、興味本位で地区を訪れる人がいて、不安の声が相次いだからだ。
いまも、1日1回約30分かけて、街を見回っている。
また、今月8日には、復興に向けたイベントを開く予定だ。
豊平区月寒東3条19丁目では、液状化による家の傾きなどおよそ40棟に被害が出た。
住民らは、造成工事に問題があったのではないかと業者に対して補償などを求めて交渉したが・・・20年の壁に阻まれた。
市による地盤改良工事も見通しが立たず、住民らは自力での再建に進んでいる。
胆振東部地震から1年 ブラックアウト
胆振東部地震で私たち道民が大きな影響を受けたのがブラックアウト。
あのときは全道の295万世帯が停電する前代未聞の事態となりました。
この1年で北電はどう変わり、市民の生活に不安は減ったのでしょうか。
北海道全域の295万世帯が停電。
「ブラックアウト」が起きた、1年前の胆振東部地震。
信号も、街灯も、ネオンも...。住民が身を寄せる避難所も...。何もかもが、闇の中に。
あの日、道内の電力の半分近くを発電していた苫東厚真火力発電所では、相次いで全3基が停止しました。
電力供給は需要と供給が釣り合っていないと成り立ちません。
1年前は、苫東厚真の停止などにより電力の需要と供給のバランスが崩れ、ブラックアウトは起きました。
この1年間、石狩湾新港では、LNG=液化天然ガスを使った大型火力発電所が稼働を始めました。
さらに、本州と北海道を結ぶ送電線「北本連系線」がこれまでの1.5倍、30万キロワット分増強されました。
全域停電というのは、リスクはより低くなったといえます。
電力がなくては命の危険にさらされる重病患者はこの1年の変化をどう受け止めているのでしょうか。
自力での再建に進んでいる。
「伝統儀式に使うため」アイヌ男性がサケ漁を強行した訳とは
1日、紋別市を流れる藻鼈川(もべつがわ)の河口近くで、自然の恵みに感謝を捧げるアイヌ伝統の儀式カムイチェプノミが行われました。
供物として祭壇に上げられたサケは男性が自ら川で捕獲したものです。
しかし道内水面漁業調整規則により、アイヌ民族が儀式に使うサケをとる場合、事前に申請が必要です。男性は「アイヌのサケ漁は先住民族の権利であり、行政の許可は必要ない。先住権を求める一つの闘いだ」としてあえて申請しませんでした。サケやマス、ウグイなどおよそ60匹を持ち帰ったため、道は警察に告発し、現在、警察は男性から事情を聴くなど調べを進めています。
海外では先住民族にサケ漁を認めている国もあり、国連は去年8月、日本政府に対し天然資源を利用する権利をアイヌ民族に認めるよう勧告しています。アイヌ施策推進法が今年5月に施行され、「文化伝承のために行われるアイヌのサケ漁について、円滑に行われるよう配慮をする」とされましたが、道は手続きの必要性は変わらないとしています。先住民族の権利か、日本の法律か。今後、議論を呼びそうです。
シェイクスピアの名作「オセロ」をアイヌ民族に置き換え、本場ロンドンで初公演
8月、シェイクスピアの名作「オセロ」の主人公をアイヌ民族に置き換え、幕末の北海道を舞台にした作品が演劇の本場ロンドンで初めて上演されました。旭川出身でアイヌ民族の早坂ユカさん(49)は、初めて臨んだ本格的な演劇の舞台がロンドン。「日本でもアイヌを知らない方もいっぱいいるが、海外では知らない方がもっと多い。現状を少しでも伝えたい」と海外での公演への想いを語りました。オファーを出したのは、会場となった劇場のジャティンダ・バーマ芸術監督です。ロンドンに招いた理由には、イギリスのEU離脱の背景にある移民問題と共通するテーマがあると指摘しました。リハーサルの様子や、ロンドン市民の反応を取材しました。
学生が届ける〝沖縄戦〟の手紙
沖縄戦で亡くなった兵士の遺族が
思いをつづった手紙がある。
その多くは道内からの手紙で
兵士の死を知らせてくれた
陸軍歩兵第32連隊の大隊長に返信したものだ。
手紙はあわせて356通。
大隊長が70年以上保管してきた
これらの手紙を遺族のもとに1軒1軒、
届ける学生たちがいる。
召集された戦争体験者の話を聴き、
沖縄での遺骨の発掘作業にも参加し
学生たちの思いは強くなっていく。
「私たちが(体験者の)話を聴ける最後の世代」
「(遺骨を)絶対に見つけてあげたい」
終戦から74年。
学生たちは愛する家族を引き裂いた
〝戦争〟の実相に触れた。
アイヌ文化を自ら学ぶ 若い担い手たち
札幌大学の一般社団法人、ウレシパクラブは
アイヌ民族の歴史や言語をはじめ、
伝統舞踊や工芸など、広くアイヌ文化を学ぶ場です。
今から10年前、
アイヌの学生に入学金・授業料に相当する奨学金を支給し
教育の場を提供する全国初の取り組みとしてスタートしました。
クラブのメンバーは現在20人。
そのうち13人がアイヌの学生です。
幼い頃から父の活動に参加し、アイヌ文化の中で育った青年もいれば、
アイヌではないけれど将来、猟師になることを夢見て、アイヌの精神世界を学ぶため札幌大学に進学した女性もいます。
4月から新たに加わった新入生を中心に
ウレシパクラブの活動を追いました。
アイヌ遺骨"白老での慰霊"にアイヌの人々が反発
全国の大学などに保管されているアイヌ民族の遺骨を、白老の民族共生象徴空間に集める事に対し、アイヌの人々が反発しています。
国のアイヌ政策を決める担当者に、国の方針に反対するアイヌ民族567人分の署名を提出しました。
アイヌ民族の遺骨は、かつて大学の研究者らがアイヌ墓地を掘り返すなどして集めました。その時、持ち出したのはほとんどが研究対象の頭の骨のみで、身体の骨の多くは、そのまま墓地に残されたのです。
署名提出の場でアイヌの人からは、頭骨のみが象徴空間に行って慰霊されて、地域にある残りの遺骨はどうなるのかと訴えました。
またアイヌ民族は地域によって風習が違う、白老に集めてどんな形でどんな慰霊ができるのか?と国に質しました。
満足の行く回答が担当者から得られない中で、その2週間後、アイヌ政策推進本部長でもある菅官房長官が、白老町の民族共生象徴空間を視察しました。はたしてアイヌの人々の訴えは国のトップに届いているのでしょうか。そこで菅官房長官が残した言葉とは。