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「映画愛」を具現した聖地「ディノスシネマズ札幌劇場」への想いあふれるHTBで...。

映画

スタッフY&SODANE編集部

2019/08/21

受験生のとき、デートで「燃えよ!ドラゴン」を見に行きました。それが「スガイディノス」との出会い。このときすでに「燃えよ!ドラゴン」は10回くらい見ていたし、札幌の劇場では3回目くらいのアンコール上映でした。冷静になって振り返ると、そんなブルース・リーの熱狂的ファンにつき合わされた女性がかわいそう。振られて当然。大学落ちて当然です。映画は劇場で見るか、テレビの地上波で見る時代でした。

「スガイディノス」とは何だったのか?

たとえば、週に1回は痺れたいタンタンメンの店とか、週に2回は汗をかきたいスポーツジムとか。身の回りにあるのが当然。無くなって初めてその有り難さが分かる場所とでもいいますか。自分にとって、スガイディノスはそんな存在。閉館後、そう思いました。

ハリウッド映画もかければ、ミニシアター系の作品もかける。ドキュメンタリーの小品もかければ、インド映画で踊ってもいいですよ。そのふり幅を説明するのに、「映画愛」という言葉しか思いつかないのがスガイディノスでした。

もうかる、もうからない、が基準じゃない。好きだからこの映画をかける。ヒットしなさそうだけど、札幌の人に見ていただきたいのでこの映画をかける。見る価値はある。いや、価値を決めるのは劇場の側じゃない、映画を見る人たちだ。だから、かける。そんな「映画愛」がスガイディノスにはありました。

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思いつく言葉は「映画愛」

「映画愛」をまとった気のようなものが、チケット販売のカウンターや、レバーを長いこと押さないと流れない水洗トイレや、7階と8階をつなぐ階段や、古い建物の隅々から立ちのぼり、雨の日の室内干しのにおいのように映画ファンの鼻腔をくすぐる。そんな映画館でした。

「THIS IS IT」でマイケル・ジャクソンという巨大な才能の仕事ぶりに娘とともに感動し、「カメラを止めるな!」で「伏線と回収」を娘と大笑いしながら学んだのもスガイディノス。家庭教育の場でもありました。

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閉館時は新旧の傑作が上映された。

閉館を前に、ファンの声を聞いて選んだ映画を上映する。スガイディノスの「映画愛」って、こういうところだよなと思ったものです。選ばれたのは「ジョーズ」や「セッション」や「湯を沸かすほどの熱い愛」や「最強のふたり」や「君の名前で僕を呼んで」など、新旧の傑作。

いろいろ見に行きたかったのですが、都合がつかず、「燃えよ!ドラゴン」だけ行きました。上映されたのはオリジナル版ではなく、ディレクターズカット版。「燃えよ!ドラゴン」のディレクターズカット版はショットが2ヵ所追加されていて、蛇足なんです。タンタンメンにコップの水を入れられたような気分になるんです。うなだれて家路につきました。これが私にとって最後の「スガイディノス」でした。くしくも「燃えドラ」で始まって「燃えドラ」で終わったんですね、この原稿を書いて初めて気付きました。「あの2カットはとにかく要らない」。こういう映画ファンが愛したのが、スガイディノスでした。

スタッフY

この記事を書いたのは

スタッフY&SODANE編集部