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北海道の海が変わる!?旬の味覚に影響も...。

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HTB函館支局・渡邊真

2019/07/18

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■なじみの薄い魚が豊漁

北海道といえば、魅力的なのが海の幸。代表的なものでいうとサケやサンマ、ホッケなどなど色々ありますが、いまその構図を変えんばかりの勢いで獲れているのがマイワシです。去年の道内の漁獲量はおよそ12万7千トン。5年前に比べて4倍以上になりました。

釧路町の釧之助本店では鮮度の良さを生かしたマイワシの刺身を提供。加工品をはじめ、去年はマイワシ専用の缶詰工場を作るなど販路拡大に力を入れています。「品質が非常に高いので加工品を作るだけでなく鮮魚としても全国に売り出してきたい」(運営会社専務)

北海道のマイワシは1980年代後半には100万トン以上獲れていたのですが、その後激減。なじみの薄い魚になってしまいました。そのマイワシが増え始めているのはある気候変動が影響していると考えられています。

■"レジームシフト"と"魚種交替"

日本がある北太平洋の海水温は数十年規模で変動します。水温が温かい時期の温暖期と冷たい時期の寒冷期にわかれます。この2つの時期が入れ替わる"レジームシフト"に合わせて獲れる魚が大きく変わる"魚種交替"が起こると考えられています。

マイワシは寒冷期に増えるとされていて、1980年代後半もまさに寒冷期でした。函館頭足類科学研究所の桜井泰憲所長は近年のマイワシの増加について「"魚種交替"の兆しがみえている。」としています。


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■歯止めのかからないスルメイカ

一方で函館市の魚でもあるスルメイカは深刻な状況が続いています。6月に解禁になったスルメイカ漁ですが、本来なら漁獲量が上向いてくるはずの7月でも「型が大きくなっただけで量が増えたとは思わない」(市場関係者)と悲観的な声が聞こえてきています。6月の函館市水産物地方卸売市場でのスルメイカの取扱量は去年に続いて2番目に悪い42トンにとどまっています。

スルメイカの漁獲量の減少にはいくつか原因が考えられています。1つ目は外国漁船による乱獲です。日本海で漁をする中国や北朝鮮は網ですくい上げるようにして漁をします。そのため成長途中の小さなイカをたくさん獲ってしまうことがひとつの原因だと考えられています。

また、地球温暖化による海水温の上昇も影響しています。日本海で獲れるスルメイカは東シナ海や日本海の南側で生まれ、餌をもとめて北上したあと、産卵のために日本海を南下する習性があります。地球温暖化による海水温の上昇でスルメイカの好む海水温帯が変化し、日本沿岸を通っていたスルメイカも大陸側を通るようになっているといいます。「イカの漁場の近くには排他的経済水域の境界があるため、ロシアや北朝鮮海域に入ると日本の漁船がイカを獲ることができなくなる」(桜井所長)

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■温暖化が与える海水温への影響


世界での温暖化がこのまま進み続けた場合、世界の平均気温は4.8℃上がると考えられています。環境省も温暖化についての取り組みを広めようと「COOL CHOICE」のページを立ち上げて温暖化対策を呼び掛けています。温暖化は海水温への影響も大きく、平均気温が4.8℃上がると高いところで3℃ほど上がるとみられています。魚の資源管理に詳しい北海道大学の松石隆教授は「変温動物の魚にとって、水温変化は人間にとっては熱が出たみたいなもの。魚は自分の適した温度のところに逃げていく。そのため、魚の分布が変わってしまう」と警鐘をならします。

海水温の上昇はスルメイカの他にも様々な北海道の魚に影響を与えます。サケの場合、4~6月ごろの海水温が上昇すると、川から海にでた稚魚が死んでしまい、戻ってくるサケが減ってしまいます。ホッケも、産卵の時期がずれたり、エサが無い時期に卵が孵化してしまうなど数が増えなくなってしまうと言われていて、資源量の減少からホッケについては国が漁獲枠を設けて資源管理を検討しています。他にもタラコの原料となるスケトウダラは南下の時期が遅れたり、一方でブリがオホーツク海側で獲れるようになるなど既に出てきている変化もあります。「柔軟な漁業と資源管理が大切。消費者も"海のエコラベル"のついた魚を購入することや、いまよく獲れている魚をスーパーなどで聞いて消費することで応援して欲しい。」(北大・松石教授)

北海道の大きな魅力である海の幸。私たちの次の世代も食べ続けれるよう、少しずつでもできることから行動していきましょう。


この記事を書いたのは

HTB函館支局・渡邊真

道民歴5年目の記者が道南、函館のいろんな情報を発信していきます。