now onair

NEXT

SODANEは2020年6月、サイトをリニューアルいたしました。最新記事は下記よりご覧ください。

SODANE

日本初!海外のワイナリーが函館に進出! 本場フランスのワイナリー当主に聞く未来

ニュース

HTB函館支局・渡邊真

2019/08/16

1563522858021.jpg

フランスのブルゴーニュ地方で約300年にわたって家族経営のブドウ農園、"ドメーヌ・ド・モンティーユ"。
当主のエティエンヌ氏がブドウの栽培地に選んだのは意外にも北海道・函館市だった。
海外のワイナリーが日本にブドウ農園をつくるのは初めての取り組み。何が彼を惹きつけたのだろうか。

植樹式の様子はこちら

―なぜ函館を選んだのですか?

非常に綿密な科学的データに基づいてこの場所を選びました。私は長野から北海道の間で畑をやりたいと思っており、ブルゴーニュ大学の3人の専門家に調査をお願いしました。それぞれ、「天候」、「土壌」、「地質」の専門家の方に研究をして頂いて、12の候補地が選ばれました。そこからさらに研究を進めて、最終候補地として5つの場所を選びました。

5つの候補地には全て行ってみて、実際によくもう一度確かめてみて、最終的に私が育てたいと思っているブルゴーニュの品種"ピノノワール"と"シャルドネ"が最もよく最適に育てられるのは函館であると確信して函館を選びました。

ー函館のテロワールを選んだ決め手について教えてください。

土壌だけでは説明しにくいところがあります。先ほど申しました3つの要素を絡めて分析をしなければいけないのです。特に天候と合わせて考えても、例えば北海道でもワインの有名な産地としてで余市がありますけども函館というのは余市よりも暖かくて、なおかつ雪も少ない。それと太陽の方向ですね。日射条件が函館は非常に良いということ。畑が南東を向いているということ。さらに土が火山性の土であることや、好ましい斜面の傾斜になっていること。全ての項目を分析しまして函館がいいという風に思いました。

ーフランスで特徴の近い産地ありますか?

他と比べてどこが近いかというのは非常に困難です。というのは、あまりにも天候ですとか様々な条件が複雑で簡単にフランスのどこが函館に似ているということは言えません。ですが、私があえて言うならばバスク地方ですね。バスク地方の丘陵地帯が函館に似ているのではないかと思います。

ー気候の中で注目したのは?

最も気候や天候で興味があったのは雪に関してです。空知や余市に比べて函館は雪が少ないということが非常に興味深い点でした。例えば、函館の雪の深さは約50cmほどですが、 空知や余市は2m積もります。雪が少ないおかげで冬の間も剪定作業などの仕事ができるんではないかということに目をつけました。合わせて余市や空知よりも南の方を選びました。フランスのように私が育てたいと思っている、"シャルドネ"、"ピノノワール"、そして興味のある"リースリング"、"ソーヴィニヨン"という品種は涼しい気候に合ってるんです。北海道の地で雪が少ないところ、ということで函館を選びました。

ー雪が少ないことのメリットについて。

フランスでも冬に剪定をするんですけども、こちらは非常に専門的な話になりますのでちょっと割愛させてもらいます。ただ冬の間にぶどうの木が休眠している時に木を切るということは、私たちの栽培方法としては非常に大事です。おそらく函館では冬の非常に長い時間にその作業が出来るんではないかと思っております。他の北海道の土地では雪があるために、雪の降る前か雪が解けた後にその剪定作業終わらせてしまわなければなりません。ぶどうの生殖のサイクルにあわせると、やはり冬の間に雪が少なく剪定作業ができるのは大切なことだと思ってます。

ただ、私がここで付け加えておきたいのは、余市や空知が雪の深い間に作業ができないということでブドウの品質が落ちるということを話ししてるわけではありません。各地方でそれぞれに合った品種をそれぞれの気候で育てておられるということ、そして、素晴らしいワインを作っていらっしゃるということを私も重々承知しております。私の考えでやりやすいように"ピノノワール"、"シャルドネ"をうまく育てて行くには函館の場合は冬に剪定するような育て方がいいのではないかという風に感じています。

syokujyu.jpg

ー去年既にワインを造られたと聞きました

よくご存じですね(笑)空知や余市の友人たちのおかげで葡萄を分けていただきまして醸造を行いました。三つのぶどう品種、"ケルナー"と"ツヴァイゲルト"と"ピノノワール"でワインを作りました。その結果、それらの土地で作られる3品種が非常に素晴らしいポテンシャル、可能性を持ったぶどうでありワインであるということを再発見いたしました。

なぜ他の土地で分けて頂いて作ったかと言うと、私どもの畑ではぶどうが収穫できるのは早くても3年後の2022年になります。その時にすでにいいワインが作れるようにということで今から他の土地で挑戦をしてみたかったんです。

ー醸造所についてお聞かせください

醸造所をどこにするかという考えはいくつかあるんですけれども、いま非常に強く思うのはブドウ畑の中にあったら素晴らしいのではないかということです。特にブドウ畑とこの函館山や函館湾を望む風景を見ていただいて、ワインを飲んだり買って頂くことができればワインとこの函館を更に強く結びつけて感じていただけるのではないかという風に信じております。ただ、私のこのアイデアは多くの許可を必要とします。時間もかかることですし大変なエネルギーもかかることも知っています。それでも私はこの場所で皆さんにワインを楽しんでいただければ、ワインを作ることが出来れば非常に素晴らしいワイナリー、世界に誇るワイナリーになるのではないかと信じております。

ー流通経路について

私としては日本の皆様にも楽しんでいただきたいという目的で作っております。一方で、世界の皆様にももちろんご紹介したいと思っておりまして、全体の75%ほどが日本で、残りの25%がフランスだけではなく世界の各地で紹介できたらいいと考えてます。その時には私のワインだけではなく、他の北海道もしくは日本で作られているワインも一緒に紹介していきたいと考えています。

ー楽しみにされている方にメッセージをお願いします。

私はブルゴーニュで約300年以上にわたるドメーヌ・ド・モンティーユというぶどう作り、ワイン作りをする家に生まれました。そして、そのノウハウを日本に持ってくるということ、日本での外国人よるワイナリーというのは初めてということはいずれも私としても大きな挑戦でしかありません。ただ、私が一番皆様に伝えたいのは日本のそのワイン造りを行っている方々と"一緒に"発展してきていきたいということです。これは私にとっては最も大事なことです。日本のぶどう作りを今までなさってきた皆様から教えを受けて、ブルゴーニュで300年以上の私どもが受け継いでいる、またそれ以上のブルゴーニュのノウハウと合わせて、皆さんと一緒に考えて、学んで、そして発展していくということが私にとっては非常に大事なことだと思います。一緒に力を合わせて作ったワインは素晴らしいワインをになることでしょう。それを世界のトップレベルに皆さんと一緒に引き上げて行って、世界の皆さんに楽しんで頂きたいです。世界の一流レストランに函館のワインが並ぶことが夢ですね。

ーどんなワインになりそうですか?

わたしにとってはアバンチュール。 冒険でしかありません。本を読み始めた時にもう最後にどうなるかということを分かっていたらどうして本を読むのでしょう?そういうことです。

この記事を書いたのは

HTB函館支局・渡邊真

道民歴5年目の記者が道南、函館のいろんな情報を発信していきます。