かつて真冬のオホーツク海に響いていた鳴き声にも似た音
氷と氷がぶつかり合い奏でる“流氷鳴き”が聞こえなくなった…
気温上昇、衰える流氷、海の生態系の異変
潮騒だけが響く凍らぬ海
それは、“流氷なき”未来への警告かもしれない
キー、キュー、ギシギシギシ、キキー。かつて、オホーツクの海に不規則に発せられる不思議な音が響いていた。地元の人たちが“流氷鳴き”と呼んだ流氷と流氷がぶつかり軋む、鳴き声にも似た音だ。流氷鳴きが響いたあとには、海が分厚い氷に覆われ、凛とした静寂が訪れる。そんな真冬の音の情景が、いまはない。流氷が減っているからだ。
40年以上、流氷の研究を続けている道立オホーツク流氷科学センターの青田昌秋所長は「流氷勢力は100年前の半分」と分析している。オホーツクは北半球の流氷の南限。そのため流氷は環境変化を如実に反映する高感度センサーだ。青田所長は「気温が4℃上昇すると北海道で流氷が見られなくなる」と警告する。
流氷はシベリア沖で誕生し、遙かなる旅路の果てに北海道にやってくる。その途中で氷と氷が重なり合い、ぶつかり合い、大きな氷へと成長を遂げる。豊かな生態系を育む流氷が減少したことで、オホーツク海に異変が現れ始めた…。
巡視船そうやと北大低温科学研究所による流氷調査、変化が如実な羅臼のウニ漁、氷の下に潜り続けるダイバー、長年、流氷を撮り続けてきた写真家…。流氷に関わる様々な事象や人々を通して、「いま、そこにある変化」を捉え、“流氷なき”未来への警告を読み解く。
ナレーター | 紺野美沙子 |
撮影 | 三戸史雄 |
音声 | 浅野光宏 |
編集 | 笹森大玄 |
音響効果 | 宮田友紀子 |
ディレクター | 柴田遼 |
プロデューサー | 数浜照吾 |