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2022年01月13日 9時39分

著者名:HTB医pedia編集部

【医療のミカタ】命を守るため飛び続けるドクターヘリの最前線

  

<今回のテーマ>

時速200キロで患者の元へ急行し命を救うドクターヘリ。
今回は北海道で初めてドクターヘリを導入した「手稲渓仁会病院」の緊迫する医療現場にカメラが入り、北海道特有のドクターヘリの課題についても紹介します。

<ドクターヘリの出動要請から病院での治療まで>

出動要請を受けてから飛び立つまでわずか5分。ドクターヘリは命を救いに患者のもとへ時速200キロで向かいます。
ドクターヘリを北海道で初めてドクターヘリを導入した札幌市の手稲渓仁会病院。
道央エリアを守る、このドクターヘリが1年間で出動する件数は、およそ400件。ほぼ毎日のように出動要請が入ります。
手稲渓仁会病院 救命救急センター
「はい、救急センターです。ドクターヘリの要請でよかったですか?救急事案ですか?ドクターヘリ、エンジンスタート、小樽方面」
この日、出動要請が入ったのは夕方の4時25分、この日の日没は5時13分。
ドクターヘリはパイロットが目視で飛ぶので安全上、日没以降は飛べず、残された時間はわずか48分しかありません。
手稲渓仁会病院 救命救急センターの専任医師
「5分で飛び立たなくてはいけないので、(ヘリポートには)2、3分で来ています」
ドクターヘリが向かった先は後志管内の事故現場。70代の男性が、車に挟まれケガをしたといいます。離陸してからおよそ15分で現場に到着。患者の治療は、現場の救急隊と協力しながら救急車の中で行い、救急車内での点滴など最低限必要な処置のみを行い、患者を手稲渓仁会病院に運びます。患者がドクターヘリから手稲渓仁会病院に降ろされたのは5時12分と日没時刻の1分前、ギリギリ間に合いました。
この日、実際に治療にあたった、救命救急センター岡本博之医師にドクターヘリについて伺いました。
「ドクターやナースがドクターヘリで行くことで、救急隊がどうしても出来ないところを、プラスアルファでしてあげることで後遺症を残さないで済むのであればやっぱり行ったほうが良いということになると思います」

<ドクターヘリ内の装備と専任医師の服装>

北海道に現在導入されているドクターヘリは、「手稲渓仁会病院」の1機以外に、「旭川赤十字病院」、「市立釧路総合病院」、「市立函館病院」に各1機有り、道北・道東・道南そして道央エリアをそれぞれの病院がカバーしています。
医師をいち早く現場に連れていく「ドクターヘリ」には一体どのようなものが積まれているのでしょうか。
岡本医師 
「コンパクトなエコー、超音波の機械で簡単な検査が出来るように準備もしていますし、現場で使える薬がきれいにまとめて収納してあります」
また、岡本医師の服装ですが、白衣ではありません。
岡本医師
「交通事故であれば、まだ車に挟まれている方に接触する可能性も有りますし、山であれば山岳事故や転落事故、草木が生えているところにも入っていかなくてはいけないので病院の綺麗な環境とは全然違うことを想定した服を着ています」

<ドクターヘリを導入した目的とは>

2005年に北海道で初めて「手稲渓仁会病院」に導入されたドクターヘリについて、その導入の目的を救命救急センター奈良理センター長に伺いました。
奈良センター長
「ドクターヘリの目的として、救命と後遺障害の軽減、地域格差の是正の3つのポイントがあります。地域でできない治療をドクターヘリで患者を搬送することで早い時間内に治療を開始できることが、一番のメリットだと思います」

<北海道特有のドクターヘリの課題とは>

現在、「手稲渓仁会病院」がカバーする道央エリアにはドクターヘリが着陸できる「ランデブーポイント」が1,270箇所有りますが、冬の間は降雪の為、そのうちの272箇所しか使うことができません。
奈良センター長
「北海道の場合、冬降間、降雪がありますので、必ずしも毎日除雪している場所(ランデブーポイント)があるわけではありません。冬に確実に使えるところを各地域に確保していくことが大事だと思います」
そのようなドクターヘリの課題に対して、医療過疎地域の一つである空知の奈井江町では、冬季期間も除雪を入れて、常時、離発着できるランデブーポイントを地元の建設会社が創立60年を期に、町に寄贈しました。
寄贈した建設会社、砂子組の砂子邦広社長に、その理由を伺いました。
砂子社長
「過去にうちの社員がドクターヘリで手稲渓仁会病院に運んでもらって、それがなければ命をとられていたという可能性もありました。(そのようなリスクのある)奈井江町には、(ランデブーポイントは)重要性の高いものになるだろうと思います」
奈井江町民からも、冬はホワイトアウトによる事故も発生するので、町内にランデブーポイントができるのはすごい安心感があるとの声が有りました。

<北海道の救急医療のために>

手稲渓仁会病院は、ドクターヘリを北海道からの補助金で運用していますが、人件費や維持費など、かなりの金額がかかるため、経費の一部は手稲渓仁会が負担して運航しています。赤字でもドクターヘリを飛ばし続ける理由、それは、北海道の救急医療をカバーするためには必要不可欠なものであるという使命感でやっている、ということでした。

救急医療だけでなく、医療の地域格差の解消のためにも必要不可欠な「ドクターヘリ」。
ドクターヘリは今日も命を救うため飛び続けています。

取材協力:
医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院
札幌市手稲区前田1条12丁目1-40
TEL 011-681-8111
https://www.keijinkai.com/teine/