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8月15日(月) 山田佳晴(報道デスク)
ロビン・クック氏が今月6日、亡くなった。英国・労働党政権の前の外務大臣。スコットランドで山歩き中に心臓発作で倒れたという。59歳の若さだった。不倫に離婚とスキャンダルの面でタブロイド紙をにぎわしたこともあった。「いまの時代でもっとも素晴らしいディベイター(討論家)」とも言われた。背が低く、「スターウォーズ」のヨーダを思わせた。
2003年3月、イラク戦争開戦前夜。クック氏は下院で演説した。なぜ大量破壊兵器が見つからないイラクに、国連安保理の決議なく攻撃を始めようというのか。なぜあと数ヶ月で終わる国連査察団の調査結果を待てないのか。ブレア政権が「開戦、やむなし」で前のめりとなっている中、淡々とした、理路整然とした演説だった。
リアルタイムで聞いた政治家のスピーチで鳥肌が立った経験はこれがはじめてだった。終了後、下院は万雷の拍手で包まれた。クック氏は、このスピーチを最後に、「院内総務」という内閣の要職を辞任した。たったひとりの「造反」だった。翌日、イラクへの爆撃が始まった。
ブッシュ大統領も、ブレア首相も、小泉総理も、イラクの大量破壊兵器が脅威だとしていた。しかし、大量破壊兵器は結局見つからなかった。イラクでは今でも市民やアメリカ軍兵士らが命を落とし続けている。混乱が終わる兆候は見えない。
アメリカ同時多発テロからちょうど4年目となる9月11日、日本では総選挙が行われる。小泉総理は郵政民営化を争点にしている。総選挙の争点がこれだけでいいはずはない。理路整然と道理を説くクック氏の「造反」スピーチを思うと、小泉総理のまずは結論ありきのワンフレーズに、政治家としてのレベルの違いを泣きたくなる。 |