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9月5日(月) 山田佳晴(報道デスク)
小学生の頃、テレビの放送で見た。大人になってからはレンタルビデオで見た。そして最近はDVDでも見た。というのに、今度は映画館に足を運んで見てしまった。「砂の器」。デジタル処理で、映像と音響がきれいによみがえったデジタル・リマスター版だ。
日本を代表する傑作は、何度見ても傑作だ。しかし今回は劇場で見た分、そしてデジタルの技術で画も音も修復された分、この映画の質の高さが倍にもなって伝わってきた。
クライマックス。警視庁の一室。殺人事件の捜査結果が報告される。この捜査本部の動きにコンサートホールのシーンがクロスしていく。天才音楽家によるコンサートだ。日本中が注目する新曲のお披露目という「天国」。そして、知られたくない過去の生い立ちという「地獄」。2つをつなぐのが、「宿命」という名の交響曲。この構成がたまらない。う〜ん、秀逸だ。
撮影もすばらしい。ぎこちないズームインですら時代を感じさせて、いい。四季折々の日本の「表情」も泣かせる。役者の演技もいい。平成の役者たちのけっこうナチュラルな演技を見慣れてしまったせいだろうか、昔は「だめだ、こりゃ」と思った森田健作さんの演技が、今となっては「新鮮」でいい。
野村芳太郎さん(4月に泉下の客となられた。偉大な監督だった)の「砂の器」以外では、昔から黒澤さんの作品が好きだった。でも、えらそうに書いているが、「ハリウッド至上主義」で育った自分は、一部をのぞいて「邦画なんて、ふん」と言っていたのだ。恥ずかしい。
昔、小津安二郎監督の映画は「理解不能」だった。いま小津さんの映画に駄作なし、と思う。年とともに、邦画のよさが見えてきた。
最近のヒットは「容疑者 室井慎次」。ことしは柳葉敏郎さんの当たり年か、と素直に思ってしまう。なぜか「容疑者 室井しげる」と言ってしまう癖がついちゃったので困っているが。 |