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9月19日(月) 山田佳晴(報道デスク)
「我々が相撲をとろうとしていたら、小泉さんがプロレスを仕掛けて、観客が拍手喝采した」。朝日新聞に載っていた、ある民主党議員のボヤきだ。
小泉総理がしかけた今回の総選挙は、たしかにプロレスそのものだった。
「参院」で郵政法案が否決されたから「衆院」を解散するというサプライズな展開。「造反組」の選挙区すべてに「刺客」候補をたてることで描いた全面抗争の構図。「殺されてもかまわない」といったマイク・パフォーマンス。どれもプロレス的である。
自民党はこれまでもプロレスラーを公認してきた政党だった。
「小泉チルドレン」の大仁田厚・参院議員。今回も当選をはたした石川1区の馳浩・衆院議員。それに去年の参院選に比例区から出馬した神取忍氏。
しかし今回、レスラー候補はいなかった。なぜか。
答えはいくつかあるだろうが、現実の選挙そのものが「プロレス」だもの、レスラーを擁立する必要などなかったんだ、と言えまいか。
プロレス的な現象はほかにもある。有権者が、「解散後の小泉」を評価した点だ。
プロレスは勝ち負けがすべてではない。敗者のほうが脚光を浴びることも少なくない。いかに観客のハートに響いたが問われる傾向にある。
同じように、今回の選挙で問われたのは、4年余りの小泉政権の「成果」ではなかった。
小泉総理は法案の否決という自身の「負け」を逆にアピールした。そして解散からのおよそ1ヶ月間、「郵政民営化」を百万回繰り返した。有権者はその「決意」と「意気込み」を評価した。
きわめてプロレス的なのである。
思えば選挙期間中の党首へのアンケートで、岡田代表(当時)が「得意なカラオケ」の質問に「歌わない」と答えた瞬間、民主党の負けは決まったのかもしれない。小泉総理の答えは「Xジャパン」だもの。
それにしても…と思う。わたし自身、格闘技のファンではあるが、ゴールデンタイムに格闘技の番組を平気で放送する今の日本の社会を、正直言って「こわい」と感じている。根っこは全部つながっているような気がするのだ。
週末、毎日新聞に載った中曽根元総理の言葉。「『小泉は変人だ』と言ってきたが、日本自体が変人型社会になっていた」。 |