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11月21日(月) 山田佳晴(報道デスク)
1990年、アメリカ。
軍の施設で研究開発中の新型ウイルスがヒューマンエラーで外部に漏れ出す。
「キャプテン・トリップス」とも「スーパー・フルー」(フルーはインフルエンザ)とも呼ばれるこのウイルスで、アメリカは数週間でほぼ全滅する。免疫をもっていた千数百人を残して。
これはスティーヴン・キングが1978年に発表した小説「ザ・スタンド」のさわり。連日、鳥インフルエンザの報道に触れるたびに小説で描かれた恐怖を思い出す。
H5N1型。
この鳥インフルエンザ・ウイルスが変異し、人への感染力を得たものが、新型インフルエンザだ。
WHO(世界保健機関)は、新型インフルエンザにより全世界で200万人から740万人の死者を予測している。「ひかえめな推測」と前置きして、この数字だ。
最悪のケースだと、犠牲者は1億5000万人以上にのぼるという。日本の人口を超えている。
ただひとつ有効だとされる治療薬は「タミフル」。世界中がいま備蓄に血まなこになっている。
しかし、製造権をもつのはスイスの医薬品メーカー1社だけ。日本でも備蓄計画を前倒ししたが、そもそも「タミフル」そのものは大丈夫なのか。
FDA(アメリカ食品医薬品局)のサイトによると、「タミフル」の最大の「消費者」は現在のところ日本なのだという。消費が多い分、日本では副作用も多く指摘されている。皮膚への障害や異常行動を引き起こすなど精神・神経に与える影響だ。
日本で12人の子供が服用後に死亡したとされる件については、FDAでは「タミフル」との因果関係は確認できていないとしている。
たとえそうだとしても、依然として副作用が心配な治療薬であることに間違いはない。厚生労働省は、数量確保に腐心するだけではなく、副作用などの「負の部分」でも周知を徹底するべきだ。
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