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3月6日(月) 山田佳晴(報道デスク)
ハリウッドは変わったなあ、とつくづく思う。この文章を書いているまさに今、アカデミー賞の授賞式が進行中だ。ことしは同性愛者やテロへの報復を描いた作品などが数多くノミネートされている。
911のあと、アメリカで社会問題を描く映画が少なくなった。イラク戦争後は、ブッシュ政権への批判はまったく許されない空気が授賞式の会場を支配していた。「政治的なコメント」にはブーイングが起きる異常な光景だった。
今年これだけ物議をかもす社会派の映画が出揃うようになったのは、その反動なのだろうか。いや、もしかしたらハリウッド、というかアメリカの社会そのものが意識の面で大きく変わり始めているのかもしれない。
「作品賞」にノミネートされている中では、「ミュンヘン」と「クラッシュ」を観た。前者はミュンヘン五輪でユダヤ人選手らが殺害されたテロとその後を描く。ユダヤ人であるスピルバーグ監督が自ら「イスラエル問題」の歴史を掘り起こした。ラストカットが問いかける意味はあまりにも大きい。
後者はいまアメリカ(ロサンゼルス)がどれほど病んでいるのか、黒人を中心に人種問題が大きなテーマとなっている。しかし、希望もある。それがいい。(と書いていたら、たった今「クラッシュ」が作品賞をとった。)
「ミュンヘン」はイスラエル建国の問題だが、同時にユダヤ人とパレスチナ人との人種の問題でもある。そういう意味では2作品とも、人種を扱った映画だ。
人種を扱った映画というと、オスカーの選にはもれたが、「ホテル・ルワンダ」も衝撃だった。ツチ族とフツ族。その人種間の怨念はすさまじい。映画は100日間で約100万人が殺害されたという。
3つの映画=3つの歴史。どれも白人のまいた種が原因となっていると思うと世界の歴史とはなんなのだろうと考えてしまう。
でも、他人事ではない。映画「力道山」が公開された。力士だった力道山がなぜ自らマゲを切ったのか。「北朝鮮の出身者」がつきつけているのは、まさに日本の問題である。これも観ないと。
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