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3月13日(月) 山田佳晴(報道デスク)
TVのニュース番組で、「ど根性大根」とか「イナバウアー」をする動物が大もてだ。
でもアスファルトの隙間でケナゲに育つ「ど根性」な野菜が日本で急にニョキニョキと生え始めたわけではない。荒川選手の金メダルに感動して各地の水族館や動物園でカメやカワウソが急にノケぞり始めたわけではない。TVのニュースがそういう風に伝えているだけだ。
TVニュースと一口で言っても、各放送局でニュースの編成はマチマチだが、「TVは一度大きな出来事が起きたら、または一度世間が注目したら、その"文脈"の中でニュースを伝える傾向がほかのメディアよりも強い」ということが言えると思う。
三菱ふそうのトラックから火が出る事故が相次いだとき、三菱ふそうの車の不具合は何でもニュースとなった。いまトラックの不具合だけで死傷者ナシなら取り上げるTV局はないだろう。
JR西日本の脱線事故が起きたあと、JRの列車のオーバーランは大ニュースだった。10数メートル、プラットホームをズレただけでトップニュースの日もあった。でも先日、JR北海道でオーバーランがあったが、これを報じるTVメディアはなかったはずだ。
そう言えば、去年はガードレールの金属片も大ニュースだった。全国のガードレールには昔から金属片がはさまっていた。でも、誰かが足をひっかけてケガをしたその瞬間から「ナゾの金属片を追え!」となったのだ。
同じようなニュースが急に増えたのではない。TVが同じようなニュースを必死に探しているのだ。
もちろんそのときどきの最大の関心事をできるだけくわしく報じるという「使命感」はある。とは言うものの、受け取る側はTVだけを見て踊らされないでください、と願ってしまう。TVニュースを報じる側にいてこう言うのも何だけど。
ところで、「イナバウアーのカメ」を、「レッサーパンダの風太くんのように立つ」と報じたメディアもあった。「風太くん」は旧聞に属し始め、これから旬なのは「荒川選手」だというビミョーなタイミングでそうなってしまったのだろう。
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