 |
9月5日(火) 山田佳晴(報道デスク)
唐突ながら、インドの話である。しかも、トイレの話からである。
インドの空港には、トイレのブースに水道の蛇口がある。蛇口の下には、バケツと小さな手おけが用意されているので、「ああ、手でか」と納得する。インドでは左手は「不浄の手」なのだ。
車で移動すると、道路の脇で、男性がしゃがんでいるのが見える。水が入ったペットボトルを手にしているひとが目立つが、これも手で洗い流すためなのだろう。左手は「不浄の手」なのだ。
インドの空軍基地を取材したときのこと。十代とみられる娘さんが男子トイレの床のほぼ中央でしゃがんで排尿していた。なぜなのか。
そばには母親が立っていたが、わたしが入ってきたため、娘さんは恥ずかしそうに母親とともに出て行った。不思議だ。
さらに不思議だったのは、そこに4つか5つあった便器がすべて破壊されていたことだ。誰かが徹底的に破壊しつくしているのだ。空軍基地のトイレなのに、この非常事態は何なのか。
そんな不思議の国・インドなものだから、原油が高騰しているのはインド経済の急成長が原因のひとつなんて言われてもピンとこなかった。経済成長の前に、トイレを何とかしなさい、と思ってしまうからである。
ところが、現在、アメリカで何か商品を「買いたい」、「問い合わせたい」と消費者が電話をすると、ほとんどの場合、インドのコールセンターにつながるというのだ。
アメリカの消費者は、自分がかけたフリーダイヤルが、太平洋を越えて応対されているとは思わないだろう。インド訛りの英語だな、と思ってもだ。
コールセンターがインドに集中したのは、人件費の安さなどが要因だが、これは一例。人件費が安い上に、数学のレベルが高く、ITの分野でつぎつぎと若い才能を輩出しているのが、インドの経済を押し上げるロケットの推進力になっている。
さて、日本では今、札幌にどんどんコールセンターが増えてきている。本州の企業など約40社が進出する全国一のコールセンター集中都市だ。
理由はやはり人件費。あと必要なのは、インドのような人材の育成か。北海道経済の回復に、インドはヒントにならないだろうか。
|