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9月12日(火) 山田佳晴(報道デスク)
また「9月11日」がめぐってきた。
この5年をふり返り、「911」の文脈の中で、世界が知るべきニュースがある。そのひとつは、イギリス・BBCによる疑惑報道だと思っている。
「45分間で、イラクは大量破壊兵器を配備できる」と、BBCラジオの記者がレポートしたのだ。
イラク戦争に踏み切るため、英国政府がイラクの脅威を「セックスト・アップ(いっそう魅力的にした)」というもので、「SEXED UP」という熟語は、英国中のメディアで何度も何度も報じられた。2003年のことだ。
情報源とされた国防省の顧問が自殺し、国を揺るがすスキャンダルに発展。8カ月後、調査委員会は、「BBCの報道は誤り」と結論づけた。ブレア首相らの責任は問われなかった。結局、大量破壊兵器はイラクにはなかったのだけれど。
この一連のニュースを、わたしはイギリスから中継1回、レポートで2、3回程度しか伝えなかった。新聞でもそれほど大きく扱われなかったが、TVはさらに小さな扱いだった。
BBCは最大の危機を迎えた。しかし、BBCはこれ以前も、これ以降も、イラク戦争の責任について検証報道の姿勢をゆるめてはいない。襟を正し、さらに組織を強化し、さらに政府を追及している。自分たちに許認可を与えてくれて、予算をつけてくれている政府を批判している。
いまブレア首相が追い込まれているのは、BBCを始めとする報道機関が、途切れることなく、イラク戦争の責任を問い続けたことと決して無縁ではないはずだ。
一方で、日本の「盟友」、小泉総理の責任は…。こう書くと悲しくなる。
日本では先週、皇室に男児が誕生した。このとき、NHKを含むどのTV局でも目立ったのが、「CNNがこう伝えた」「イギリスがどう伝えた」というものだった。
日本の皇室のビッグニュースだ。海外で取り上げられるのは当然だ。なぜ海外の反応をニュースにまとめる必要があるのか。
世界のことはあまり伝えていない。でも、外国からどう見られるかは気になる。これが日本のTVニュースの本質だとしたら、私たちはBBCの記者たちの爪の垢をどれほど大量に煎じて飲む必要があるのだろう。
最近、作家の村上龍さんが、レバノン紛争で大勢のひとが死亡したとき、NHKの夜のニュースは「梅雨明け」がトップニュースだったと嘆いていた。
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