北海道テレビ:HTB online 医TV

2019年01月31日16時36分

著者名:HTB医pedia編集部

「医療のミカタ」尿漏れ 

  

<今回のテーマ>

今回は、高齢者の約3人に1人が症状を抱えていると言われる「尿もれ」についてです。
泌尿器科ではどのような診察をしているのか...北海道大学病院泌尿器科橘田岳也医師にお話を伺いました。

<尿もれ・尿失禁とは...>

尿もれ・尿失禁は大きく2つに分かれると言われています。一つは腹圧性尿失禁、もう一つは切迫性尿失禁です。2つが一緒に合併されている人もいますが、その2つは症状がかなり異なっています。
腹圧性尿失禁は、腹圧と言われている通り、咳とかくしゃみ、何か持ち上げたりするような腹圧がかかったときに失禁してしまいます。本当に症状がひどい人だと立ち上がるだけで失禁してしまうという方もいます。
一方切迫性尿失禁は、切迫感という自分でとめることが出来ないような強い尿意があって、そのまま失禁してしまうものになります。例えば、冷たい水に触れたり、ドアノブに手をかけた瞬間にもれてしまうという人は切迫性尿失禁と診断されます。

<腹圧性尿失禁・切迫性尿失禁の原因と治療法>

腹圧性尿失禁は、膀胱や尿道、あるいは女性だと子宮を支える「骨盤底筋」という筋肉が弱ってしまうことで発症します。なので腹圧性尿失禁では、まずこの「骨盤底筋」を鍛えることが一番の治療法と言えます。ここで骨盤底筋を鍛えるための体操を紹介します。まずは姿勢を良くして椅子に座ります。息を吸って吐くと同時に、尿道をきゅっ~と1秒から3秒かけて締め上げます。1セット10回、気づいたときに1日数セット行うだけで骨盤底筋が鍛えられ、尿もれ症状を改善してくれると言われています。
続いて、切迫性尿失禁の大きな原因は、コマーシャルなどでよく耳にする「過活動膀胱」が関係しています。「過活動膀胱」とは、自分の意識しないところで膀胱が収縮してしまい、強い尿意をもよおす症状のことで、これを抑えるには体操ではなく薬物治療が効果的と言われています。北大病院の橘田先生によると、今は良く効く薬が多くあるので、恥ずかしがらずに泌尿器科に相談してほしいとのことでした。

<重度の尿もれに悩む方の実体験>

4年前に重度の腹圧性尿失禁を発症した吉田孝子さん(78)はこう話します。「治る前は、こんなに苦しいことはなかったです。立ち上がった時とかくしゃみはもちろんですけど、歩くだけでも漏れていくので、自分が情けなくなったりしました。ひどい時は肌着を一日に何枚も何枚も変えていました。尿もれによって一番制限されたことは外出です。大勢集まるところにも行きたくなかったです。デパートに行ってもトイレが混んでいると本当に困りました。」
吉田さんはTVTという手術を受けました。骨盤底筋が弱り下がってしまった尿道をテープでハンモックのように持ち上げることで、尿もれを解消します。驚くのは、その手術が、非常に短期間で済むことです。
病院によっては、局所麻酔でその日にやってその日に退院出来る病院もあります。手術自体は30分くらいと決して長い手術ではないので、十分に短期間で変えることが出来る手術です。
「尿もれがあるといくらいいパットがあっても、やはり尿のにおいが嫌なので、尿もれが全くない(完治できる)というというのが、この手術の特徴というか、一番いいところだと思い、思い切って手術をした」と吉田さんは言います。
また平穏な暮らしを取り戻した吉田さんは、「たくさん宝くじが当たる嬉しさよりも、自分の体が治った嬉しさの方が大きいです。これからはたくさんの人が集まる手芸教室とか、そういうところにも出席したいと思います」と話してくれました。

<人工尿道括約筋>

男性の場合、前立腺ガンで手術された方の多くがつらい尿もれを経験していることがあります。中でも重度の方だと趣味のゴルフが出来なくなった・旅行に行けなくなった・尿もれでうつ寸前になったなどという声がありました。
しかし男性には「人工尿道括約筋」という器具で治療する方法があります。まだ認知度は低いですが、この器具を手術で埋め込むことで尿をコントロールすることができて症状が劇的に改善されるそうです。

<まずは医師に相談を...>

尿もれの方は、自分でお水の飲む量を減らしている方もいます。飲んだら1時間以内にすぐパットを汚してしまうと知っているので、飲む量を減らしています。口が乾いているのを我慢しながら、暮らしている方もいます。
病院ではいきなり何かの検査をするわけではなくて、いろいろ話を聞いて、どんな治療が合っているかを考えることも出来るので、是非1人で悩まず医師に相談してください。