北海道テレビ:HTB online 医TV

2022年02月15日10時15分

著者名:HTB医pedia編集部

正しく理解しよう「血液がん」③ 多発性骨髄腫

  

<今回のテーマ>

今月の「医TV」は3回にわたって「血液がん」にスポットをあてます。「血液がん」とは血液細胞ががん化して起こる病気で「血液がん」のほとんどをしめるのが、「白血病」・「悪性リンパ腫」・「多発性骨髄腫」の三種で、三大血液がんとも呼ばれています。最終回となる今回はそのうちの一つで、血液がんの中でも高齢者の罹患が多い「多発性骨髄腫」について札幌医科大学附属病院 血液内科の教授 小船雅義医師に解説して頂きました。

<多発性骨髄腫とは>

「多発性骨髄腫」は、ウイルスなどを攻撃する抗体を産生する形質細胞が、遺伝子変異や染色体異常によって、主に骨髄の中で骨髄腫細胞に変わり、ウイルスなどを攻撃する能力が無いMタンパクが増える病気です。「多発性骨髄腫」の患者のほとんどが60歳以上の高齢者で、加齢により増えていく傾向があります。

<多発性骨髄腫の症状>

骨髄の中でMタンパクが増えていくと正常な抗体が作れなくなり、ウイルスや細菌を除去できなくなりますから、「多発性骨髄腫」は、C:血液などがドロドロになる高カルシウム血症、R:腎機能障害、A:貧血、B:骨が溶けるなどの骨病変(総称してCRAB症状)と呼ばれる症状が起こります。特にCTやMRIによる検査で、丸く骨が溶けている症状が判明した場合は「多発性骨髄腫」として治療の対象となります。

<多発性骨髄腫の診断>

血液検査で血清中にMタンパクが検出された場合、必ず骨髄検査が行われます。骨髄検査で、骨髄の中に異常な形質細胞が10%以上発見された場合、「多発性骨髄腫」と診断され、骨髄細胞の遺伝子の悪性度なども判定します。

<多発性骨髄腫の治療>

2018年まで「多発性骨髄腫」の生命予後は発見後3.5年程度とされていましたが(注)、ここ数年間で「多発性骨髄腫」の治療方法は、従来のステロイド剤の投与に加えて、分子標的薬や免疫調整薬といった新薬も投与されるようになり、大きく進化してきています。また、「多発性骨髄腫」の治療では、骨に対する治療も同時に行うことが大切です。
注)2018年までの札幌医科大学附属病院 血液内科のホームページ内の表記。現在、同病院では生命予後データを収集中。

取材協力:
札幌医科大学附属病院  
札幌市中央区南1条西16丁目291番地
TEL 011-611-2111(代表)
https://web.sapmed.ac.jp/hospital/