北海道テレビ:HTB online 医TV

2022年01月28日16時29分

著者名:HTB医pedia編集部

正しく理解しよう「血液がん」② 悪性リンパ腫

  

<今回のテーマ>

今月の「医TV」は3回にわたって「血液がん」にスポットをあてます。「血液がん」とは血液細胞ががん化して起こる病気で「血液がん」のほとんどをしめるのが、「白血病」・「悪性リンパ腫」・「多発性骨髄腫」の三種で、三大血液がんとも呼ばれています。第2回目となる今回はそのうちの一つで、血液がんの中で最も罹患者の多い「悪性リンパ腫」について北海道大学病院 血液内科の教授 豊嶋祟徳医師に解説して頂きました。

<悪性リンパ腫とは>

白血球は血液やリンパの流れにのって、血液の中をパトロールして私たちの体を守ってくれる警察官のようなものなのですが、その白血球の中にはリンパ球(B細胞、T細胞、NK細胞)というものがあり、そのリンパ球が分裂するときに遺伝子異常が発生し、リンパ腫となります。悪性リンパ腫はそのうち、およそ2/3の確率でB細胞リンパ腫が、がんになる傾向があります。

<悪性リンパ腫の症状>

人間の身体には血管があるとともに、リンパ管も全身を網羅しています。リンパ球は主に、リンパ管によって全身に流れているので、悪性リンパ腫の特徴的な症状を大きく分けると、8割ぐらいは痛みの無いリンパ節の腫れがあるのに対して、残りの2割は、各臓器にある小さなリンパ節が腫れることで様々な症状がおこることがあります。例えば、脳のリンパ節が腫れた場合であれば、頭痛やしびれ、視野障害など、脳卒中によく似た症状がおこり、他にも全身の症状として、倦怠感や原因不明の発熱、体重の減少などもおこることがあります。

<悪性リンパ腫の診断>

悪性リンパ腫には100種類以上のタイプがあるため、どのタイプであるかを正確に診断したうえで治療する必要があります。そこで体のいずれかの部位でリンパ節が腫れていた場合、(可能な範囲で)そのリンパ節を大きく切除して病理顕微鏡診断を行います。リンパ節に対して病理顕微鏡診断を行うことで、がん化した細胞(T細胞、B細胞、NK細胞)を特定し、進行が速い「びまん性」か、進行が遅い「ろ胞性」か、増殖度や悪性度などを診断することができます。

<悪性リンパ腫の治療>

がんの治療には、手術、放射線治療、薬物療法と大きく3つありますが、悪性リンパ腫の治療は基本的に薬物療法となります。悪性リンパ腫に対する薬物療法として、代表的な例として、最も多いB細胞リンパ腫に対しては、分子標的薬の攻撃目標となる遺伝子変異がある場合、分子標的治療薬、3種類の抗がん剤、ステロイド剤を組み合わせた「R-CHOP(アールチョップ)」療法が行われ、およそ6割の患者さんに効果があるとされています。一方で、分子標的薬の攻撃目標となる遺伝子変異が無い、およそ4割の患者さんに対しては、患者さん自身の造血幹細胞移植(自家移植)による治療に加えて、2019年からは健康保険の適用にもなった、患者さん自身の免疫細胞による、免疫細胞治療「CAR-T(カーティ)療法」も行わるようになり、悪性リンパ腫の治療は従来より著しく進歩しています。

次回の「正しく理解しよう血液がん」は、「多発性骨髄腫」について解説します。

取材協力:
北海道大学病院 血液内科 
札幌市北区北14条西5丁目
TEL 011-716-1161
北海道大学病院血液内科HP
https://www.hokudai-hematology.jp/patient/