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2022年11月01日13時16分

著者名:HTB医pedia編集部

視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)とは①

  

<今回のテーマ>

皆さんは、「視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)」という病気を御存じでしょうか。聞き慣れない病名だと思われますが、実はこの病気、非常に珍しい難病の一つとされています。
そこで今回から4回にわたって、この「視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)」がどのような病気で、その診療や治療の方法について、医師や看護師の方々からお話を伺います。第1回目は、「国立病院機構北海道医療センター 脳神経内科」の宮﨑雄生先生に「視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)」について解説して頂きました。

<視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)とは>

「視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)」になると、車いすや杖が必要な歩行障害の患者さんもいれば、視力障害を来すケース、疲れや感覚障害のみの患者さんもいるなど、その症状は一人一人異なります。この病気の国内の患者数はおよそ6,500人で、道内では300人程といわれ、その9 割が女性、家庭や仕事で忙しい30代後半から40代前半に発症することが多くなっています。

宮﨑先生 「初めて視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)という病名を耳にされる方が多いと思います。この病気は、脳や脊髄などにある「アストロサイト」という細胞の表面に出ていて、水を通す働きのある『アクアポリン4』というたんぱく質を自分の免疫が攻撃してしまう自己免疫疾患です。ここに炎症が起き、脳や脊髄の細胞が破壊されてしまい、症状が出てきます。全身の神経ネットワークの司令塔である脳、脊髄、視神経といった『中枢神経』に炎症が起きるのがこの病気の特徴で、『視神経』と『脊髄』さらに、『中枢神経』の代表である脳にも発症します」

<視神経脊髄炎スペクトラム障害による炎症で起こる症状>

「視神経脊髄炎スペクトラム障害」によって、炎症が起きるとどのような症状が現れるのでしょうか。炎症が起こる部位別に宮﨑先生に解説して頂きました。

●視神経での炎症
宮﨑先生 「視神経に炎症が起きると、最初に目の奥の痛みが出てくる方が多くいらっしゃいます。その後に、見えにくい、視野が欠けるといった目の症状が出てきます。数日~1週間ぐらいで、視力の低下が起きるのが特徴で、片方の視力をほとんど失う方もいます」
●脊髄での炎症
宮﨑先生 「脊髄に障害を受けると手足の力が入りにくい、歩きにくいといった脱力や、しびれや痛みの感覚障害、尿が出にくい排泄障害などが見られます」
●脳での炎症
「脳の炎症によっておきる比較的特徴的とされる症状は、難治性のしゃっくりやおう吐です。普通しゃっくりは半日も続かないと思います。しかし、視神経脊髄炎スペクトラム障害のしゃっくりは、何日も続くのが特徴です。また、十分な睡眠を取っているにもかかわらず、日中に強烈な眠気に襲われる場合があります」

<視神経脊髄炎スペクトラム障害に対して適切な診断や治療が行われなかった場合は>

患者として「視神経脊髄炎スペクトラム障害」に気づかず、適切な診断や治療が行われなかった場合、どのようになるのでしょうか。

宮﨑先生 「(視神経脊髄炎スペクトラム障害は)年間1回~1回半の再発を繰り返すと言われています。この病気は再発により急激に悪化することも考えられますので、何よりも再発を抑える治療を続けていくことが大切です。『もしかしたら自分も』と思う方は、できるだけ早く脳神経内科などの専門の施設で検査を受けていただきたいと思います」

次回は、「視神経脊髄炎スペクトラム障害」を再発させないためにはどのような治療をしていくことが大切なのか、今回に引き続き宮﨑先生に解説して頂きます。

取材協力:
独立行政法人国立病院機構 北海道医療センター
札幌市西区山の手5条7丁目1番1号
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