北海道テレビ:HTB online 医TV

2022年11月08日15時41分

著者名:HTB医pedia編集部

視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)とは④

  

<今回のテーマ>

非常の珍しい難病の一つである「視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)」について解説する4回シリーズの最終回。前回の動画では、看護師としてこの難病の患者さんに長年わたって向き合っている「医療法人セレス さっぽろ神経内科病院」の外来師長の宿南澄恵さんにお話しを伺いましたが、最終回となる今回は、実際に患者さんを診療している医師の立場から、「医療法人セレス さっぽろ神経内科病院」の深澤俊行先生に、患者さんが抱える悩みや今後期待される治療の見通しなどのお話を伺いました。

<視神経脊髄炎スペクトラム障害によるQOL(生活の質)の低下>

「視神経脊髄炎スペクトラム障害」の患者さんにおいて、QOLの低下とはどのようなものでしょうか。

深澤先生 「視神経脊髄炎スペクトラム障害による視力低下や手足の麻痺などの症状は、それ自体が患者さんの生活の質(QOL)を低下させます。また、寛解期で症状が軽微であっても、再発の不安は精神的に大きな負担となります。しかも、今の医学のレベルでは、残念ながら患者さんはこの病気と一生付き合わなければなりません。そして、病気に関連した様々な問題を理由に、学業や仕事などのライフスタイルを大きく変化させなければならないケースが少なくないのです」

<視神経脊髄炎スペクトラム障害への理解の乏しさ>

「視神経脊髄炎スペクトラム障害」は、患者さんのQOLの低下があるにもかかわらず、一般の方のみならず、一部の医療従事者においても、病気への理解が乏しいという現実もあるそうです。

深澤先生 「一般の方の病気(視神経脊髄炎スペクトラム障害)への理解は乏しいですから、家庭生活や日常生活での不自由さは周囲になかなか分かってもらえず、患者さんにとって更に辛いことです。慢性の病気ですから治療継続に関連した悩みも少なくありません」

深澤先生 「薬の副作用で顔が丸くなってしまった若い女性患者さんが、(当時の)主治医に『なんとかなりませんか』と尋ねたところ、『大変な病気なのだから、我慢しなさい』と言われたと、その患者さんから言われたこともあります。(その)患者さんは治療の重要性を十分にわかった上で意を決して、その思いを伝えたかったのだと思います。それを(医療者が)『大変な病気なのだから仕方ない、我慢しなさい』と、まったく共感を示さずに言い放ってしまう対応は悲しいことです。(これは)慢性で難治性の病気を患っている患者さんの抱えている辛さや思いは、医療者にすら理解されにくいということだと思います。」

<再発を防ぐために>

再発リスクのある「視神経脊髄炎スペクトラム障害」の患者さんに対して、どのような治療やアドバイスを行っているのでしょうか。
深澤先生 「適切な薬剤やストレス回避などによる日常生活の工夫によって再発を抑えることがまず重要です。最近は、再発を抑える薬剤の選択肢が増えていますから、主治医とよく相談して自分に合った適切な治療を継続するべきです。また、障害の程度にかかわらず治療の一貫として運動療法の実施が勧められています。筋力の低下、つっぱり感、疲労感など様々な症状の改善に効果があるとされています。ただし、医師による薬物療法と併行して行うことが前提です。また、不適切な自己流にならないように実施内容を医療者に確認することも大切です」

<今後の治療の見通しについて>

最近は、「視神経脊髄炎スペクトラム障害」に対する診断・治療の進歩がみられ、様々な治験が進められています。

深澤先生 「視神経脊髄炎スペクトラム障害と診断された患者さんは、仕事・結婚・出産など、人生の様々なイベントに対して必要以上に消極的になってしまったり、諦めてしまったりするケースが少なくないと思います。しかし、今後も医学・治療は進歩し、再発を抑え、合併症を増やさないための可能性の選択肢は増えると考えられています。今は、適切な治療をしっかり受けながら病気とうまく付き合っていただければと思います」

4回にわたり、「視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)」についてお送りしてきました。この難病に対して、
これから更に社会的な理解が進んでほしい、そして新しい治療法も期待されています。

取材協力:
医療法人セレス さっぽろ神経内科病院
札幌市東区北21条東21丁目2-1
TEL 011-780-5700
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