北海道テレビ(HTB)は2000年の作品からプロデューサー自らが企画・原案を手がけ、北海道の地方都市を舞台にした「家族の形」をテーマとするオリジナル・ドラマを制作してきました。「そして明日(あした)から」は私が手がける4作目、そして北海道テレビとしては第9作目のスペシャルドラマです。昨年「夏の約束」というドラマを作った直後から、息子から見た父親の話をドラマにしたいとずっと考えていました。それは私の父が病気で人が変わったように塞ぎがちになって、本当は話したいことがたくさんあるのにちゃんと話せない関係になってしまったことも少なからず影響を与えていたように思います。「そう言えば父親とちゃんと話をしたことなんかないなぁ」そんな思いがこのドラマを作るスタート地点となりました。何となく函館を舞台にしようかなと・・・そんな思いで街を歩いていると一軒の古びた洋服店が目に止まりました。紳士服の仕立て屋さんでした。私の父は仕立て屋ではありませんでしたが、学生服の店をやっていて幼い頃は、仕事場でチャコを引き、生地を裁断していたランニング姿の父の姿をよく覚えています。聞けば、最盛期には150軒を超える紳士服店が函館にはあったそうですが、昨年に組合も解散し、現在は数軒のお店が細々と営業をしているものの、今年中には全部なくなるだろう。そんな話だったと思います。仕事場に入らせていただいた時、私が感じたのは父の匂いでした。
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