北海道テレビ:HTB online 医TV

2017年10月20日14時38分

著者名:HTB医pedia編集部

「国井のミカタスペシャル がん治療最前線」

  

日本人の2人に1人が「がん」にかかるという時代、その治療の最前線として、「がん遺伝子」を検査することにより その人の「がん」をピンポイントで治療する薬を見つける、実際の治療を紹介します。
今回は、3年前に「胃がん」のステージ4と診断され、治療を諦めざるを得なかった男性、上島さんが受けた最先端の「がん遺伝子検査」による「がん治療」を紹介します。

上島さんは、56歳だった3年前に体の不調を訴え病院で検査を受けたところ、「胃がん」の最も重い、ステージ4と診断されました。その後、抗がん剤治療を続けていましたが、決定的な効果は見られず、保険内で出来る治療もやり尽くし、今年7月のはじめ、諦めきれない家族が、わらにもすがる思いでたどり着いたのが、「北海道がんセンター」での「がん遺伝子検査」という最先端の「がん治療」でした。

上島さんが受診しました、「北海道がんセンター」の西原先生によりますと、「がん細胞」は遺伝子が壊れることで早く増えていく性格をもちますが、一般的な「抗がん剤」は、早く増えていく「がん細胞」を、「正常な細胞」と「がんの細胞」を区別なく、攻撃するように作られている為、「正常な細胞」であるはずの骨髄や粘膜なども一緒に攻撃し、副作用を発症してしまうとのことです。
これに対して、「がん遺伝子検査」に基づく「がん治療」は、あらかじめ100以上の遺伝子の検査を行い、異常のある遺伝子を特定することで、「がん細胞」だけを狙い撃ちする薬を見つけることになります。

「がん遺伝子検査」は採血だけを行い、すでに採取しているがんの組織と合わせて検査を実施します。結果が出るまでは約3週間を要しますが、効果を期待できる薬が見つかる確率は70%とのことです。
上原さんの場合は、「がん遺伝子検査」の結果、今まで投与されていなかった治療薬を使うと効果がみられる可能性があるとの診断を受け、一度はあきらめていた自宅での治療を継続することになりました。

これまでの「抗がん剤治療」は、臨床試験の結果、効果の高い薬を、胃がんには胃がんの薬、乳がんは乳がんの薬、と発症した臓器ごとに投与していました。しかし、最近の研究では、胃がんであっても乳がんの薬が効く、というような場合もあることが、「がん遺伝子検査」により判明してきており、「がん遺伝子検査」は、臓器に関わらず、効果があると思われる薬を見つける可能性のある「がん治療」のひとつといえます。

なお、「がん遺伝子検査」は、保険適用外の検査となるため、高額な費用がかかります。しかし、これまでの「抗がん剤治療」が、投与してみないと効果が判らない中で、副作用に苦しみ、体力を消耗することを考えれば、高いお金を払ってでも受診したいという患者の気持ちは理解出来ないものではありません。