北海道テレビ:HTB online 医TV

2021年06月29日16時38分

著者名:HTB医pedia編集部

【イチオシ!!】がん薬物療法のスペシャリストたち⑤~大垣市民病院 薬剤部編~

  

<今回のテーマ>

昨年10月から全6回シリーズで、「がん薬物療法のスペシャリストたち」と題して、一般的には馴染みの薄い「がん専門薬剤師」への理解を深めるため、北海道のみならず、全国の「がん専門薬剤師」の方々を取材し、それぞれのお考え、日々の業務や得意分野などを語って頂くことで、ニッポンの最前線の「がん専門薬剤師」を紹介していきます。
第5回目となる今回は、「がん専門薬剤師」として後輩の薬剤師に対して、熱い思いで指導する「大垣市民病院 薬剤部」の郷真貴子さんにお話を伺いました。

<大垣市民病院について>

大垣市民病院は、現在、全国に51施設ある「地域がん診療連携拠点病院(高度型)」に2020年、県内で唯一指定されました。「地域がん診療連携拠点病院(高度型)」とは、地域がん診療連携拠点病院に指定されている病院の中でも、診療機能などが高い医療機関として厚生労働大臣が認めた病院です。
そのような大垣市民病院の薬剤部には、本拠点病院の中でも最多の11名のがん専門薬剤師が在籍し、日々がん患者さんの治療を行っています。

<がん専門薬剤師になった理由>

がん専門薬剤師になって10年になる郷真貴子さん。
郷さんは大阪薬科大学を卒業し、大垣市民病院に入職しました。しかし、入職当時の郷さんはがん専門薬剤師について意識はしていたものの、自分とは全く違う世界のことで、その資格を取ることになるとは思っていなかったそうです。
郷さん 「自分は母をがんで亡くしたということもあって、がん専門薬剤師について意識していなかった訳ではないんですけど、あるとき薬剤部長から電話がかかって来て『なんか資格取らないか』と言われて、(それ以降)毎日部長に会えば『ちゃんと勉強しとるか』と確認される日々でしたので、そのような形で、私はお尻を叩かれながら資格取得を目指したっていう感じです」

<上司から見た郷さんとは>

郷さんをがん専門薬剤師の資格取得に導いた、上司である大垣市民病院薬剤部部長の吉村智哲さんに、郷さんについてお聞きしました。
吉村さん「郷先生は一言で言うと熱いですね。彼女が実習に来た時から知っていますが、その時は今とは違って、本当に物も言わずおとなしかったんですけど、実際に入ってみると、患者さんに対しても、仕事に対しても、また後輩の指導に対しても情熱を持って、本当に一生懸命取り組んでくれていますね」

<がん専門薬剤師になって嬉しかったこととは>

今では、経口抗がん薬対象の薬剤師外来の専任薬剤師としてがん患者さんに日々向き合っている郷さん。そんな郷さんも、がん専門薬剤師になって最初の頃は苦労されましたが、しばらくして嬉しかったことがあったそうです。
郷さん「がん患者さんと面談して、その内容を先生にメモで伝えたり、処方の提案とかもしていたのですが、全然通りませんでした。でも、めげずに何回も先生に提案し続けて、それが通って患者さんに良い効果をあらわれたことが積み重なっていくと、ようやく先生の方から『患者さんが感謝していたよ』とか、『僕も診察時間短くなって助かるよ』とか、そういうのが徐々に増えていきました。まさにがん専門薬剤師冥利につきるという感じです」

<後輩薬剤師の育成>

大垣市民病院薬剤部では、がん専門薬剤師のみならず、薬剤師全般の育成にも力を入れていて、「英語論文抄読会」と呼ばれる、英語で書かれた最新の医学論文などの情報を得るための勉強会を30年以上も行っています。
郷さん「例えば新薬が出る時は、たいてい臨床試験を経てくるのですが、それが英語である場合が多いです。そこで何らかの形で英語の論文に触れていないと、自分が学術活動するにあたって論文を引用するためにも、英語への苦手意識を少しでも下げようという意識がありますね」
郷先生は、多忙な業務の合間に今後、がん専門薬剤師を目指す4人の後輩薬剤師に対して指導・育成も行っています。
その中の一人、山田志緒里さんに、なぜがん専門薬剤師を目指すことにしたのか尋ねてみました。
山田さん「大垣市民病院が、がん専門で有名な病院だっていうのは知っていたので、もともとがん専門薬剤師を目指そうと思って入りました。そこで実際に患者さんと接していくうちに、先生方が活躍する姿や、患者さんがどんどん笑顔になって行く姿を見て、やっぱりがん専門薬剤師になりたいという思いが強くなりました」
がん専門薬剤師を目指す若い薬剤師に対して、郷さんはどのような思いがあるのでしょうか。
郷さん「がん専門薬剤師の資格を取った時点で、すでに知識は十分あると思うんですね。でも、その知識だけで出来るほど、医療の現場は甘くないというところがあるので、有資格者は知識に加えて、人格も必要だと思っています。人格については、私もまだ全然ダメなんですけど(笑)、若いがん専門薬剤師には人格も含めてプロ意識を持ってやってもらいたいと思います。そんながん専門薬剤師を現場は待っていますっというところを皆さんに伝えたいですね」

取材協力:
大垣市民病院
岐阜県大垣市南頬町4丁目86番地
TEL 0584- 81-3341
https://www.ogaki-mh.jp/