北海道テレビ:HTB online 医TV

2022年02月01日11時20分

著者名:HTB医pedia編集部

【イチオシ!!】がん薬物療法のスペシャリストたち⑥~熊本市立熊本市民病院 薬剤部編~

  

<今回のテーマ>

一昨年10月から全6回シリーズで、「がん薬物療法のスペシャリストたち」と題して、一般的には馴染みの薄い「がん専門薬剤師」への理解を深めるため、北海道のみならず、全国の「がん専門薬剤師」の方々を取材し、それぞれのお考え、日々の業務や得意分野などを語って頂くことで、ニッポンの最前線の「がん専門薬剤師」を紹介していきます。
第6回目となる今回は、2016年の熊本地震で深刻な被害を受けながら、新病院として多職種の医療スタッフからも信頼の厚いがん薬物療法のスペシャリストです

<熊本市民病院について>

熊本市民病院は、2016年の熊本地震で深刻な被害を受け、この地震により国指定のがん診療連携拠点病院の認定が一旦取り消されたものの、現在は新病院として建て直され、県のがん診療連携拠点病院に再指定された病院です。
そのような経緯を辿った熊本市民病院の薬剤部には、現在25名の薬剤師が在籍し、日々患者さんの治療を行っています。

<薬剤部部長 山室蕗子先生>

部長という管理職でありながら、日々現場の作業もこなす山室蕗子先生。
がん専門指導薬剤師の資格を持っている山室先生に、薬剤部に所属する薬剤師に日頃、どのような指導を行っているのかをお聞きしました。
山室先生「(地震後、病院を)新しくしたときに薬剤師を18名から25名に増やしてもらいました。そのとき10名以上、新人に近い薬剤師さんが一度に入ってきましたので、(彼らには)とにかく病棟にしっかり入り込んで経験をたくさんしてもらって、その間の(薬剤師としての)ルーチン業務は、(私が)背負うから皆で病棟に行って患者さんとしっかり話してね、と言っています」

<医師から見た薬剤師、チーム内の薬剤師の役割とは>

毎週木曜日に外来化学療法室では山室先生を中心に、医師や看護師、薬剤師が参加するチームカンファレンスが行われます。このチームカンファレンスに参加している医師の一人、血液・腫瘍内科部長の山崎浩先生に薬剤師についてお聞きしました。
山崎部長「特に若い先生が僕ら(医師)に聞くより、薬剤師さんにまずは聞いてみようという雰囲気があって、それだけ頼りにしていると思います。そういう意味でも本当に役に立っているなと思っています」
山室先生「他(診療)科の先生方とお話しするのって薬剤師は得意なんですよね。先生方と先生方で直接話をするより薬剤師を通した方が(話が)早かったりするので、そこが薬剤師の(チーム内の)役割かなと思っています」

<がん専門薬剤師になる為、研修を受けている薬剤師の声>

熊本市民病院は、がん専門薬剤師を目指す薬剤師の研修施設でもあります。
同じ熊本県の阿蘇医療センターから研修に来ている薬剤師の西千春さんに、どのようながん専門薬剤師を目指しているのかお聞きしました。
西さん「(がん患者さんが)山室先生と話をしているうちに、笑顔になられたり、前向きになられたりといった姿を見学させて頂いているので、患者さんが前向きに(がん)治療に向き合っていけるような(がん専門)薬剤師になれれば、と思っています」

<薬物療法専門薬剤師の声>

熊本市民病院の薬剤部には、全国でもわずか41名しかいない「薬物療法専門薬剤師」がおひとり在籍しています。「薬物療法専門薬剤師」としてICUを担当している楠本将裕先生に、山室先生についてお聞きしました。
楠本先生「そこは(管理職でありながら日々現場をこなすところは)部長の凄いところだと思いますし、スタッフの足りない、手が回らないところもご自身で働いていただいて、その分の時間も作ることで、仕事が早いというところも大きいと思っています」。

<病院内外を問わず行う薬剤師向けのセミナー開催>

山室先生は、がん薬物療法を支える薬剤師のために調剤薬局の薬剤師さんも交え、患者さんの薬物療法を支える薬剤師のためのセミナーを毎月1回(現在はオンラインで)開催しています。
山室先生「病院ではこのようにしているとか、薬局ではこのようにしているとか、私たちが見ているところと薬局さんが見ているところって、たぶん違うんですね。だから、そこが(病院と薬局の見ているところが)合わさって患者さん全部が見られるようになるというのが理想かなと思っています」

<がん専門薬剤師を目指す人へのアドバイス>

最後に、山室先生ががん専門薬剤師を目指す方々へのアドバイスをお聞きしました。
山室先生「私はラッキーなことに、ここが(熊本市民病院が)がん診療連携拠点認定病院だったこともありますが、(薬剤師としての)日常業務をしながら、家に帰ったら子育てをして子供を寝せてから、もう一回起きて勉強していました。(がん専門薬剤師は)特別な人だけがなるように思われているかもしれませんが、(がん専門薬剤師を目指す薬剤師の方々には)子育てをしながらでも(勉強は)出来る、というのは伝えたいと思います」

取材協力:
熊本市立熊本市民病院
熊本市東区東町4丁目1-60
TEL:096-365-1711(代表)
http://www.cityhosp-kumamoto.jp/