北海道テレビ:HTB online 医TV

2020年12月25日 9時25分

著者名:HTB医pedia編集部

【イチオシ!!】がん薬物療法のスペシャリストたち③~国立がん研究センター東病院 薬剤部編~

  

<今回のテーマ>

10月から毎月1回の6回シリーズで、「がん薬物療法のスペシャリストたち」と題して、一般的には馴染みの薄い「がん専門薬剤師」への理解を深めるため、北海道のみならず、全国の「がん専門薬剤師」の方々を取材し、それぞれのお考え、日々の業務や得意分野などを語って頂くことで、ニッポンの最前線の「がん専門薬剤師」を紹介していきます。
第3回目となる今回は、「がん専門薬剤師」として病院内のみならず、保険薬局との連携にも取り組む、国立がん研究センター東病院の松井礼子さんにお話を伺いました。

<国立がん研究センター東病院>

千葉県柏市にある「国立がん研究センター東病院」は、2018年に国内初のレディースセンターを開設し、女性のがん患者さんが安心して治療を受けられる環境も整えた、国内トップクラスのがん専門病院です。

<松井礼子さんのプロフィール>

国立がん研究センター東病院薬剤部に副部長として勤める松井さんは、大学卒業後は「北海道がんセンター」に9年間勤務されていましたが、より高度ながん医療を学ぶために「国立がん研究センター東病院」に異動されました。異動されて最初はすぐに、北海道に戻る予定だったのですが、いつの間にか14年の月日が経ってしまったそうです。
松井さん「本当はこんなに長くいる予定ではなかったんですけど、とても居心地が良かったのが、ずっといる理由になっているのかもしれません」
松井さんがすぐに北海道に戻らなかった理由は他にもありました。
松井さん「私が異動してきた頃、国立がん研究センター東病院は、薬剤師レジデント制度(がん医療に精通した薬剤師の養成を目的とした制度)を導入したところで、全国から若い薬剤師が集まるようになって、すごくパワーのある元気な薬剤師に会えるようになったのがすごく良かったと思います」

<松井さんの指導を受ける薬剤師さんの声>

松井さんの指導を受ける、5年目の薬剤師、田内淳子さんは「がん専門薬剤師」を目指しています。
田内さんが「がん専門薬剤師」の資格を取るために、現在行っている研究内容についてお聞きしました。
田内さん「免疫チェックポイント阻害剤(がん細胞によって抑えられていた免疫機能を再び活性化させる薬。今までとは異なる副作用が起こる可能性があるため注意が必要)の副作用で、どういう人が発現しやすいか、というリスクを解析する研究を行っています」
田内さんは日々、薬剤師として通常の業務を行いながら、「がん専門薬剤師」を目指す勉強や研究もされているわけですが、大変なのではないでしょうか。
田内さん「正直、大変ですが、時間は一日24時間しかないので、自分でしっかり研究の時間を作れるように、自分で頑張るしかないと思っています」

<がん専門薬剤師に向いている薬剤師とは>

松井さん「(がん専門薬剤師は)患者さんに(直接)対応する立場になってくるので、ひとりひとりの患者さんを大切にする薬剤師で、かつ、チーム医療に貢献できるコミュニケーション能力のある薬剤師が、がん専門薬剤師に向いていると思います」
がん専門薬剤師に目指すにあたってのアドバイスもお聞きしました。
松井さん「努力や経験で変えていくことができるので、学びや(様々な)経験を通して、(がん専門薬剤師として足りない部分を)埋めた形で、がん専門薬剤師になってほしいなと思います」

<保険薬局との連携>

近年、外来で経口抗がん剤による治療を受ける、がん患者さんが増加し、それに伴い、多くの処方箋が病院外で発行されています。松井さんは10年以上前から病院の薬剤師と保険薬局の薬剤師の連携に取り組んでいて、定期的に勉強会を開催しています。病院と保険薬局の連携は、病院・診療所の薬剤師と保険薬局の薬剤師(院外薬局)が連携して情報を共有し、患者さんに安心して継続的な薬物療法を提供する試みです。
松井さん「厚労省からの方針で、(がん患者さんも)処方箋一枚で保険薬局に行くことが出来るのですが、治療の全体像という意味では、一枚の処方箋では(がん患者さんの)情報が少なすぎる
ので、病院からしっかり患者さんの治療についての情報を(保険薬局と)連携することで、保険薬局の薬剤師さんでも(患者さんに対して病院と)同じ対応をして頂ける連携を推進していきたいと思っています」
実際に勉強会に参加している保険薬局の薬剤師である田島亮さんにお話を伺いました。
田島さん「抗がん剤領域はかなりナイーブな面も多いですし、病院の薬剤部の先生方と連携を密にすることで、患者様に寄り添った指導が出来るようになっているなと感じていますので、毎回、(勉強会には)参加しています」

<がん専門薬剤師の未来像>

松井さんが思い描く、がん専門薬剤師の未来像とはどのようなものでしょうか。
松井さん「がん医療はものすごく急成長しているんですね。いろいろなお薬も出ますし、それに対応して、(がん専門)薬剤師としていろいろなところに入って行って、その役割を果たしながら、どこに行っても(がん専門)薬剤師がいるようになれば、素敵な未来かなと思います」

次回は、薬剤師が、抗がん剤や副作用対策の薬を選び、医師に提案するといった、先進的なシステムを導入した、愛媛県の松山赤十字病院 薬剤部の村上通康さんにお話を伺います。

取材協力:
国立がん研究センター東病院
千葉県柏市柏の葉6-5-1
04-7133-1111
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/index.html