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2021年01月26日 9時27分

著者名:HTB医pedia編集部

【イチオシ!!】がん薬物療法のスペシャリストたち④~松山赤十字病院 薬剤部編~

  

<今回のテーマ>

10月から毎月1回の6回シリーズで、「がん薬物療法のスペシャリストたち」と題して、一般的には馴染みの薄い「がん専門薬剤師」への理解を深めるため、北海道のみならず、全国の「がん専門薬剤師」の方々を取材し、それぞれのお考え、日々の業務や得意分野などを語って頂くことで、ニッポンの最前線の「がん専門薬剤師」を紹介していきます。
第4回目となる今回は、「がん専門薬剤師」として医師と共に、がん患者さんへの「共同薬物治療管理」を行う、松山赤十字病院の薬剤部部長の村上通康さんにお話を伺いました。

<松山赤十字病院について>

愛媛県松山市にある「松山赤十字病院」は1913年に設立され今年で108年を迎える、地域がん診療連携拠点病院です。2005年には外来の化学療法センターを開設し、日々、がん患者さんの治療を行っています。

<共同薬物治療管理とは>

薬剤部部長の村上さんは、2014年に医師の代わりに薬剤師が抗がん剤や副作用対策の薬を検討し、それを医師に提案して、医師と薬剤師が共同でがん患者さんに必要な薬物治療の計画を立てるという、先進的なシステム「共同薬物治療管理」を病院に提案しました。
村上さん 「元々、薬剤師が(抗がん剤などの薬の)処方の指示をすることは医師にとっては聞いたことないシステムだったので、普段から協力や理解をしてもらっている医師に前もって説明しておくことで、(病院の)委員会のほうで(新システムの)導入を決定してもらいました。(事前に)味方をしてくれる医師を複数作っておいたことが非常に重要な根回しだったと思います」

<共同薬物治療管理について医師の立場から>

「共同薬物治療管理」の導入にあたり、村上さんが最も信頼し、味方になってくれた医師が、臨床腫瘍科部長の白石猛さんです。
白石さん 「(抗がん剤の副作用による)吐き気止めについて、うちの薬剤師さん達が処方の提案をしたものと、各科の医師が処方したものを、薬剤師さん達が(その結果を)比較してくれたんですね。そうしたら、薬剤師さん達が処方の提案をした(患者さんの)グループのほうが、吐き気が少ない、というデータを(薬剤師さんが)具体的に出してくれたんです。それがうちの病院全体で(共同薬物治療管理というシステムを)導入できた理由だと思います。薬剤師さん達がレベルの高い方々だと、患者さんにとって薬剤師さんへの安心感が全然違うので、ますます僕(医師)にとっては仕事がしやすくなり、良い循環が起こっているのだと思います」

<化学療法センターの看護師の立場から>

外来の化学療法センターで働く看護師さんも、村上さんと直接、患者さんの副作用の相談などができるので助かっているそうです。化学療法センターのがん化学療法看護認定看護師の向井さや香さんにお話を伺いました。
向井さん 「同じ(抗がん剤)治療を受けていても、副作用が強く出る方もいれば、そうでもない方もいるので、(副作用が)強く出る方に対してはどういう薬を追加すれば、患者さんの苦痛を緩和できるかというところで、(化学療法センター内で)問題解決がスムーズにできるので助かっています」

<後継者の育成>

全国のがん専門薬剤師の中でも、先進的ながん専門薬剤師と呼ばれている、村上さんは後継者を育成することも常に意識されています。
村上さん 「これは、と思った部下がいれば、がん(専門薬剤師)をやる気はないかと意見を聞きます。やる気があればスカウトをして、がん専門薬剤師の資格を取らせるようにしています。やっぱり一番大事なのは本人のモチベーションなので、そのあたりを常にリサーチしていて、それも管理職の仕事かなと思っています」

<実際にがん専門薬剤師を目指す薬剤師>

村上さんに実際にスカウトされ、今年、がん専門薬剤師の資格取得を目指す薬剤師の宮崎実千芸さんに、村上さんの人柄についてお話を伺いました。
宮崎さん 「プライベートとか、勿論、仕事とか、常に全力であたられる先生です。(仕事においては)答えをくれるのではなく、一歩二歩先の目標のヒントを与えてくれて、その目標に向かって、自分がどう解決していけば良いのかを教えてくれます」

<がん専門薬剤師の未来とは>

村上さん 「(共同薬物治療管理という)先進的なことをやりたいということは、『目立ちたい』というようなことでやっているわけではなくて、患者さんにとって一番メリットのあることは何かと考えたときに、(結果的に)先進的な取り組みだったということです。(村上さん自身、抗がん剤の)副作用対策をすべて薬剤師が決める、というような時代が近い将来来ることを夢見ていますし、そうあってほしいなと思っていますので、がん専門薬剤師としてはそういったことに意識を持って、今後活動してもらいたいなと思っています」

取材協力:
日本赤十字社 松山赤十字病院
愛媛県松山市文京町1番地
089-924-1111
http://www.matsuyama.jrc.or.jp/index.shtml