北海道テレビ:HTB online 医TV

2018年03月12日16時55分

著者名:HTB医pedia編集部

医療のミカタ 「がん遺伝子」について考える

  

医療のミカタ、今回は、「がん遺伝子検査」について取材をしました。

ステージ4の肺がんと診断された40歳の女性は、手術と抗がん剤治療を続けてきましたが、2年前に再発しました。藁にもすがる思いで、遺伝子検査で見つかった薬を投与すると、わずか2ヶ月で腫瘍が小さくなりました。

がんは遺伝子に異常がおきて発症します。同じ臓器のがんでも患者によって異なることがわかってきました。「がん遺伝子検査」とは血液とがん細胞が含まれた組織から160の遺伝子を調べ、がんの原因となった異常を特定、その遺伝子の異常に対して有効な薬を見つけ出します。結果が出るまでは3週間、薬が見つかる可能性は約70%ですが、実際にその薬で治療が出来ている人はわずか30%程度にすぎません。自費診療でのみ使える薬だと費用が高額なってしまい、経済的な問題で治療が出来ない事などが主な理由です。

取材した40歳の女性は、乳がん患者に多い遺伝子の異常がわかりました。しかし、日本のがん治療は臓器別に考えられているため、乳がんでは3割負担でも、肺がんでは保険が適用されませんので、毎月15万ほどの治療費がかかり、経済的な負担になっています。さらに検査費用も保険外になり、静和記念病院では約756000円かかります。

検査を受ければ新しい薬が見つかるかもしれないという希望が生まれた一方で、高額な費用という高い壁もあります。道内でこの遺伝子検査が受けられる医療機関は札幌では北海道大学、静和記念病院、帯広の北斗病院の三つがあります。北斗病院では来月から多くの人に遺伝子検査の恩恵を受けてもらおうと、この病院で手術を受けた人、またこれから受ける人に限って、臨床研究として患者さんの費用負担なく検査を行う予定だそうです。
アメリカでは既に一般的な医療として認められています。従来の抗がん剤というのはがん細胞と一緒に正常な細胞も攻撃してしまうので、ひどい副作用がありましたが、遺伝子検査でがんの原因となっている遺伝子情報を特定しますと、それだけを狙い撃ちできる新しいタイプの抗がん剤を使うことが可能になるそうです。これだと副作用も減って、治療効果も高いのでアメリカでは医療費が削減できると考えられています。日本も今、遺伝子レベルのがん医療に力を入れており、再来年度には一部のがんを対象に検査の保険適用を目指しています。