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2019年05月29日11時35分

著者名:HTB医pedia編集部

医療のミカタ「あなたの知らない薬の話」

  

<今回のテーマ>

今回の「医療のミカタ」は、「あなたの知らない薬の話」と題して、「抗生物質」の服用に際しての注意点、「ジェネリック医薬品」や「食間の薬を飲むタイミング」などのお話を、サッポロドラッグストアーの薬剤師、篠原耕作さんに伺いました。また、新たな薬を投与して、「がん細胞」を撃退する効果が期待される、最新のがん治療方法の一つ、「光免疫療法」について、北海道大学薬学研究院の小川美香子教授にもお話を伺いました。

<抗生物質の服用で注意すべきこととは>

人類を様々な「感染症」から救ったといわれる世界初の抗生物質「ペニシリン」は、1928年に英国のフレミング博士が、「アオカビ」から発見したことで知られていますが、現代の抗生物質は、土の中から抽出された微生物による化学物質を利用して作られています。
風邪などに罹った際に、処方されることも多い抗生物質ですが、処方された分を飲み切ってしまう前に、病状が改善してしまい、自己判断で抗生物質の飲用をやめてしまった、という、ご経験のある方もおられるでしょう。
このような処方された分の抗生物質の飲用を途中でやめてしまう、ということについて、サッポロドラッグストアーの薬剤師、篠原耕作さんにお話を伺いました。
篠原さん 「(処方された分の)抗生物質は飲み切らなければなりません。症状は菌が減ってくると確かに収まってくるんですけど、菌を退治しきれているわけではないので、途中でやめてしまうと『耐性菌』といって薬に抵抗性を持った菌に変化してしまう可能性があります。今、使っている抗生物質を将来に渡って、末永く使っていくためにも、用法用量を守って飲み切って頂きたいと思います」

<ジェネリック医薬品とは>

サッポロドラッグストアーの薬剤師、篠原さんには、最近よく耳にする「ジェネリック医薬品」についてもお聞きしました。
篠原さん 「ジェネリック医薬品は、もともと新薬と呼ばれるものがあるんですけれども、その(新薬の)特許が切れたときに、いろんなメーカーさんが同じ効能、同じ効果で金額(価格)を安く提供している薬です」
「ジェネリック医薬品」は開発費が抑えられるため、同じ効き目のものでも4割ほど安くなるのが特徴です。
実際例としまして、骨粗しょう症に効く薬ですが、先発薬の価格が3,405円なのに対し、「ジェネリック医薬品」は1,370円とかなり安くなっています。
篠原さん 「患者様には直接、ジェネリック医薬品があって、こういうふうなものなんですけど、いかがですかと逐一お伺いをしてご希望によって変えさせていただいています」
※但し、「日本ジェネリック医薬品協会」によりますと、効果が同等でも添加剤が異なる場合があるということで、アレルギーをお持ちの方は医師や薬剤師に相談する必要があります。

<薬を飲むタイミングのうち、「食間」とは>

薬を飲むタイミングで、「食前」「食後」というのはよく理解されているかと思われますが、「食間」というは、どのタイミングを指すのでしょうか。サッポロドラッグストアーの薬剤師、篠原さんにお聞きしました。
篠原さん 「食間とは、食事のあと2時間ほど経った空腹時のことを指しています。(食間だからといって)お食事の最中ではないので、その点はご注意いただければと思います」
ちなみに、食前は食事の20~30分前、食後は食後30分以内のことを指しています。

<新たな薬の研究、がんに対する「光免疫療法」とは>

現在のがん治療は、「外科手術」、「放射線療法」、「化学療法(抗がん剤投与)」の三つの治療法が有りますが、これらの三大治療法に加えて、がん治療への効果が期待されている治療として、「光免疫療法」の研究が、北海道大学で進められています。この「光免疫療法」の研究グループを指導する、北海道大学薬学研究院の小川美香子教授にお話を伺いました。
小川教授 「近赤外光という、体に害のない光を使ってがん細胞を殺す研究をしています」
小川教授らの研究グループは、テレビのリモコンにも使われている「近赤外光」という光を当てて、がん細胞だけを破壊する治療法、「光免疫療法」を解明し、去年発表しました。
「光免疫療法」は、がん細胞のたんぱく質に結びつく性質を持つ「抗体」と、「近赤外光」に反応する化学物質を複合した薬剤を使います。がん患者に、この薬剤を注射して、がん細胞に「近赤外光」を照射すると、がん細胞に結び付いた薬剤が化学反応を起こし、がん細胞だけを破壊するのです。
小川教授 「一般的な抗がん剤はそもそも毒ですので正常細胞にも毒性を示してしまうんですけど、今回のお薬は毒ではないので、副作用は極めて少ないと考えられます」
日本と米国では現在、この薬剤の承認を目指す臨床試験が行われていて、近く実用化される見込みだということです。
小川教授 「一刻も早く皆様にこの治療が届けられるといいなと思い、現在、研究を頑張っています」
「光免疫療法」で使われる薬は、患者ひとりひとりに合わせるようなオーダーメイド的な薬ではないため、その価格も抑えられる見込みです。小川教授は、がんは将来治せる病気になっているのでないかとも、話されていました。

新薬も含め、様々な可能性をも秘めた薬。
正しく理解して、ご使用ください。