北海道テレビ:HTB online 医TV

2019年11月05日10時17分

著者名:HTB医pedia編集部

【イチオシ!!×医TV】~患者のココロ、医療のココロから~こころに寄り添う医療の現場から①看護師編

  

<今回のテーマ>

今回から毎月1回の6回シリーズで、「~患者のココロ、医療のココロ~こころに寄り添う医療の現場から」と題して、患者さんの「こころ」に寄り添う医療者の努力や、それによって変わる患者さんの姿などを通して、医療現場でのコミュニケーションのあり方、大切さを考えていきます。
第1回目の今回は、医療者による患者へのコミュニケーションスキルに活用されている「SPIKES(スパイクス)」について、看護師のお立場で、富山県の市立砺波総合病院 看護部部長代理がん看護専門看護師の平悠子さんにお話を伺いました。

<コミュニケーションスキル向上の背景>

「インフォームド・コンセント」という言葉について聞いたことはあるものの、その内容までご理解されていますか。英訳では、インフォーム=説明、コンセント=同意と訳されています。しかし、現代の医療現場では、医師は正確で詳しい「説明(インフォーム)」を行うものの、説明(診療)に要する時間に制限があって、患者が医師から説明された内容を理解・同意(コンセント)しているのか、確認したくても確認出来ないケースがあります。そこで今、高度化し細分化された医療の現場では、医療者が患者の理解・同意を得るために、患者さんの状況を理解し心を開いてもらう、高いコミュニケーションスキルが求められています。

<看護師のコミュニケーションスキルとは>

今年で18年目のベテラン看護師の平さん。
平さんは、患者とのコミュニケーション能力を高めるために、「SPIKES」と呼ばれるコミュニケーションスキルの研修を受けました。
「SPIKES」とは、がんに罹った患者に対して、辛い現実をどのように伝えるか、どのように配慮すべきか、
S=Setting(場の設定)、P=Perception(病状の認識)、I=Invitation(患者からの招待)、K=Knowledge(情報の共有)、E=Emotion(感情への対応)、S=Strategy/Summary(戦略/要約)という、6つの手順を表したコミュニケーションスキルになります。
「SPIKES」の研修を受けた後、平さんが変わったと感じるコミュニケーションスキルとはどのようなものだったのでしょうか。
平さん「(SPIKESの研修を受けたことで)患者さんが困っていたり、治療法で悩んでいるときに、『SPIKES』のこの技法(スキル)を使えばいいんだとか、患者さんの大事にしているところを抽出しやすくなったと思います」

<患者の立場からのコミュニケーションスキルとは>

昨年4月に乳がんの告知をされた中野広美さん。昨年11月に摘出手術、放射線治療を受け、その後、3週間ごとに抗がん剤治療を受け、今年9月に治療が終了しました。
中野さんにとって看護師はどのような存在なのでしょうか。
中野さん「こんなことを聞いてもいいのかな、というような下着や、手術の跡といった細かい質問は、先生に聞かずに、看護師さんに聞きました。(看護師さんから抗がん剤治療の前に)かつらを必ず用意しておいたほうが慌てずにいいよ、って言われたとき、最初は『えっ』と思ったんですけど、(抗がん剤治療を受けた後)こんなに早く抜けるのっていうぐらい髪の毛が抜けたんですよ、だから(心構えとして)先に聞いておいてよかったなあと思いました。」
中野さん「先生には医療的なことを聞いて、看護師さんは、崩れそうな自分の心のことを、何でも聞けるような人になっています。」
がん患者として中野さんが医療者に希望することは何でしょうか。
中野さん「病人といっても人間ですから、やっぱり(がん患者に対しても)普通の人間として対応して頂ければ、いちばん励みになります。いつも会話をしてもらったら、『気にかけてもらっとるな、じゃあ頑張れるな』って思いますから、会話、コミュニケーションはとってほしいな、というのが正直なところです」

<看護師の役割とは>

医師と患者さんの間に立つ「看護師」さんの役割とは何でしょうか。
平さん「(看護師は)先生の考え方を代弁することもあるし、患者さんの思いを代弁することもありますが、(患者さんには)出来るだけ「患者力」をつけて頂きたいと思っていますので、どうやって患者さんが先生に(自分の病状・気持などを)伝えられるかが、すごく大事だと思っています」

現代医療の現場では、患者さんの病気への理解度を高め、医療への満足度を向上させられる、コミュニケーションスキルの充実が求められています。しかし同時に、患者さんも医療者に心を開いて、なんでも相談することが大切になってきています。