北海道テレビ:HTB online 医TV

2019年11月14日15時24分

著者名:HTB医pedia編集部

「がん領域におけるゲノム診断と個別化医療」 ①病理の視点から

  

<今回のテーマ>

今回の「医TV」は、「がん領域におけるゲノム診断と個別化医療」の四回シリーズの第一回目として、病理の視点から、北海道大学病院ゲノム・コンパニオン診断研究部門特任准教授 畑中豊さんにお話を伺います。

<がん治療における化学療法の変化と病理診断>

がん治療の化学療法は、これまでのがん細胞のみならず正常細胞にも作用してしまう抗がん剤による化学療法に加えて、遺伝子を発現しているがん細胞のみに作用する分子標的治療薬の登場によって、病理診断の役割も、組織診断からゲノム(遺伝子)診断へと大きく変化しています。分子標的治療薬が登場する前の、がんの病理診断は、いずれかのがんと確定した場合、がん細胞の組織形態を調べ、組織の型が同じ場合、特定の抗がん剤を投与するという、画一的な治療となっていました。しかし、分子標的治療薬が登場してからのがんの病理診断は、分子標的治療薬が、がんの発生や進展に関係するドライバー遺伝子を目標に攻撃する性質を持っている為、がん細胞の組織形態を調べるとともに、遺伝子変異を確認するため、ゲノム(遺伝子)診断を行い、遺伝子変異に合わせた分子標的治療薬による、個別化治療が行われています。

<ゲノム(遺伝子)診断の方法>

がんのドライバー遺伝子を攻撃する分子標的治療薬を選定するにあたって、今までのゲノム(遺伝子)診断は、がん種ごとに特定されるドライバー遺伝子を見つけるために、一回の検査で、ドライバー遺伝子を一つずつ特定する「コンパニオン診断」という方法がとられていましたが、今年6月に保険適用にもなった「がん遺伝子パネル検査」という次世代のシーケンサーの登場によって、一回の検査で同時に数十から数百のドライバー遺伝子を特定することが可能となりました。この「がん遺伝子パネル検査」によって、非小細胞肺がんと診断された場合、1回の検査で4種類のドライバー遺伝子を特定できるようになり(コンパニオン診断のマルチプレックス化)、また、標準治療が無い場合や、化学療法による標準治療が終了し他の治療方法が無い場合に、がんの種類を問わず、遺伝子変異を精査して、臓器横断的な治療を行うこと(ゲノムプロファイリング検査)が可能となりました。

<新たな分子標的治療薬が開発される中での病理診断の役割>

国が推進する「がん対策基本計画」において、「ゲノム医療」の推進が掲げられており、遺伝子(分子)を精査する「分子病理診断」は、新たな分子標的治療薬の開発と共に、今後、更なる役割を果たすことになります。

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