北海道テレビ:HTB online 医TV

2019年11月14日16時59分

著者名:HTB医pedia編集部

「がん領域におけるゲノム診断と個別化医療」 ④肺がん・・・臨床の視点から

  

<今回のテーマ>

今回の「医TV」は、「がん領域におけるゲノム診断と個別化医療」の二回シリーズの第四回目として、臨床の視点から、「肺がんのドライバー遺伝子と個別化医療」について、KKR札幌医療センター病院長 磯部宏さんにお話を伺います。

<肺がんの化学療法の対象>

「肺がん」は、「肺」が呼吸を司る大切な臓器であるため、他のがんと比較して、手術で切除できる範囲も限られてきますので、放射線治療や化学療法で治療を行うケースが多いがんです。「肺がん」で手術が行われるのは、非小細胞肺がん(腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん)のみですが、手術ができたとしても、手術後の再発を防ぐために化学療法が行われます。

<肺がんの化学療法の変遷>

分子標的治療薬が登場するまでは、非小細胞肺がんに対してはがん細胞の組織型に対応した、抗がん剤による画一的な治療が行われていましたが、分子標的治療薬が登場してからは、分子標的治療薬が攻撃するドライバー遺伝子(変異した遺伝子)を診断し、ドライバー遺伝子の組織に応じた分子標的治療薬を選択する、個別化医療が行われるようになりました。

<肺がんに関係するドライバー遺伝子の特定>

「肺がん」に関係するドライバー遺伝子は、「EGFR遺伝子変異」、「ALK融合遺伝子変異」、「ROS1融合遺伝子変異」、「BRAF遺伝子変異」の4つの遺伝子変異であることが判ってきており、現在、それぞれの遺伝子変異に応じた分子標的治療薬も存在しています。
ドライバー遺伝子の特定による分子標的治療薬の選択について、今までは、ドライバー遺伝子を一つずつ特定する「コンパニオン診断」という方法で、上述の4つの遺伝子変異のうち、いずれの遺伝子変異に該当するか調べた上で、分子標的治療薬を選択していました。しかし、今年6月に保険適用にもなった「がん遺伝子パネル検査」という次世代のシーケンサーの登場によって、一回の検査で同時に数十から数百のドライバー遺伝子を特定することが可能となりました。この「がん遺伝子パネル検査」によって、非小細胞肺がんの場合、標準治療が無い場合や、標準治療が終了し他の治療方法が無い場合にも、遺伝子変異を精査して、分子標的治療薬を選択することが可能となりました。

<免疫チェックポイント阻害剤の登場による、今後の肺がんへの化学療法>

現段階で治療例は少ないものの、免疫細胞に働くブレーキをはずして、免疫細胞ががん細胞を攻撃する力を強化する「免疫チェックポイント阻害剤」は、切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対して、効果の期待できる薬剤です。今後の「肺がん」への化学療法は、遺伝子変異の有る場合は「分子標的治療薬」を選択し、遺伝子変異の無い場合には「免疫チェックポイント阻害剤」及び「抗がん剤」の組み合わせを選択することが主流になるとされています。

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