北海道テレビ:HTB online 医TV

2020年02月17日17時35分

著者名:HTB医pedia編集部

【イチオシ!!×医TV】~患者のココロ、医療のココロから~こころに寄り添う医療の現場から④アドバンス・ケア・プランニング編

  

<今回のテーマ>

昨年10月から毎月1回の6回シリーズで、「~患者のココロ、医療のココロ~こころに寄り添う医療の現場から」と題して、患者さんの「こころ」に寄り添う医療者の努力や、それによって変わる患者さんの姿などを通して、医療現場でのコミュニケーションのあり方、大切さを紹介しています。
第4回目となる今回は、「人生会議」という愛称で呼ばれる「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」について、旭川医科大学病院緩和ケア診療部准教授 阿部泰之さんにお話を伺いました。

<アドバンス・ケア・プランニング(ACP)とは>

「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」とは、命に関わるような大きな病気やケガをしたときのために、患者さんが自分にとって大切にしていることや希望、また、どのような医療やケアを望んでいるのか、事前にご家族や医療従事者に伝え、話し合っていくプロセスのことです。
2006年に旭川医科大学病院で緩和ケアチームを立ち上げた阿部先生は、日本緩和医療学会が行っている、医師の継続教育プログラムの中で「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」の作成を担当されました。
阿部先生「(ACPは)患者さんと僕と(患者さんの)ご家族との関係が良くなることを目的にやっていて、いかに(患者さんと実際に接し)良い関係を作るかというときに、どういう顔で話したほうが良いかとか、どういうテーマが良いか、とかを考えながら、患者さんがどんな方で、どんな価値観を持っておられるかということを知るために行っています。このような患者さんと会話しているプロセス自体がACPですので、このプロセスが無ければ、ACPとはいえません」

<アドバンス・ケア・プランニング(ACP)を実際に受けた患者さんの声>

旭川市在住の高曽根由美子さん(60代)は、9年前に乳がんのステージ4と告知され、抗がん剤が効かなければ、余命3ヵ月から6か月と宣告されました。その後、手術ができない状態でしたので、抗がん剤治療を続けていましたが、4年前に抗がん剤による副作用が出始めたため、主治医から阿部先生を紹介されました。
高曽根さんにとって阿部先生はどのような存在だったのでしょうか。
高曽根さん「今は頼れる先生かな。最後の自分がどうやって息を引き取りたいか、息を引き取る時にはどうしたらいいか、という話を最初からされていましたので、最後まで阿部先生に診て頂きたいです」
高曽根さんが今、一番大切にしていることは何でしょうか。
高曽根さん「特に子供に迷惑をかけないことです。具合が悪くなったときに、子供にすごく怒られたことがあって、そのときは、どうして怒られたのか分からなかったんですけど、私が『好きにさせてくれ』って言ったことが子供にとってはショックだったらしいです。そういう子供との話も阿部先生にはしていて、阿部先生からは『それはそうでしょう』と言われました」
高曽根さんは今、後ろ向きでも前向きでもなく、今、目の前にあることを少しずつ片づけて行こう、と、いう気持で生活を送っているとのことです。

<アドバンス・ケア・プランニング(ACP)のゴールとは>


阿部先生「ACPはシビアだからこそ大事なテーマです。患者さんにとって大事なことであるからこそ、医療従事者がそのテーマを一生懸命話し合うことで、患者さんが『この人たちなら自分の具合が悪くなっても安心だな』と思ってもらうのが、ACPのゴールだと思います」

患者となったときに、自らの希望を信頼する家族や医療従事者に伝えて、繰り返し話し合うことで、関係性を深め、自らの価値観を知ってもらうこと、そのプロセスこそが「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」です。今や、もしものときのために、ご本人のみならず、ご家族、そして医療従事者にも「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」というコミュニケーションのプロセスが、必要な時代となっています。

取材協力:
旭川医科大学病院
旭川市緑が丘東2条1-1-1
0166-65-2111
http://www.asahikawa-med.ac.jp/index_h.php