北海道テレビ:HTB online 医TV

2020年03月11日16時21分

著者名:HTB医pedia編集部

【イチオシ!!×医TV】~患者のココロ、医療のココロから~こころに寄り添う医療の現場から⑤アドバンス・ケア・プランニング編

  

<今回のテーマ>

昨年10月から毎月1回の6回シリーズで、「~患者のココロ、医療のココロ~こころに寄り添う医療の現場から」と題して、患者さんの「こころ」に寄り添う医療者の努力や、それによって変わる患者さんの姿などを通して、医療現場でのコミュニケーションのあり方、大切さを紹介しています。
第5回目となる今回は、「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」について、「個人の意思の尊重」の観点から、京都大学医学部附属病院看護部 がん看護専門看護師の角裕子さんにお話を伺いました。

<アドバンス・ケア・プランニング(ACP)での看護師の役割>

「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」とは、命に関わるような大きな病気やケガをしたときのために、患者さんが自分にとって大切にしていることや希望、また、どのような医療やケアを望んでいるのか、事前にご家族や医療従事者に伝え、話し合っていくプロセスのことです。
そのプロセスの中で、看護師は患者さんの意志を尊重しながら日々ケアを行い、患者さんのご家族とも話し、その生活環境も知る立場にあるため、「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」の入り口という役割を担っています。

<看護師によるアドバンス・ケア・プランニング(ACP)とは>

看護師として17年の経験のある京都大学医学部附属病院看護部の角裕子さんは、病棟の看護師をされていたときに、がん患者の方々やその家族の方々への接し方に行き詰まりを感じて、もっと踏み込んだ看護を行いたいという強い思いから、がん看護専門看護師の資格を取られました。
角さんが「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」を始めようとしたきっかけは何だったのでしょうか。
角さん「がんの患者さんというのは、ある程度(がんが)進行したところで、急に体調を崩されたりすることが多くて、(その段階だと)患者さんの思いを確認できていないという現状があったので、(患者さんが)どういうことを大事に考えておられるとか、ご家族との関係性とか、そういうところを早めの段階でお話を聞いて確認していくことが大切だと思いました。そのためには「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」は(看護師をはじめ)医療者全体で取り組んでいくことが大事だと思っています」
「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」を行うための大事なスキルについて伺いました。
角さん「コミュニケーションスキルが一番大きいと思います。患者さんがこういうことを先生に伝えて欲しいと言われたことは、しっかり先生に伝えるとか、(患者さんとの)約束をきちんと守るとか、そういった日々の積み重ねが、患者さんとの信頼関係に繋がっていくと思います」

<看護師によるアドバンス・ケア・プランニング(ACP)を受けた患者さんの声>

能楽協会の京都支部副支部長で重要無形文化財の保持者でもある、京都市在住の橋本雅夫さん(80代)。橋本さんは2年前に胃がんのステージ4と告知され、手術を受けましたが、すぐに再発したため、抗がん剤による治療を開始しました。抗がん剤は橋本さんのがんには効き、今では能楽の舞台に立てるまで回復されています。
胃がんを告知されたとき、橋本さんはどのようなお気持ちだったのでしょうか。
橋本さん「(胃がんになるとは)もう夢にも思わなかったというのが最初の気持ちで落ち込みました。とりあえず、命のある間にたくさん能を舞っておこう、舞台を務めていこうと思いました」
橋本さんにとって、看護師さんはどのような存在だったのでしょうか。
橋本さん「この間より顔色が良いですよねって、(看護師さんが)治療に来られるたびに仰っていただくと、やっぱり元気が出ますよね。(私が)治っていくことに一生懸命になってくれる(看護師さんの)姿勢が一番だと思います。(看護師さんも)よく教育されているんだなと感心するばかりです」

<もしものときのために、看護師は>

看護師は、回復された患者さんに対しても「もしものとき」について伝えるのでしょうか。
角さん「がんの患者さんで、化学療法を受けられている方は、治療が効いていても、残念ながら(その効果が)永遠に続かないことがほとんどです。患者さんが、他のことでいつ体調を崩されるのか、治療が継続できなくなるのか、といったことは分からないことなので、お元気なときに少しずつ万が一のことに備えて、お話しをすることが大事なことだと思っています」

「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」は、自分自身のこととして考えることは難しいことかもしれません。しかし、自分自身にとって、大切な家族や誰かのために、自分のことを考えたり、話し合ったりすることは、"今を生きるための大切な何か"をもたらしてくれるかもしれません。

取材協力:
京都大学医学部附属病院
京都市左京区聖護院川原町54 
075-751-3111(代表)
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