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2020年10月29日11時46分

著者名:HTB医pedia編集部

【イチオシ!!】がん薬物療法のスペシャリストたち①~神戸市立医療センター中央市民病院 薬剤部編~

  

<今回のテーマ>

10月から毎月1回の6回シリーズで、「がん薬物療法のスペシャリストたち」と題して、一般的には馴染みの薄い「がん専門薬剤師」への理解を深めるため、北海道のみならず、全国の「がん専門薬剤師」の方々を取材し、それぞれのお考え、日々の業務や得意分野などを語って頂くことで、ニッポンの最前線の「がん専門薬剤師」を紹介していきます。
第1回目となる今回は、2006年に制定された「がん専門薬剤師認定制度」が創設されたときの、第一世代にあたる、「神戸市立医療センター中央市民病院」の薬剤部副部長 池末裕朗さんにお話を伺いました。

<市立神戸市立医療センター中央市民病院 薬剤部について>

今回、取材に訪れた「神戸市立医療センター中央市民病院」は、768の病床を数え、30を超える診療科がある、神戸市の基幹病院です。その中で、全ての診療科に関わる薬剤部には、約70名の薬剤師が在籍しています。

<がん専門薬剤師認定制度認定を初めて受けた、薬剤部の池末裕明さん>

「がん専門薬剤師認定制度」は、2006年に「日本医療薬学会」による、質の高いがん薬物療法を実践する薬剤師に対して認定する制度として始まりました。「神戸市立医療センター中央市民病院」の薬剤部副部長として働く池末裕明さんは、その制度開始時に認定を受けた第一世代の「がん専門薬剤師」になりますが、はじめて認定されるにあたっては大変苦労されたそうです。
池末さん 「(2006年)当時の薬剤師は、がん薬物療法に対して、どのような役割をするのか、はっきりしていませんでした。現場でいろいろな人にお世話になり、迷惑もかけながら学んでいきましたので、そういった意味での苦労は多かったと思います」
池末さんは患者さんへの対応、コミュニケーションについて、先輩の薬剤師をはじめ、医師や看護師の話し方からも学んだそうです。
池末さん 「(患者さんとのコミュニケーションにおいて)場数をこなしながらやっていくうえで、こういう入り方がいいのかなとか、こんなやり方をすれば、もっとコミュニケーションをとりやすいなとか、自分なりに理解していったように思います」
そのような経験を経た今でも、池末さんは薬剤部の中で常に報告、連絡を欠かすことなく、ご自身が出した答えが正しいものかどうか、先輩のみならず後輩の薬剤師にも必ず相談しています。

<がん専門薬剤師の必要性>

「神戸市立医療センター中央市民病院」では、外来で治療をしながら日常生活をおくる、がん患者さんも増えていることから、患者さんの身体面や精神面、そして患者さんのご家族まで支えられる薬剤師を増やしていくことが求められています。
池末さん 「二人に一人ががんにかかる時代に、社会生活をおくりながら、がん治療を受けていかれる方々も増えているので、相当数のがんに習熟した薬剤師が必要であると思います」

<薬剤師レジデント制度の導入>

「神戸市立医療センター中央市民病院」では、将来を担う薬剤師を養成するため、大学卒業後に病院などで薬剤師として働きながら研修を受け、薬剤師の資質を向上させる制度、「薬剤師レジデント制度」を導入しています。
2年目の薬剤師レジデント、岩間弓奈さん。
大学での6年間では学べない、実際の患者さんや患者さんのご家族と出会い、先輩の薬剤師の方々のアドバイスを生かしながら、高いレベルでの薬剤師を目指しています。
岩間さん 「6年間あった薬学部での勉強でも分からないことがありましたが、今は実際の臨床現場に立ってみて、考え方や見方が全く違うので、実はそういうことだったんだ、という気付きも有りますし、新しい発見の方が多い印象があります。この病院の薬剤師レジデント制度には同期もいて、同期同士、お互いの勉強会とか日常会話でも励ましあっていて、自分たちを高めていける環境がありますので、恵まれた環境だなと思っています」
池末さんからはどのようなご指導を頂いているのでしょうか。
岩間さん 「(池末さんは)分からないことを伝えると、分からないことをどうやってアプローチしたらいいか、親切に教えてくださるので、臨床研究のアドバイスや社会人としてのアドバイスも頂けます」
池末さん 「おそらく彼ら(薬剤師レジデント)が、将来的に私たち薬剤師を次の世界、新しいフロンティアに連れて行ってくれると思いますので、そのときに遅れないよう自分自身もしっかりついていきたい、と思っています」

<北海道の医療機関、薬剤師について>

池末さんは北海道の医療機関、薬剤師について、どのような印象をお持ちなのでしょうか。
池末さん 「がんを薬剤師という立場で考えていくと、北海道の病院は、お互いのコミュニケーションが密で、おそらく病院それぞれで、チーム医療がすごく浸透していると思います」

次回は北海道大学病院 薬剤部の熊井正貴さんにお話を伺います。

取材協力:
神戸市立医療センター中央市民病院
神戸市中央区港島南町2丁目1番1号
078-302-4321
http://chuo.kcho.jp/