北海道テレビ:HTB online 医TV

2020年12月02日14時47分

著者名:HTB医pedia編集部

【イチオシ!!】がん薬物療法のスペシャリストたち②~北海道大学病院 薬剤部編~

  

<今回のテーマ>

10月から毎月1回の6回シリーズで、「がん薬物療法のスペシャリストたち」と題して、一般的には馴染みの薄い「がん専門薬剤師」への理解を深めるため、北海道のみならず、全国の「がん専門薬剤師」の方々を取材し、それぞれのお考え、日々の業務や得意分野などを語って頂くことで、ニッポンの最前線の「がん専門薬剤師」を紹介していきます。
第2回目となる今回は、北海道大学病院副薬剤部長の熊井正貴さんに、「がん専門薬剤師」を育てる「がん指導薬剤師」と、北海道大学病院のがんに対する緩和ケアチームについてお話を伺いました。

<がん指導薬剤師とは>

「がん指導薬剤師」とは、がんの薬物療法についての深い知識と鍛錬された技術をもって、他の薬剤師を指導するとともに、自らの研究活動も行うことができる、がん専門薬剤師です。
熊井さん「がん指導薬剤師は、がん専門薬剤師を育てることが出来る、研究であったり教育であったり、そういったところもしっかりと出来る薬剤師という位置付けですので、(熊井先生ご自身が)元々業務上、疑問に思ったところを研究に落とし込んで外に発表していく、ということを行っていましたので、すんなりとがん指導薬剤師になりましたね」

<がん指導薬剤師に指導を受けている薬剤師の声>

がん専門薬剤師を目指し、実際に熊井さんに指導を受けている加藤信太郎さんにお話を伺いました。
加藤さん「(がん専門薬剤師を目指すにあたっては)通常業務以外の時間での研究や自己研鑽を行う必要があります。しかし、同じような境遇で一緒に頑張っている仲間が職場にいて大変励みになっていますし、ゆくゆくは熊井先生のように後輩たちを導いていけるような、頼りになる薬剤師になれればいいな、と思っています」

<北海道大学病院の緩和ケアチーム>

北海道大学病院では2008年に、医師や看護師、薬剤師、栄養士が一堂に会した、がんに対する緩和ケアチームを立ち上げました。熊井さんはこのチームの設立時からのメンバーです。
熊井さん「(がん患者さんからは)緩和ケアというと、どうしても先が長くないとか、もう自分はおしまいだ、というようなイメージでとらえられることが結構あるのですが、実はそんなことは全然無くて、診断を受けてすぐに痛みがあったら、じゃあ痛み止めを使いましょう、というように(個々の患者さんに対して臨機応変に対応しますので、患者さんも)緩和ケアをどんどん積極的に受けてもらいたいと思っています」
現在、北海道大学病院の緩和ケアチームのリーダーである麻酔科の敦賀健吉さん、同チームに看護師の立場で加わる看護師長の石岡明子さんにもお話を伺いました。お二人からみて、熊井さんは緩和ケアチームにおいて、どのような存在なのでしょうか。
敦賀さん「(熊井さんは)率先して自分で時間を作って緩和ケアチームに参加してもらって、僕らの相談だけでなく実際に患者さんのところに行って面談もしてくれるというのは本当にありがたいです」
石岡さん「進行がんの患者さんはとても不安が強いのですが、(熊井さんは)その不安が強い中でゆっくりと丁寧に話を聞いてくださったり、(石岡さんご自身の)相談に乗ってくれる人が(チームに)いるという存在がすごく大きいと思っています」
熊井さん「(がんの)痛みとか辛さって言うのは、究極的には患者さんご本人しか分からないんですよね。検査値みたいに数字で出るわけではないので、痛みや辛さを抱えていると、どうしても夜ぐっすり眠れないとか、日中もしっかり休めないということで体力とか気力も落ちて行ってしまいますから、ぜひ痛みは我慢しないで周りの方に伝えるということから始めて頂きたいというのはすごく思います」

<熊井さんの座右の銘>

患者さんはもちろん、他の医療スタッフにも細かな気配りを忘れない熊井さんには、大事にしている言葉があります。
熊井さん「『お役に立てれば喜んで』という言葉とその気持ちを自分としては大事にしていますね。患者さんもそうですし、一緒に働いているスタッフや同じ薬剤師の仲間には、いろいろとやらなければならないことがいっぱいあるのですが、自分がやってお役に立てるのであれば、それは自分の喜びにも返ってくるので、そういった思いはこれからも大事にしたいなと思っています」

次回は、保険薬局の薬剤師さんとの連携にも取り組んでいる、がん専門薬剤師、国立がん研究センター東病院 薬剤部の松井礼子さんにお話を伺います。

取材協力:
北海道大学病院
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