北海道テレビ:HTB online 医TV

2022年07月11日16時50分

著者名:HTB医pedia編集部

増加する糖尿病網膜症への取り組み 愛心メモリアル病院 眼科②

  

<今回のテーマ>

「医TV」は前回から2回にわたって、新しい眼科部長が就任した「愛心メモリアル病院 眼科」の取り組みについて紹介しています。第2回となる今回は、同病院眼科が行う「糖尿病網膜症」に対する治療について眼科部長の金学海(じん しゅえはい)先生に解説して頂きます。

<糖尿病網膜症とは>

「糖尿病網膜症」は「糖尿病」の三大合併症の一つで、血糖値が高くなることで、眼の網膜の血管が傷つき、視力を低下させる病態です。2014年の日本眼科学会の調べによりますと、「糖尿病網膜症」は日本人成人の中途失明の原因として「緑内障」に続き2番目に多いと報告されています。

<糖尿病網膜症の症状>

「糖尿病網膜症」は、症状の進行具合によって「単純網膜症」、「増殖前網膜症」・「増殖網膜症」というように分類されます。「単純網膜症」は網膜の血管が傷つき、網膜の出血や軟性白斑(白い斑点)などが現れますが、特徴的な自覚症状はありません。「単純網膜症」の次の段階である「増殖前網膜症」になると、網膜の血管が詰まることで眼底出血や黄斑浮腫(網膜の中心となる黄斑部に液状成分がたまる浮腫)などが起きますが、眼底出血だけで黄斑浮腫が起きない限り、これも特徴的な自覚症状がありません。「増殖前網膜症」から症状がさらに進んだ「増殖網膜症」という段階になると、網膜の血管の詰まりに対して適切な治療を受けない限り、眼底に新生血管(本来は存在しない異常な血管)が発生し視力も低下してしまいます。また、この新生血管が破れてしまうと、眼の硝子体に出血が起き、「飛蚊(ひぶん)症」(黒い蚊やゴミのような物体が見えるような状態)などの症状が起きてしまい、進行がさらに深まると新生血管にできた増殖膜による「網膜剥離」に至り、視野が欠損、最悪の場合、失明することもあります。

<糖尿病網膜症の治療>

「糖尿病網膜症」の治療は、「単純網膜症」の段階では経過観察として、血糖値が安定している方であれば、1年に1度を目安に眼科を受診していただき、血糖値が変動している方であれば、3~6か月に1度を目安に眼科を受診する必要があります。しかし、「増殖前網膜症」や「増殖網膜症」まで症状が進行し、黄斑浮腫の無い方には、新生血管の発生を妨げるために、網膜の血管の詰まった部分にレーザー光線を照射する、網膜光凝固術という治療が行われます。また、黄斑浮腫が出ている方には、血管新生阻害薬(抗VEGF阻害薬)を眼内に直接注射し、黄斑浮腫を軽減させて視力の低下を抑える治療が行われます。
※「愛心メモリアル病院 眼科」では、2021年度において、「網膜光凝固術」について16例の治療実績(2021年10月から2022年3月)が有り、「抗VEGF阻害薬の眼内注射」については39例の治療実績があります。

<愛心メモリアル病院での増加する糖尿病への取り組み>

「愛心メモリアル病院」では、循環器内科・心臓血管外科・糖尿病内科・腎臓内科・人工透析内科・眼科にそれぞれ所属している医師が連携した「糖尿病チーム」により「糖尿病」の予防・治療、また、「糖尿病」による三大合併症の予防・治療を行っています。
※「愛心メモリアル病院・眼科」では「増殖網膜症」に対する硝子体手術を現在準備中です。

取材協力:
社会医療法人社団 愛心館 愛心メモリアル病院
札幌市東区北27条東1丁目1-15
Tel: 011-752-3535
https://aishinmemorial-hp.or.jp/