水曜どうでしょう祭 UNITE 2013 水曜どうでしょう祭 UNITE 2013

SPECIAL(スペシャル)

匠の技を見学

有田焼編

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― 派手なシャツを着てこちらへ向かってくる方が渕野さんです。軽量強化磁器フッチーノという恐るべき土を開発した張本人です。

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― でも、そもそもフッチーノは、なぜ普通の焼き物より軽いのか。単純に言うと、焼き上がった時に磁器の内部にたくさんのミクロの空洞が出来ているということです。空洞が多いから軽いのだという。

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― でも普通だったら空洞が多ければ壊れやすいのです。 だってそうでしょう?でもフッチーノは空洞が多いのになかなか壊れない。普通じゃないんです。こうして軽いのに丈夫という驚異の有田焼を完成させて、フッチーノは、JALさんやANAさんのファーストクラスの機内で使用される航空食器としての信用と実績を積み上げて今日に至るのです。

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― これはフッチーノの土が、土屋の渕野さんから直々に、どんぶりを作る生地屋さんへと渡される感動的な瞬間です。

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― さっそく土がセットされます…。

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― そして、五勝手屋羊羹のように切られています…。

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― この一切れが、どんぶり一個分の分量だそうですよ藤村さん。
藤村「ほうほう…」

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― これをどんぶりの型の中へ置きます…。

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藤村「そっけなく置いたねぇ…」。

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― 機械が動き出しましたよ藤村さん…、あの銀色がおじぎしてこっちへ来ますよ…。

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藤村「おお!来た来た。そして回ってるねぇ…」

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― なんかよく分かりませんがね。これこそ、ろくろ回して手でどんぶりの形を作ってくような状況なんだと思うんですよ。なんか上手いこと言えないんですがね。
― ほら、どんどん回転させながら、右の方で、生地があの銀色と型の間で微妙にのされてって、みるみるどんぶりの型になりながら内壁にへばりついてってますもん。

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藤村「できたよ…」
― なんであれだけで、こんなに綺麗に出来上がっちゃうんでしょうね…。

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藤村「あ、ほら。ひっくり返すと、パカッと出てきて…あぁ、…どんぶりだわ…」。

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― ここまでになるようにデータを事前に機械に打ち込むのが気の遠くなるような職人技だって、この方、言ってましたね。
藤村「さすがなんだよねぇ…」

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藤村「いやもう、きれいに仕上げるもんだなぁ…」

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― でも藤村さん。まだこれで生地屋さんの仕事は終わりじゃないそうですよ。
藤村「え?この後に何があるのさ?」

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― ほら。どんぶりの高台のところ…見てください…。
藤村「なになに…」。

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― ほら角度がまだ直角というのか…。
藤村「ははぁ…」。

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― 完成形はこれだけ鋭角な角にしなければならないんですよ。
藤村「はいはい…」

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― ほら。これだけ切れ込んでるんですよ。でも、型ではここまでの角度は出せないんです。
藤村「…そうだわ」

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― たとえばね。これは型から出したばかりの急須のふたですがね。見てください、つまみのところ。
藤村「どれどれ…」

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― 完成形はここまでの形に持って来ないといけないんですよ。でも、こんな形は型では出来ないでしょ。
藤村「あ!形がまったく変わってる!」
― ね。だから生地屋さんが削るんです。つまり形を出すんです。
藤村「はぁ~」

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― 削るのは機械ですが…。
藤村「はいはい」

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― さっきと同じように、ここまでの作業を機械に打ち込むまでにそうとうな職人技が必要とされているらしいです。
藤村「そうでしょうね…」

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― はい。削れました。
藤村「すげぇ…」

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― 型から抜いた段階ではこうだったんです。
藤村「ねぇ…」

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― それが生地屋さんの技でここまでの形になっている。

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― 各パートは技を駆使して、もはや誰がどこでどれだけ重要な仕事をしているのわからないですよ。
藤村「まったくだね…」

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― さぁ、それではね。いよいよ窯元で焼き上げますよ藤村さん。
藤村「望むところです」。

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藤村「よ~し焼いてやるぞ~!ぼうぼうに焼いてやるんだ!待ってろ有田焼!」
― やる気だなぁ…あの人…。

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― はぁ、みなさん絵付けをされてるんですねぇ。あれあれ?藤村さんはどこへ行ったんだろう?いませんよ…。誰かに聞かないと…。

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― あ。ちょっとすいません…。

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藤村「なんですか?」
― あれ…藤村さんじゃないですか!そこで、なにしてるんですか?

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藤村「埃とばしてるんですよ。おばちゃんにちょっとやっててって言われたんですよ」

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藤村「ばばぁ戻ってこねぇなぁ…。どこまで行ったんだよ…」
― まぁまぁ小芝居はそのあたりで…
藤村「はい、はい」

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藤村「よ~し!では、かたっぱしから焼いていきましょう!」

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藤村「まず、このどデカい釜へ…」

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藤村「こちらの棚のものを全部ぶちこんで焼いていっていきましょう!」

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藤村「そう~れぇ~。ほら、あんたも一緒に押しなさいよ。え?なに?窯がちがう?あら。これじゃないの?」

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藤村「あぁ…これか。いやいや、燃えてるなぁぼうぼうじゃないか奥の方…よ~し燃やしてやろうじゃないのよ!」

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― あ。でも藤村さんちょっと待って。

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藤村「なんです?」
― 絵付けをしないと…。
藤村「あぁそうね」
― ね。多少は綾つけないと…。
藤村「そうでした…」

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藤村「では、絵付けをして…」

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― え?あんたがするの?
藤村「え?オレじゃないの?」
― 職人さんがやるでしょ!
藤村「たしかに」

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藤村「でもまぁ、ついでだから何個かは…」

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― え?ほんとにあんたやるの?
藤村「だって8千個も作るんだ…10個くらいおかしなどんぶりが混ざってたところで…」
― いや!いや!ひとつ残らず売り物ですよ!
藤村「はずれだと思ってもらうしかないな。祭りだ!祭り!」

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― あぁ、ほんとに書いちゃったよこの人。え?なに書いたの?なんすかそれ?

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藤村「ヒゲです」
― あ…ヒゲ…あぁ…。

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― 署名しちゃったよ…。

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― まだやるんですか?

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藤村「楽しくなってきたものだから…」

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藤村「いいぞぉ~」
― いやいや。

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藤村「嬉野さんもやれば好いじゃないですか…」
― え?ぼくもですか?
藤村「楽しいですよ」

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― いやぁ…ぼくは…。

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藤村「やってんじゃないのよ、あんただって」
― 意外に…楽しいですね…。
藤村「そうでしょ…祭りです祭り」

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― 店長もやりました…。
藤村「祭りです。祭り!」

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― お。天ぷら揚げますか?腹減りましたもんね。

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藤村「違う!これは釉薬(ゆうやく)ですよ」
― あ、つるつるするやつ…。

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藤村「こうして、釉薬(ゆうやく)にどんぶりをね…」

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藤村「くぐらせて…」
― 天ぷら油でカラッと揚げて…
藤村「違う!」

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藤村「よいしょっと…」

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藤村「はい、こうやって…」

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藤村「さぁこれで…次こそ釜入れです…」

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藤村「ささ。釜に入れていきましょう」

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藤村「さぁどうだ!」

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藤村「これにて完了!焼き上がりを待て」

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― と、いうことで。残りの7千9百90個は、もちろん有田の窯元のみなさんが責任を持って絵付けをやって、焼き上げてくれましたので、どうぞご安心くださいませ。

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― で、まぁ、我々が絵付けをしたさっきの10個ね。あれをまぁ当りと見るか、ハズレと見るかは、広く意見の分かれるところでありましょうが、もう混ざっちゃってますからね…。
藤村「祭りです。祭り」

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― それでは藤村さんに実際に焼き上がった、どんぶりとその上にぴたっとのっかる皿で試食してもらいます。
ぴたっとのっかる皿には天ぷら!どんぶりにはメシ!

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― どんぶりとその上にぴたっとのっかる皿は、このようにぴたっと重ねてどんぶりにのっけていただくことができます。

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― 藤村さん天ぷらとメシをやおら口の中に放り込むと…。

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幸せの瞬間です。

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藤村「ほかにも、祭のために、こういう茶碗もご用意しております。ちなみにこのデザインは、有田の伝統の絵柄「たこ唐草」の中に、祭りの実行部隊である石坂豊、福屋渉、嬉野雅道、藤村忠寿の、それぞれの名前から、メデタイ文字だけ(豊、福、嬉、寿)を取り出してあしらったものでございます。ぜひみなさんも毎朝この縁起の良いお茶碗でお茶を飲み、夜はビールを注いで会社のグチを言いまくる、ハッピーなサラリーマン人生に邁進してください!」

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藤村「そしてもうひとつのデザインは、私藤村が描いたものですが、(もちろんパクったんですが)訳あって祭当日に発表いたします」

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― こちらが藤村さんデザインのシークレットのマグカップ2種でございます。これも軽量強化磁器フッチーノです。出来が好い!

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藤村「これです!」

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藤村「これです!」

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― これです!ぼかしてます。
藤村「ぼかすには、それなりの意味があるんです。
お察しください!じきに分かる!」

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さて、軽量なのに堅牢だという矛盾に満ちた驚異の有田焼、フッチーノを世に送り出した2人を最後に紹介しておきましょう。

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左が軽量強化磁器フッチーノの土を開発した有田の燃える男、渕野さん。
そして右が、その渕野さんに手を差し伸べてフッチーノの販路開拓に猛進した「山忠」の山本さん。2人とも好い笑顔です。

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形になる以前の土づくりに心を砕いた土屋の渕野さん。

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出来上がった製品の販路を築く商社の山本さん。
焼き物の世界では入口と出口の2人です。

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徹底した分業の焼き物の世界では、本来、出会うことのない2人なのだそうです。

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けれど、出会うことのない入口と出口が、思いがけずタッグを組んでフッチーノを世に出していくことになったのです。

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2人は前例の無いことをしたのです。
つまり、彼らは異端なのです。異端は、自分の居場所は自分で作る以外にないのです。
異端とはそういうものです。

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でも、この笑顔です。こんなに子供のように笑うおっさんは、誰にも指図されず、自分たちの判断で世界を切り拓いて生きているおっさんです。

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おっさんは、JALさんにもANAさんにも、なんの伝手もなく飛び込みで売り込みに行ったのです。
そして天下の大企業に真正面からぶつかって受け入れてもらえたのです。

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それも前例の無いことだったはずです。そんな前例の無いことを、軽量強化磁器フッチーノは可能にするほど優れている。そういうことなのだとぼくらは思いました。

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そのフッチーノの器を実際に手に取って皆さんに知って、そして感じてほしいと思ったのです。
その思いが、祭会場で有田焼のどんぶり持ちまわってメシを食ってもらおうと思った動機です。
ちょっと面倒なことをして、でもそこにある意外な喜びを感じて欲しいのであります。

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藤村「祭会場には、渕野さん、「山忠」の山本さん、そして窯元の「和山」さんほか、この奇跡の軽量強化磁器フッチーノを作った中心人物のみなさんが有田からかけつけてフッチーノの店を開きます。

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どんぶりはHTBのオフィシャルグッズショップで売られますが、フッチーノの店では、祭り限定デザインのカップなどをこの日のためにご用意。まずはフッチーノの軽さを実感して、できれば彼らの熱き物語とともに持ち帰っていただければ幸いでございます。それでは、祭り会場で、男らしくどんぶりをかっこむ藩士諸君の姿を楽しみにしております!」

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― では、最後に、工程で紹介できなかった型屋さんのみなさんをここでご紹介してこのページを終わります。
がんばれフッチーノ!それでは諸氏!祭で会おう!
(終了)

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