「汚名挽回してどうする、返上せんかい。」
というご指摘を頂きましたが、いちいちごもっともで、話になりません。
バカはひとりにあらず。
バカの一手を、誰一人バカと見ぬけぬバカの寄り合いだったか!「どうでしょう班」!
ということで。
わるかったな。
バカで。
以上、この件については、しめ!
もう触れるな。
さて、ということで「中米・コスタリカで幻の鳥を激写する!」
前回に続きまして、今回も大泉さんがお持ちのあのカメラについてふれましょう。ふれましょう。
どうして大泉先生は、コスタリカのニワトリを撮り逃がしたのか!
あれは、別にピント合わせに手間取っていたわけではありません。
必死で露出を合わせていたわけです。あの人は!
ピント以前の段階だったわけです。
「へぇー。ピント合わせる意外にやんなきゃいけないことあんの?」
あるんですよ。
あのカメラは完全手動ですから、やるこたいっぱいあります。
アレ?きみ、今質問した?
「はい。」
きみ、誰?
「…。」
まぁ、いいや。
まず、露出を合わせて…。
「露出ってなんですか?」
へっ?
あぁ…。そうか。そうか。
今は、カメラが何でもやってくれるからカメラと言えばシャッター押せばいいだけのものっていう認識しかないでしょうが、昔は、カメラってのは、完全手動のものしかなかったの。めんどくさかったの。でも、それが、あたりまえだったの。
だから、カメラ買う人って、全員カメラ好きのおじさんだけだったのね。
で、ぼくの父親もカメラ好きのおじさんだったわけ。
ぼくが、小学生だった時、その父親が必死の思いでお金を貯めてある日一眼レフのカメラを買ったの。それを、「どうだ!」といわんばかりにぼくに見せるわけ。
「あのぉ…。」
なに?
「露出のはなしを…。」
だから、今してるでしょう!
「あぁ、もう始まってるんですか…。」
あたりまえでしょう!なにバカなこと言ってんの!
「でも、昔話とかじゃなくて、露出のことだけでいいんですけど…。」
だから…。
きみねぇ。ものには順序があるわけ。きみみたいな人にもねぇ、分かりやすいように話そうとしてるわけでしょう。ぼくは!
「えぇ、すみません。でも、なるべく手短に…。」
うるさいねぇ!きみは!
手短にするに決まってるでしょう!
だいたいねぇ!きみが変に口挟むから、見なさいよ!もう10行以上もなくてもいい話しをさぁ、
ぼくはしてるわけでしょう!
「そうですか。」
そうですかってねぇ!きみ、しれーっとした顔してるけどさぁ!
「あぁ、いいです。いいです。すみません。すみません。話、続けてください。」
どこまで話したか忘れたでしょう!
「お父さんが、必死の思いで一眼レフ買ったところまででした。」
そうだね…。
なんだよ。わりと、ちゃんと聞いてたんじゃない。
「ええ。」
黙って聞いてりゃいいんだよ、初めっからそうやって。
「…。」
で、だ。
一眼レフっていうのは、ファインダー覗くと望遠鏡のぞいたみたいな見え方がして、子供心に、とってもグッときたわけ、そんで、シャッター切るとカシャコンっていう音がするのもカッコ良かったわけ子供心に。
そしたら、父親が言うわけ。
「おまえ、ピント合わせてシャッター押せば写るってもんじゃないんだぞ」って。
「露出ってものがあるんだ。」
どうだよ。
ええっ。
始まっただろう。露出の話。
いよいよかって感じで始まっただろう。
こうじゃなきゃいけないの。話ってのは。
要点だけ話せばいいってもんじゃないわけ。
「…。」
で、だ。
「露出ってなに?」って聞いたわけ。
そしたら父親が言うわけ。
「おまえ、そこに数字がいっぱい刻んであるダイヤルがあるだろう」
「1とか30とか125とか500とか1000とか書いてあるこれ?」
「そうそれ。それが、シャッタースピードを決めるダイヤルなんだ。」
「シャッタースピード?」
いいか!おまえ!ここで口挟むなよ。
シャッタースピードじゃなくて、露出の話をして下さい、とか言うなよ。
ここから、核心に入っていくんだからな!
「…。」
で、だ。
「シャッタースピードってなに?」
って、小学生だったぼくは聞いたわけ。
「おまえ、ためしにそのダイヤルの数字、125に合わせてシャッター切ってみろ」
「125に合わせればいいの?」
「そう。」
カシャコン
「これでいいの?」
「おまえ、今の音、聞いたな。」
「うん。」
「じゃあ、こんどは2に合わせてシャッター切ってみろ。」
カッ・・シャ・・コン
「どうだ。」
「なんだか、ゆっくりした音になったよ。」
「そうだろう。じゃぁ、今度は1000にあわせて切ってみろ。」
パシク!
「わっ。すごい速そうな音がした!」
「そうだろ。あのなぁ。フィルムっていうのは光に反応するんだ。だから、カメラの中はどこからも余計な光が入りこまない様に密閉してあるんだ。真っ暗な部屋なんだ。その部屋に唯一光をとりこむ窓があって、そこに仕掛けられてるブラインドみたいなもの。
それが、シャッターなんだ。」
「そのシャッターで、光の量を調節してるの?」
「その通りだ。綺麗な写真を撮るためには、その真っ暗な部屋の中に入ってるフィルムに一定量の光だけを当てなきゃいけない。光の量が多すぎてもいけない。少なすぎてもいけない。
とても微妙なんだ…。」
「あのう…。」
なに…?
「しみじみしちゃってますけど…。どうしたんですか?」
いやぁ。親子の会話やってたら田舎の父親のこと、ちょっと思い出してねぇ。
「あぁ…。」
なんせ、九州だからあんまり会いに行けなくてねぇ。
「あぁ…。ねぇ…。」
つまり、えらい天気のいい日と曇りの日では、光の量が極端に違うわけです。
世の中に出まわってる光の量が!です!
昼は光が多い。夜は光が少ない。家の中は光が少ない。家の外は光が多い。
だから、光の量の少ないところではシャッタースピードを遅くし。
光の量の、もっと少ないところでは、シャッタースピードも、もっと遅くするわけです。
反対に夏の砂浜とかいうような光の量の多いところでは、シャッタースピードも速くしなければならないわけです。
そうやって常に一定量の光だけをフィルムに当てるようにするわけです。
「たとえばおまえ、銀行が潰れるなんて噂が流れるとするだろう。」
「うん。」
「そしたら取り付け騒ぎが起きて、どっと預金者が押し寄せるんだ。そしたら素早く入口のドアを締めないとあっという間に人が銀行の中に溢れるだろう。5秒でニ千人くらい入っちゃう。
ところが、ヒマな時だと、半月ほど待ってないとニ千人は入らないから、二千人入るまで半月の間、ずうっと入口のドアを開けっぱなしにしとくんだ。シャッタースピードが速い、遅いというのはこういうことなんだな。ちょうどニ千人、銀行の中にいれたら露出がピッタリ合ってる綺麗な写真が撮れるみたいなことなわけだ。それ以上でも以下でもいけない。ちょうどニ千人なんだ。」
いやぁ、意外に時間掛かるなァ、説明し始めると。
「まだ、だいぶ掛かるんですか?」
まだ、これから絞りの話をしとかないと不完全なんだけどな。
「あぁ、絞り。」
でももう、5ページも書いちゃったからなァ。
「あぁ。」
今回はここまでかな?
「あれ!おわりですか!」
また、次回お会いしましょう。
「大泉さんがニワトリ撮れなかった理由がいまいち具体的になってないんですけど。」
しょうがないでしょう!
「でも、それが今回のテーマだったわけだし。納得いかないです。」
じゃぁ、おまえ、また親子の会話始めてもいいんだな!
「いや。それはちょっと…。」
あと、5ページくらいは軽く書くぞ!
「ようするにあれなんでしょう。シャッタースピードと絞りの組み合わせで露出を合わせなきゃいけないから、写真撮るたびに大泉先生は絞りリングとシャッタースピードダイヤルを両方動かして適正露出がくるように操作してるうちにニワトリが逃げちゃったってことなんですよね。」
おまえ…。
もう帰れ!