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嬉野さん還暦手拭い
2019年10月1日
グッズの話
大阪の堺市にあります、株式会社ナカニさんの渋い工房で私の還暦祝い手拭いは熟練しました職人さんの手によって艶やかに染められておるのでございます。
こちらは社長さんと私ですね。社長さんは染めの職人さんでもありますから今回の手拭いの染めがいかに難しいかを力説されてましたね。
つまり、ご覧のように真ん中に一本通る黄色い染めの色と天地に広がる赤の染めの境界線がいい具合にぼかしが入ってますでしょう?ここが染めの見せ所でもあり染めの困難なところでもあるわけです。
でも、デザイナーの久間さん(中央の女性)は、このボカシをもっと自然な雰囲気に持っていきたいと言ってくれるわけです。
でも染めの職人である社長は「うちのデザイナーはあんなこと言いよりますけどねぇ、この色のボカシは、そないに上手いこと行きませんよ」と盛んに牽制球を私に投げてこられる。
ところが久間さんは、どうでしょうファンでもありますから、なんとか自分のイメージ通りに職人に染めさせたいと言う。
いやぁ(^^)発注先に熱心などうでしょう藩士がいるというのはありがたいですね。社長を振り切って職人を煽ってくれる。
さぁ、この人が久間さんイチオシのチャレンジャーな染めの職人さんなんですがね。あ!じゃないや。え~この人のところに来る前に糊置きという工程があるので、そっちを先にご覧に入れて、そのあと改めてまたこの職人さんのところへ来ますからね。
さあ、これが糊です。この糊を置いたところには染料が染み込んでいかない。つまり手拭いの白い部分、あれはこの糊を置いているので染料をかけても染まらず白く残るのです。
ほら。糊を置くとこんな感じになる。昔のフィルムカメラの頃のネガみたいに今グレーっぽく見えるところが糊を置いているところ。だからこのグレー部分は染料が染み込まないので染まらない。反対に、今、白く見えるところだけが染まっていく。
ほら、こんな感じに仕上がるわけです。
そしたら、この糊置きの工程で働いてる若い職人さんの女の子がどうでしょう藩士だと言うので驚きました。
残念ながら今回の手拭いには関わらなかったそうですが、若いのにこんな職人の世界に飛び込むのがどうでしょうファンだというのがなんだか嬉しかったですね(^^)思わず記念写真です。
がんばって立派な染めの職人さんになってくれよ~(^^)
と、なんだか親心が湧くのでございます。
さぁ、ここで、先ほどの染めの職人さんのところへ帰ってまいりました。そして話を聞くうちに社長がなぜにあれほど「そんなに上手いことボカシ入れるなんてことはできませんよ〜」と言っていたのかが分かりました。
つまり、今回の私の還暦手拭いに使う鮮やかな色の化学染料は、化学反応で発色させねばならないので、A液とB液を掛けて赤に発色させたり、オレンジや黄色に発色させるという手順らしいのです。
ということは、この職人さんは手近なところに参考品としてこのように染め上がった手拭いを下げて、これを時々見たりしてるのですがね。
かける化学染料はこの通り色がない。つまり見た目で感じを見ることはできず、どこまでも職人の勘でボカシ具合をイメージしていくらしいのです。
その一方で、センターは黄色にするために、赤く発色する化学染料が染みてこないようにこのように「土手」という糊を置いていくのです。
こんな風に引いて。
上下に広がる赤が染みてこないように糊で土手を築くのです。
このように4本の土手を敷いたところをみると外側の2本の土手と中の2本の土手の間で赤から黄色へと自然な階調になるようにボカシを作ろうということだと思うのです。でも、このように掛ける化学染料の色は化学反応が起き始めるまでは意図した色にならない。これで作業を進めていく。これぞ職人の世界です。
そして、さらに複雑なのは、これが1枚に見えて実はこの下に24枚分の手拭いが折り重なっていて、それらを現在一気に染めているということなのです。
とにかく、途中からもう、職人さんが、どんな段取りで染めの工程を進めているのか目を皿にして見てたんですが、分からなくなってしまったわけです。
しかし、そんな私の混乱は知らぬ風に職人はとにかく作業の手を止めない。
もう、どれがA液だか、B液だか分からない。
脇に無造作に置いてあるバケツだって今やゴッホみたいなアートに見える。
猛暑が振り返した9月初めの蒸し暑い工房で職人は夢中で染めているのです。
そしたら、なんだか発色が始まっていたのです。「試しにめくって見てくれる?」と職人に頼んでみると。
ほら、すでに赤いのです。
おっ!見事な色に染まっているじゃないですか!
まだ濡れているから色が深いけど、染まってるねぇ〜!そしてボカシが自然になってないか?!
ほら〜!こうやってめくれるってことはやっぱり実際24枚分ここに重なってるってことなんだよね。え?なに?「60枚重ねてやってます?マジすか!」
いやぁ見事!さすが職人技!これ、だからね、よくよくみるとね、重ねた60枚の全部が染まり具合が微妙に違うから一枚として同じものがないのが、この"注染"という染めの技法の味わい深いところだそうですよ。
さあ、こうして染め上がったら、これを水洗いします。
水洗い場には、これまた若い女の子がおりましてね。
この女の子は株式会社ナカニさんに入ってまだ半年だそうですが、キビキビ働いてくれるので見ていて気持ちがいいわけです(^^)
このように水洗いして糊も落とし、染めも定着させていく。
手洗いの後は機械を使って高速で大量に洗っていく。
さぁ、水洗いが終わったようですね。
あらぁ(^^)良い感じで染まってるじゃないですか!(^^)
そしてこのようにまとめたら次は脱水です。
ほらご覧ください、デッカい脱水機ですよ。これでもってグルングルンに回して脱水させます。
はい。入れました!
回ってますよ〜
こうして脱水が終わったら。
次は干し場で乾燥させます。
本当にキビキビ動く女の子なんですよねぇ。
干し場の高いところには、また職人さんがいて、足場の狭いところで歩き回って怖くないんすかねぇ〜この人が引き上げてくれるんです。
ほぉら!こんなに干されて!圧巻です!
凄いねぇ〜。でもこの光景見てると、なんだか大相撲中継を思い出しちゃうのはなんでだろう???
ということで、私の「還暦祝い手拭い水曜どうでしょう祭バージョン」は、このようにして作られておるのでありました。思えば平成も終わり時代は令和となったというのに、あまりにも昭和な風情の工房でしたが、それがまた居心地良かったんだよねぇ。その居心地の良さは懐かしさってわけじゃないんだねぇってことを、未だに株式会社ナカニさんに若者たちが飛び込んでくるって事実が教えてくれるねぇ(^^)
それでは、どうぞ、祭り会場で熱心にお求め下さいませ。
嬉野さん還暦記念手拭い
1,600円+税
[販売場所]
■10月2日(水)~7日(月)
HTB本社特設ショップ
■10月4日(金)・5日(土)・6日(日)
ban.K さっぽろばんけいスキー場 HTBオフィシャルグッズショップ
※記載されている情報は、それぞれ公開当時のものです。予めご了承ください。