now onair

NEXT

HTB 北海道テレビ放送 会社案内

TOP > HTBについて - あなたとHTB

あなたとHTB


このページは平成29年10月22日放送分から引用しています。

画像
森・佐藤両アナ

佐藤良諭アナ

おはようございます。
「あなたとHTB」の時間です。 
「あなたとHTB」は、視聴者の皆様とともに
よりよい番組作りと放送のあり方を目指す番組です。
今回から私、佐藤良諭が森さやかさんと2人で
番組進行を務めさせていただきます。

森・佐藤両アナ

よろしくお願いします。

森さやかアナ

さて、今回の審議対象番組は、今年9月に開催されました
第497回の放送番組審議会で審議されました 
「カムイの鳥の軌跡~オオジシギ 2つの物語~」です

画像
「カムイの鳥の軌跡 ~オオジシギ 2つの物語~」

森アナ

謎に包まれた野生のオオジシギの生態に迫る
貴重な映像と
アイヌに古くから伝わる伝説。
2つの物語が、番組の中で重なっていきます。
番組では、日本とオーストラリアの研究者により、
世界で初めて、渡りのルートが解明される過程が
記録されたほか、
歴史の中に埋没していたアイヌの伝説にも
スポットを当てました。

佐藤アナ

この番組に対して、番組審議会委員から頂いた
ご意見の中から、まずは評価点をご紹介します。


《評価点》

〇言い伝えと科学的な視点を交えたという
この番組の構成は とてもユニーク

〇構成もよく練られていて
オオジシギという小さな渡り鳥が背負っている
神話とその特徴にくぎ付けになった

〇かわいらしさに浸るもよし 自然と人のつきあいや
自然教育を考えるもよし 色々な人と見たい番組

〇手島圭三郎さんの
版画の効果が大きく 
かなり興味をそそられた

〇たいへん手間をかけ よく考えて構成された番組
番組で繰り返し流れるアイヌの歌と
木を打ち鳴らして取るリズムも印象的

〇動物の生態を紹介するだけの
ノンフィクションではないことが
アイヌの伝説が歌とともに紹介される
冒頭から明らかになり 一気に引き込まれた

森アナ

〇スケールの大きな番組で
子どもにも見せたいと思った
また 日常にすぐ役立つとか お得になる
情報ではないが 見て得した気分

〇豊富な取材量と的確なコメントで
つづられたドキュメンタリー
「オオジシギの渡りのリアルタイム追跡」
という情報を伝えながらも
筋書きはわかりやすく 楽しんで拝見した

〇アイヌの伝説を絡めることで
北海道からしか発信できない
重いメッセージを込めた作品に仕上げた
番組の構成の仕方が絶妙

〇「チピヤㇰカムイの神話」と
オオジシギ保護調査に関わる
「日豪の研究チームの物語」を交差させ
鳥インフルエンザ問題 湿地や草地の減少
干ばつや山火事などの環境問題をもう1つのテーマとして
これまで解明されてこなかった渡りの謎を解く
ミステリー的なワクワク感のある良作

〇アイヌの方々の言い伝えと その渡りの謎を追う
科学者たちの挑戦という2つの物語を通して
私なりに自然との共生環境をあらためて考え直す
きっかけの番組なのかと感じた

〇人里に住み着いた神話のチピヤㇰカムイを
札幌市内の線路脇の草むらで活動する
オオジシギと重ねて 物語の先を思わせる
これは魅力的なアイデアだった

佐藤アナ

〇神話にある地上の美しさを
人間が壊し続け
オオジシギの数は減り続けている
そのことを憂う人たちの様子を
アイヌ民族の男性の穏やかで力の抜けた語りや
日本野鳥の会の浦達也さんと オーストラリアの
研究者たちの表情で 見事に表していた

〇萩原聖人さんのナレーションは
包み込むような声質で聞き取りやすく
森さやかアナウンサーの語りは叙情的で
物語に入り込ませてくれた

〇ナレーションの声と質 コメントも過不足なく
ピッタリと主役であるオオジシギに
寄り添っていた

〇石田カメラマンの映像は見とれてしまうような
シーンを巧みに切り取っていて
尺が短すぎず長すぎず たいへんに興味深い

〇カメラがディスプレイフライトを
追うのに必死で
飛び方がどれほど速いかよく伝わった

〇このカメラマンは見慣れた画角よりも
半歩踏み込んだ画角で対象を覗き見ている
オオジシギの顔のクローズアップの焦点が
黒い瞳の奥に合わせてあるように感じ
私は番組冒頭からすっかり
オオジシギに同期してしまった

森アナ

ここまでは、委員の番組に対するご意見のうち
評価点についてお伝えしてきました。
引き続き、評価点をお伝えします。


〇大方の予想を裏切った渡り鳥の
ノンストップ海洋飛行は 本当に驚愕の事実だ
その内容だけでも かなりのインパクトがある

〇ディスプレイフライトの話など
オオジシギに関する情報や調査の内容も丁寧

〇圧巻だったのが ディスプレイフライトの「音」
最初は効果音をはめたのかと疑うほどの明瞭さで
繰り返し聞くと 実に見事に音を捉えていた

〇ちょっと驚いたのは オオジシギが
くちばしの先端をクニャっと曲げて見せた場面
鳥のくちばしがあんな風に曲がるとは知らなかった

〇くちばしがクニャンと曲がるアップが効果的
これは2回くらいリピートしてもいいくらい
子どもと一緒に見たい内容だ

佐藤アナ

〇気象予報図が普通の天気予報とは違う
カラフルな効果を使っていて特徴的

〇GPSデータと風向のデータを重ね合わせて
見せるのは とても説得力があり感心した
あれが番組オリジナルの分析だと聞き
いっそう感心した

〇発信器を留めてある紐について
「数年で劣化し自然に外れる」と説明
視聴者が疑問に思うことにきちんと答えた
行き届いた説明だった

〇南下できたオオジシギがいたという場面は
感動だった

〇自然の美しさ 大切さ 偉大さを訥々と説く
秋辺デボさんも良いアクセント

森アナ

〇「山は山のままで 谷は埋めなくて良い
川はせき止めなくても良い」との
秋辺デボさんの言葉は
とても印象的なメッセージだった

〇このチピヤㇰカムイという鳥のことは
全く知らなかった
鳥のことだけではなく
すべてにおいて感心することばかりだった

〇湿地は オオジシギの繁殖に欠かせない
また人間にも 大きな恵みをもたらしている
一方で 北海道の湿地がこの50年で7割も
失われたことなど 番組を通じてよくわかった

〇私たちが住む遥か昔から
日本とオーストラリアを渡るオオジシギを通して
今一度 私たちが求める生活環境を
考えさせられる 良い番組であった

〇最後になって 番組の冒頭で紹介された
オオジシギのディスプレイフライトと
アイヌ民族が紡ぎ出した
チピヤㇰカムイの伝説がピタリと重なる
その時 渡りの謎の解明という主題は退き
もっと大きなテーマが立ち上がってきた
かつて神々との約束を忘れるほどに
オオジシギを魅了した
北海道の大自然は今どうなっているのか

〇自然は守るもの
アイヌは自然と共生する民族
そうしたステレオタイプに逃げなかったところに
制作された方々の誠実さを感じた

佐藤アナ

審議対象番組に対する委員のご意見のうち
評価点をお伝えしました。
このあとは、番組に対して頂いた要望点、改善点と
提言をご紹介します。

《改善点・要望点》

◆オオジシギの
ディスプレイフライトと鳴き声を
「神々の国が恋しい」と鳴く姿と捉えた
アイヌの言い伝えの物語性に深く感動した
版画も素晴らしかった
ここで番組が終わってもよかったのでは

◆今回は今までのドキュメンタリーと違い
とても分かりづらかった
番組の主旨や内容がいまいち頭に入らず
3回くらい見直した

◆アイヌの話と調査のストーリーの2つが
交錯しており
一般に視聴者が見たとき 
その深い意図が 一度の視聴で読み取れるか
少し難しいのかなと感じた

◆少し分かりにくく感じたのは
鳥インフルエンザを取り上げたところ
「渡りのルートの解明が重要」
ということを伝えるのであれば
少し違った構成が分かりやすかった

森アナ

◆オオジシギのくちばしの先が
途中からパカッとあく場面
そこで「ピニューン」という擬音が入るが
次のディスプレイフライトの場面の音も
擬音なのかと思ってしまった
くちばしのところの擬音はいらなかった

◆「このオスは尾羽がボロボロ」という
ナレーションが流れる
「このオスは」と言われると
「別のオスはどうなのか」という疑問が生じる
オス全般の尾羽がボロボロなのか
この特定のオスなのか少々混乱した

◆鳥の種類別の「渡りの成功率」などの
データも示されると より勉強になる

◆オーストラリアの環境変化について
「かつて心を奪われた風景は
ここでも変わり始めていました」
それが伝わる映像が見たかった

◆渡りの研究は 何らかの仮説や
推論にもとづいて調査しているはず
その辺りをもう少し丁寧に拾い上げてくれると
サイエンス・ドキュメンタリーとして
いっそう上質な仕上がりになる

佐藤アナ

◆途中 厚岸のカキの話が挿入され
厚岸の植林の話で番組は終わる
「湿地の保全が必要」だという
メッセージは分かるが
スケールの大きな話や
最後の秋辺デボさんの言葉との対比では
愚かな人間の付け焼き刃的な
対応に見えてしまった

◆現在 北海道で湿地の保全に
どのように取り組んでいるか気になった

◆エンディング映像の中に
苫東にある北電の石炭火力発電所が使われ
次に煙の出た煙突が写っていた
私が見ると 発電所の煙突ではないと分かるが
一般には発電所が もうもうと煙を出して
いるかのように印象付けてしまうかもしれない
人間の開発を印象付けるには唐突感があり
違うインサートでの見せ方があったのでは

森アナ

《提言》

☆この作品は ドキュメンタリーというよりは
ドラマだったのではないかと感じる
その物語は 北海道で暮らすテレビマン
ならではの視点が随所に感じられ
北海道のテレビ局だからこそ
世界に問うことのできるドラマになっていた

☆秋辺デボさんのコメントと
「風が吹き 鳥が舞う しあわせの国」が
次世代の子どもたちにも
届けられたら良いと思う

☆北海道に本拠を持つHTBが
今後も番組作りの中で
アイヌ文化を紹介し
その伝承・保存に寄与されることを望む

佐藤アナ

「あなたとHTB」次回の放送は
10月と11月に開催される
第498回、第499回放送番組審議会における
委員の皆さんのご意見を紹介いたします

12月17日(日)午前5時35分から放送です

過去の放送より