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あなたとHTB


このページは令和7年8月24日放送分から引用しています。

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依田英将アナウンサー

おはようございます。「あなたとHTB」の時間です。
「あなたとHTB」は、視聴者の皆様とともに、
より良い番組作りと放送のあり方を目指す番組です。

まず、6月の第575回放送番組審議会で審議された
「ススキノ・インターン」について、委員の意見をご紹介します。

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ススキノ・インターン

「ススキノ・インターン」は、大学生のユキナが、マーケティングの
知識を駆使し、経営難に陥ったススキノのスナックの立て直しに挑む
ドラマです。主人公のユキナ役は加藤小夏さん、
スナックのママ・ゆかり役に大塚寧々さん、
チーママの舞役は酒井若菜さんが 演じました。

この番組に対して、
番組審議会の委員から出た意見から評価された点をご紹介します。

・ユキナが、大学で学んだマーケティング理論をスナック経営に落とし込もうと奮闘する姿と、そこに立ちはだかる現実とのギャップが印象的だった。さらに、ユキナは理論派で融通の利かない人物として描かれていたが、Z世代ならではの視点で経営を提案するなど、大人たちとの世代ギャップも楽しめた。

・すんなりとストーリーの展開に入れて、集中力がそがれることなく一気に見ることができた。特に人物の設定や話の流れで、情報不足によるつながりの悪さや不自然さを感じなかった。

・いまどきのドラマは先が読める筋書きを否定することに主眼が置かれるが、現実社会から外れずスリリングな展開に向かわない枠組みを選ぶ方が、むしろ視聴者を巻き込むハードルが高い。今回はそれが功を奏して、登場人物たちの芝居を隅々まで味わえる仕上がりになっていた。

・ユキナの話し方やセリフ回しは、いかにもオタクでコミュニケーションが苦手そうな彼女のこれまでの人生が想像できた。そんなユキナがスナックに飛び込み、出会いと交流を通して成長していく姿は、見ていて応援したくなった。

・ユキナ役を演じた加藤小夏さんの、ぎこちない動きから繰り出されるマーケティング理論の説明とアイデアを提案する演技がいい味を出していた。最後の場面は、海外での仕事をこなしながら故郷の小樽で漁師たちと交流し、ニシンをプロデュースしようとする自信に満ちた姿に心を打たれた。ユキナの成長した姿がよく描かれていた。

・「スナックゆかり」の常連客、酪農家の農山が抱える悩みは、そのまま北海道が抱える問題である。作中に北海道の問題を取り上げているのは、ドラマという枠を超えて意義のあることだと思った。

ここまでは、評価点をお伝えしました。
ここからは要望点・改善点・提言です。

・ゆかりママとひとみママとの対決は少し無理があった。スナックとして立地も客層も全く違うと思われ、ふたりのスナック経営に対する意識を同じ棚に置いたところで、マーケティングを主軸にしたドラマの根幹が揺らいだように思う。

・スナックゆかりのセットが広すぎる感じがした。ママとチーママのふたりで接客をするにはキャパを超えているのではないか。カウンターの中も、もっと狭くてよかった。

・ハッピーエンドになり過ぎていた点が物足りなかった。例として、ユキナの仕掛けた戦略全てがすぐに結果に表れることに違和感を覚えた。大きな失敗などがある中でユキナが成長していく姿を描いた方が、よりリアリティーを感じることができたのではないか。

・男女の構造や偏見といった、現実のスナックのマイナス部分が描かれていなかった。スナックゆかりが老若男女や外国人も集える場所になり「よかったよかった」で本当によかったのか。モヤモヤしたものが残った。

・ユキナは「スナックが嫌いだった」と言い、その理由がスナックのママだったユキナの母親と客との関係性ということが示唆されるが、具体的な理由は語られなかった。しかし嫌いだった理由を乗り越えないと、ユキナも本当にスナックという存在を受け入れ、自分の帰る場所として「スナックゆかり」を見出すことにはならないはず。この点が消化不良だった。

・今の時代、地上波だけでなくネット配信という手段もあるので、道外の多くの人に見てもらえるチャンスがあると思う。若い人の感性を生かしつつ、今後もドラマづくりを続けてほしい。

次に、7月の第576回放送番組審議会で審議された議題
「地上波テレビとコンプライアンス」について、
委員から出たさまざまな意見をご紹介します。

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・放送事業者は大衆に向けて広く情報を提供するのが責務なので、常に大衆の目にさらされている。一般企業よりも高いコンプライアンスが求められるのは当然と考える。

・メディアに求められるコンプライアンスは、法令を順守するのは当然として、社会に求められる倫理観や規範に従ってコンテンツを作り発信することである。社会の眼差しはトラブル予防や事後の対応といった対症療法的なレベルにとどまらず、番組づくりの底流にある評価基準や常識・慣行などにも、問い直しを突きつけているように思う。

・上下関係、階層の存在、正規雇用と非正規雇用などを含めた複雑な関係性の中では、コンプライアンス違反の一形態となるハラスメントが発生しやすい。テレビでもこのような構造的課題があり、優位な立場にある人物による高圧的・性的な言動が生まれ、ハラスメントに繋がるケースがあるのではないか。

・ネット情報などに比べ、地上波テレビの情報は信頼性が高いと認識している。これは、BPOによって視聴者や出演者の人権を守られる仕組みが一定程度機能していることが大きい。ただし、BPOの存在がなければ倫理性を確保できなくなる可能性は十分ある。事実、多くの番組が審査対象となっているが、これは、制作者側の倫理観が不十分だからではないかと思う。

・コンプライアンスという言葉は曖昧で、人によって解釈が異なり、何でもコンプライアンス違反になってしまう危険さを併せ持っている。表現に対する受け止め方が多様化する時代において、表現者は臆病になり、企業倫理や社会規範といった指針に頼ろうとすることで、堂々巡りの状況に陥っている。

・素人でも簡単に表現できる時代になったが、テレビの専門家がつくる番組とは明確な差があり、テレビに魅力がなくなったとは感じていない。ただ、どんなに良い番組を制作しても、視聴者がいないと成立しない。視聴者の声に耳を傾けながら本物のものづくりをテレビで見たい。

・放送事業者は一般企業としてのコンプライアンスを当然としつつも、放送事業者固有の問題については「放送の自由」が国民に果たす役割を忘れず、萎縮することなく報道を続けてほしい。

あなたとHTB。次回の放送は、9月開催の第577回放送番組審議会における
委員の意見をご紹介いたします。

過去の放送より