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知床沖観光船事故から2年 運航会社と社長に損害賠償求め集団提訴へ 乗客家族それぞれの決断

20人が死亡、6人が行方不明となっている、知床の観光船沈没事故から4月23日で2年が経ちました。運航会社社長への捜査が続く一方で、乗客家族の中には社長を相手取り集団提訴する動きも出ています。それぞれの家族が抱く、今の思いを取材しました。

白波が立ち、冷たい風が吹きつける知床の海。あの日から2年を迎えました。斜里町ウトロに設けられた献花台には花を手向け、手を合わせる人の姿が。

献花に訪れた人:「少しでも安らいでもらえるように。ウトロの観光が少しでも元に戻ればいいなと、そういう気持ちを込めて手を合わせました」。
捜索に参加したボランティア:「残り6人を見つけてあげることができなくて、とても残念でした」。

乗客乗員26人を乗せた小型観光船「KAZU I(カズワン)」。悪天候が予想されるなか出航し、知床の海に沈みました。運航会社「知床遊覧船」の桂田精一社長。船の運航について知識がないにも関わらず、「安全統括管理者」の立場に就いていました。国の運輸安全委員会は、安全管理体制が整備されていなかったことが事故原因の一つだと指摘しています。第1管区海上保安本部は、業務上過失致死の疑いで立件する方針で捜査を進めています。

なぜあの日、船を出したのか。乗客14人の家族およそ30人は、来月下旬をめどに「知床遊覧船」と桂田社長を相手取り、損害賠償を求めて集団提訴する予定です。

家族が行方不明・十勝地方に住む男性:「直接、桂田社長に言いたいことがありますので。責任を取ってもらいたい」。

十勝地方に住む乗客家族の男性も、原告団に加わります。7歳の息子とその母親、2人の帰りを待つ男性。裁判に参加するため、苦渋の決断をしました。原告となるためには「遺族」になる必要があり、今年2月、息子について法的に亡くなったものとする「認定死亡」の届け出をしました。

家族が行方不明・十勝地方に住む男性:「あくまで裁判に参加するための書類上の手続きということで、自分の中で割り切っていて、2人の帰りを待っているという気持ちは何も変わっていません」。

家族が帰らぬ現実を受け入れられず、追悼式には参加する気にはなりませんでした。

家族が行方不明・十勝地方に住む男性:「この場所に来るのは辛いので、避けたかったんですけれど。ここにも来なければいけないと思ったこともあったので、今回ここに来ました。(Q.2人に会ったら何を伝えたいですか?)やっぱり抱きしめてあげたいですね」。

小柳宝大さんの父親:「背負ってきました。やっぱり一緒に来ないと」。

知床を訪れる時は、欠かさず息子のリュックを持っていきます。沈没した船の中から発見されたものです。小柳宝大さん。当時、駐在先のカンボジアから一時帰国中に知床を訪れ、事故に巻き込まれました。今も行方不明のままです。今年も、息子が最後に乗った「KAZU I」に手を合わせに来ました。

小柳宝大さんの父親:「久しぶりに来たけれど、ここでみんな最後を迎えたからやっぱり何回来ても悲しい」。
小柳宝大さんの母親:「ただただ悲しくなってくるんですが、今年もまた4月になって息子のそばに行けるって、一つの楽しみで来ました」。

2年経っても、癒えぬ悲しみ。あの日、なぜ船を出したのか?運航会社の桂田社長への怒りが消えることはありません。ただ、小柳さんは裁判には参加しないつもりです。

小柳宝大さんの父親:「今現在では、宝大はもめ事をしない性格だったので、裁判はしないということで進んでいます。何も悪いことしていないのに、桂田社長や国側が悪いがために楽しみを取られてしまったし、人生をなくしてしまった。本当に罰を与えるなら、刑事罰を与えてほしい」。

裁判に参加するのか、しないのか。それぞれの家族の決断の裏には、二者択一では語れない思いがあります。それでも、同じような事故を繰り返してほしくないという思いは一緒です。

一部の乗客家族は23日、追悼式の前に斜里町の山内浩彰町長と面会し、慰霊碑の設置を求めました。

小柳宝大さんの父親:「海が見えるところに建ててもらって、もう二度とこういうことがあってはいけないんだよって、どの人たちにも知ってもらう。そんな慰霊碑を建ててほしいと思っています」。

斜里町・山内浩彰町長:「当然、ご家族皆さんのご意向を踏まえながら進めていかなければいけない。今のところ白紙というか、そこにまだ至っていない。これから詰めていかないといけない」。

話し合いでは、町内に資料館を造り「KAZU I」を展示する案なども出たということです。

家族が行方不明・十勝地方に住む男性:「今回の事故を教訓として、より安全でより素晴らしい観光地、人が集まれる場所にするためには忘れてはいけないことだと思っています」。

あの日から2年を迎えた知床。一歩ずつ前へ進みながらも、忘れてほしくない。家族は、そう願い続けています。

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