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階段が生む高齢者の"孤立"~防ぐための対策は~

2016年11月15日放送

高度経済成長をうけて次々と建てられた、団地。札幌市内だけでも、千棟以上あります。
そのうち8割近くにエレベーターがありません。
厚別区の団地に住む87歳の男性は、
16年前、年金暮らしの今後を考え、家賃の安い団地に引っ越しました。
当時は元気でしたが、70代後半を過ぎてから急激に体が衰え、
最近では4階にある自宅までの階段を上ることが難しくなってきました。
いまは病院以外、家を出ることはほとんどありません。

3階以上に住む高齢者が自力で階段を使えなくなると
送迎ができないとして利用を断るデイサービスも多いといいます。
1人暮らしの場合、階段の存在が、孤立につながるケースも少なくありません。

札幌市は9年前に国の補助金を受け、試験的に北区の団地にエレベーターを設置しました。
しかし、最も安い方法を検討した結果、
エレベーターは階段の踊り場に作られ、どの部屋に行くにも階段が残りました。
それでも費用は1基当たり3000万円1棟でおよそ1億円。
検討の結果、市は「費用対効果が悪く、他の団地での実施は難しい」と結論付けました。

白石区の団地に姉と二人で暮らす65歳の女性は持病の腎臓病に加え、
4年ほど前に脊柱管狭窄症を起こし、ほとんど歩けなくなりました。
下の階への引っ越しを考えましたが、市に「難しい」と言われました。
女性はいま、階段の上り下りができる車椅子を使い、週3回人工透析に通っています。
1回でおよそ20分。これがなければ、入院するしかなかったといいます。
しかし、このサービスには課題があります。
① 1台200万円前後と高価なため、導入している事業所が少ない。
② ヘルパー2人の付き添いが必要なため、利用料が高い。
実際に、保険の範囲内での利用が難しく、申込みを断念した人もいたといいます。

公営団地では3階以上の住人が1・2階に引っ越せる"住み替え"という制度もありますが、
「階段の昇降が困難である」という医師の診断書が必要で、元気なうちに...とはいきません。
専門家は「高齢化は予測できた」と行政の対策遅れを指摘します。
また、今後は「階段昇降サービスの減額・介助のできる管理人の設置・引っ越しの斡旋強化」などの
対策が考えられるとしています。

札幌市の団地は、既に65歳以上の住人の数が4割を超えました。
対策は遅れても、高齢化は確実に進んでいます。

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