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踊るだけが「ダンス」ではない?! SuKiMa・Hokkaido Artists Union Studiesの活動

舞台

わたなべひろみ

2020/01/30

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【Sapporo Dance Collective(サッポロダンスコレクティブ・以下SDC)】は、さまざまな人々がそれぞれの考えや思いを持ちより、ダンスという表現に集約し公演するという活動を進めています。
SDCには、ダンサーのグループと伴走するように行動するグループがあります。
SDCについての不定期連載の第3回目はダンスの創作以外でSDCを形づくる「SuKiMa(スキマ)」と「Hokkaido Artists Union Studies(北海道アーティストユニオンスタディーズ:HAUS)」をご紹介します。

作品づくりのスキマを埋める

ダンスや演劇、音楽ライブなどのさまざまな舞台公演では、スポットライトを浴び活躍する舞台上の表現者に目が行きがちです。しかしその裏には、公演を陰で支える人々が存在しています。
照明、音響、衣装、舞台美術......など、役割のはっきりわかるスタッフはもちろんのこと、作品が発表できる形に到るまでには、目に見えにくい、けれども欠かすことのできない「スキマ」のような事柄を埋めていく作業を行う人々がいます。

SDCでは、このクリエイションの途中に出てくる「スキマ」を柔軟に埋めるチームが生まれました。その名も「SuKiMa(スキマ)」。
2018年から活動するメンバーに加え、2019年には、8月、10月と開かれたメンバー募集の「OMIAI(お見合い)」でSDCに自分の得意なことで関わってみたい! という人が多く集まり、さらにチームは充実したそうです。

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SDC参加メンバー募集のための「OMIAI(お見合い)には多才な人たちが集まった

SuKiMaでは「スキマ」が生まれる都度、手や体を動かして、SDCの活動を支えています。
その範囲は、WebやSNSを通じての広報活動、公演フライヤー・パンフレットの制作、グッズの制作・販売、公演当日の受付や会場案内、写真撮影と多岐にわたります。
ミーティングや稽古の記録にグラフィックレコーディングを用いたり、クラウドファンディングの運営準備にチャレンジしたりする人も現れました。

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見やすくて詳細なグラフィックレコーディングによる記録(グラフィックレコーディング:平中まみ子)

自分が得意なこと、やってみたいこと、挑戦してみたいことをSDCの活動に持ち込んで、共に進んでいくSuKiMa。
でも、あくまでもできる時に、できることを無理せずにやっていくのが本来の姿です。

ここにも自分の意思で集まるSDCの「コレクティヴ」としての精神が反映されています。

表現活動を快く長く続けるための方法を探る

SuKiMaとともに、SDC2019で新たに生まれた動きが「Hokkaido Artists Union Studies(北海道アーティストユニオンスタディーズ・以下HAUS)」です。

ダンサーやアーティストなど芸術制作活動を行う人たちが、社会に置かれる現状を考え、"長く表現活動を続けていくためにはどうしていったらよいのか"を考えていこうという活動です。

「ダンサーが創作のための時間をなかなかつくることができない」「ダンサーが『創作する・踊る』ことが『労働』として認められ、収入に繋げるにはどうしたらよいのだろうか」。SDCの活動を進めるうちに、このような課題が浮かび上がったといいます。また、全国的に表立ちつつある「創作の現場におけるハラスメント」にも注目。さまざまな切り口から、アーティストが生活面でも精神面でも安心して表現を続けられるよう、環境を整えるためにはどのような道があるのかを探っています。

HAUSはSDCの活動と並行して、アーティストの労働やユニオンについて、調査、分析、学習などをスタート。これまで、「アーティストの働き方と現状と意識に関するアンケート」調査の実施や、表現者として活動する方や労働問題に詳しい方へのインタビューを行っています。

2019年11月のSDCの第2回ワークインプログレスでは「連合北海道」の副事務局長齊藤勉さんをゲストに迎えた勉強会が行われ、労働に関する権利や法律、トラブルへの対処方法について学びを深めました。

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第2回ワークインプログレスでのHAUSの勉強会の様子

付せんで感情を共有する「解剖」ワークショップ

HAUS はSDCの中で、「解剖」と称したワークショップも実践しました。
創作の現場では、公演という1つの目的に向けて動くうちに集団としての大きなエネルギーにのみこまれて、個々の声の共有が難しくなる傾向があります。ところが、「困っている」、「辛い」、「こんなことに悩んでいる」といった小さな声に気づくことなく進んでしまうことで、後々大きな問題に発展することも少なくありません。

そこで「解剖」では、SDCのメンバーにこれまでの活動の中で感じていることを付せんに書いてもらい壁に貼り出し、それぞれの声を共有する試みが行われました。
思っていることを表に出すことで、活動中に生まれた感情を共有できるだけでなく、課題の可視化にもつながったようです。

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SDC参加メンバーの多くが参加した「解剖」 photo:ナガオサヤカ

HAUSは、将来的にはアーティストの活動に伴う、労働、生活、権利、ハラスメントの問題など多様な面でのセーフティーネットの確立も視野に入れ、二項対立にこだわらない新しい形の労働組合の誕生も目指しているといいます。
誰もが安心して表現を続けられる環境が確保できれば、北海道の芸術文化もより豊かで安定したものになるのではないでしょうか。

踊るだけがダンスではない「コレクティヴ」として

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SDCの全体像。ダンスとHAUSとSuKiMaが循環して前進していく

SuKiMaもHAUSもSDCの舞台に立つわけではありません。
しかし、SDCとしての「ダンス」が成り立つためには2つとも必要なものなのです。

SDCは「コレクティヴ」という形で創作を進めています。ダンサーもSuKiMaもHAUSも、同じ場に集まり、互いに認め合い、支え合って作品の完成へと進んでいます。
そのような意味では、SuKiMaもHAUSもダンサーたちと一緒に「踊って」いるのかもしれません。

1月末には本公演に向けた最後のワークインプログレスが行われます。
SDCが目指す「コレクティヴ」としてのダンスを楽しんでみてはいかがでしょうか。

この記事を書いたのは

わたなべひろみ